事故詳細

(事故No,19820209ja)

通称:日本航空羽田沖墜落事故

 1982(昭和57)年2月9日午前8時44分、福岡発羽田行き日本航空(日本航空インターナショナルの前身)350便DC-8-61型(JA8061)が着陸の最終進入中に突然失速して羽田空港C滑走路(33R)沖510mの東京湾に墜落した。
 この事故で乗員8名、乗客166名、計174名のうち、乗客24名が死亡し、乗員8名と乗客87名が重傷、乗客54名が軽傷を負った。乗客1名は怪我もなく無事であった。
 原因は、機長が全エンジンの出力をアイドルにし第2、第3エンジンのリバース・レバーをリバース・アイドルまで引くとともに、操縦桿を押し込んだためであった。事故機は滑走路端から510mの地点に墜落し、150m前方に進んで停止した。
 機体は墜落の衝撃で機体前方部で2つに折れた。死者の大半は機体前方部に搭乗していた。
 機長にこのような異常な操作を行わせたのは、妄想型精神分裂病(精神分裂病は、現在は統合失調症と呼ばれている)による精神的変調であった。機長には心身症との診断により乗務を外れていた経歴があったが、実際には、その当時既に精神分裂病を発症していたと推測されている。その後、乗務復帰から事故までの間も、断続的に機長は異常な言動や行動を繰り返していたが、主治医はうつ病と診断して投薬治療等を行っていた。本件は、精神疾患における家族・同僚・上司と医師の間のコーディネーションの必要性や、会社の精神面のケアを含めた健康管理の重要性が問われた事例であった。

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著者名書 名出版社刊行年頁 数
片桐千鶴子「幻の滑走路」中央公論新社1983年
三輪和雄「空白の五秒間」講談社1983年
三輪和雄羽田沖日航機墜落事故 (朝日文庫)朝日新聞社1993年
宮城雅子大事故の予兆をさぐる―事故へ至る道筋を断つために (ブルーバックス)講談社1998年64頁〜65頁
山本善明墜落の背景―日航機はなぜ落ちたか〈上〉講談社1999年15頁〜155頁
山本善明墜落の背景〈下〉日航機はなぜ落ちたか講談社1993年9頁〜107頁
山本善明日本航空事故処理担当 (講談社プラスアルファ新書)講談社2001年119頁〜123頁、164頁〜200頁
三輪和雄空白の五秒間―羽田沖日航機墜落事故 (新風舎文庫)新風舎文庫2004年
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