コラム

社員の化学日記 −第3話 「生活の中の化学操作(分離)」−

化学には,「分離」という操作があります。これは,複数の物質が混ざっている場合に,次の様な処理を行うものです。

1.目的の物質だけを取り出す。
  2.不要な物質を取り除く。

「分離」を行う理由としては,分析の邪魔をしてくる物質が入っている場合に,分析を行いたい物質だけを取り出す,或いは分析の邪魔をしてくる不要な物質を取り除くことにより,問題なく分析を行えるようにすることが挙げられます。

他には,物質の合成を行ったときに,目的の物質だけを取り出す際にも「分離」が用いられます。

実は普段の生活でも,同じような目的で「分離」という操作が行われています。 例えば,豆から挽いたコーヒーを入れるとき,お湯を注いだだけでは粉とコーヒーが混ざったままになるため飲むことができません。そこで,コーヒーフィルターを使って,粉の部分とコーヒーを「分離」しています。
  これにより,必要なコーヒーの部分だけを取り出して,不要な粉の部分を取り除くことができます。 粉の部分とコーヒーを「分離」することができるのは,粉とコーヒーでは,大きさが違うためです。粉の部分は,コーヒーフィルターの目よりも大きいため,コーヒーフィルターを通り抜けることができません。一方,コーヒーの方は,コーヒーフィルターの目より小さいため通り抜けることができます。このように,物質の大きさの違いを利用して「分離」する方法を「ろ過」と呼んでいます。

他に,普段の生活で「ろ過」を利用しているものには,エアコンのフィルターや,掃除機のフィルターがあります。エアコンの場合には,不要な空気中の埃を取り除いて必要なきれいな空気だけをエアコンに取り込み,掃除機のフィルターの場合には,空気と一緒に吸い込んだごみのみを取り除いています。このようなことができるのは,空気中の埃やごみがそれぞれのフィルターの目よりも大きいため,通り抜けることができないためです。

また,普段の生活でも,化学での「ろ過」の際のテクニックを用いているものがあります。 お米を研ぐ場合,研ぎ汁を捨てるときには,お米を底に沈めて研ぎ汁とお米を「分離」しておき,容器を傾けて不要な研ぎ汁のみを捨てていることと思います。
  これは,まさに「傾斜法(デカンテーション)」と呼ばれているテクニックです。液体に含まれている沈殿をろ過する際に,沈殿を底に沈めて沈殿と液体をある程度「分離」しておき,沈殿が少なくなった上澄み液を容器を傾けて取り除くというものです。

化学の操作というと,難しい分析や実験でしか行われない何か特別なものと感じられるかもしれませんが,実際には普段の生活の中で気付かないうちに多く行われています。
  今回のコラムで,化学というものが少しでも身近に感じてもらえればうれしいです。

【三津 和次郎(ペンネーム)】

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