コラム

社員の化学日記 −第190話「閑人閑話2−循環すること−」−

この原稿を考えていた頃はまだ4月上旬だったが、桜満開の時期は終わりかけていた。 年度初めの入学式や入社式には満開の桜並木がイメージされるが、桜はなぜ4月の短い期間にだけ開花してすぐに葉桜となり、秋には落葉、冬を経て、春になると再び花をつけるのか。

桜の木に「意思」があるかどうかは知らないが、このサイクルを循環し続けている。

桜の花が散った後の葉桜には、夏になると葉の付け根に花芽ができてくるが、葉で作られる休眠ホルモンによって一時的に休眠状態となるらしい。 やがて、秋になって落葉して冬を迎えることで、花芽が低温の刺激を受け、休眠解除して再び成長を始める。 一般的には5℃程度の低温刺激が望ましく、低温時間の積算とその後の気温の上昇が必要であるらしく、日本ではその時期がちょうど4月上旬なのである。

そもそもなぜ四季があるのか。

中学校の理科の教科書にも出てくるように、地球は約23.4度傾いた地軸で自転しながら1年(正確には365.2564日)をかけて太陽の周りを公転する。 これにより、日照時間が変化(日本では,夏は昼が長く,冬は夜が長い)したり、太陽などの南中高度が変わる(日本では,夏は南中高度が高く,冬は南中高度が低い)ことによって「季節」が生じる。 日本は中緯度に位置し、偏西風などの条件が相まって、一年間で明確に季節が分かれている。

4月の桜並木につきものなのが、「ピカピカの1年生」「フレッシュマン」。 みんな新しい年度を迎えて希望に胸膨らませて…、と表現されたのは昔の話で、特に最近の新社会人はそうでもないらしい。

もちろん大半はそうであろうが、中には入社日当日に退職を申し出たり、転職サイトに登録してから入社式に臨む者もいるとのこと。 おまけに最近は会社への退職申し出を代行する業者も出てきた。 相手がブラックな企業であったらばわからないこともないが、全部が全部ブラック企業相手とは考えづらいにもかかわらず、利用者は結構いるようだ。

1960年代生まれの自分たちは、その昔、「新人類」「バブル世代」などと言われてきたが、今の 新社会人の主流である「ゆとり世代」は何を思うのか。 旧世代の人間として新社会人を受け入れる側となって久しいが、毎年この季節になるとなぜか憂鬱になる。

化学反応でも同じ変化を周期的に繰り返す反応があるらしい。

ベルソフ-ジャボチンスキー反応という化学反応で、セリウム塩などの金属塩と臭化物イオンを触媒としてマロン酸などのカルボン酸を臭素酸塩により臭素化する化学反応のことである。

溶液の色の周期的変化だけでなく、シャーレのような浅い容器に静置した状態におくと、まず数箇所に色の変化した点が現れ、そこから同心円に色の変化が広がっていく様子が観察できるらしい。 YouTubeなどでもその様子が動画として多数アップされているので、興味がおありの方は一度ご覧いただきたい。

【参考】Wikipedia、YouTubeなど

【道修町博士(ペンネーム)】

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