コラム

社員の化学日記 −第152話 「50年ぶりの受験」−

初の大学入学共通テストが行われました、これは30年間続いた大学入試センター試験を現代の世界に合うようにそして未来を背負って引っ張ってくれる人を育てるために改良してできた新たな方式の試験方法でまだ試行錯誤段階といってもいい方式です。 今年は試験方法の変更だけでなく新型コロナウイルス騒動も加わって受験生には苦難の年だと思いますが、条件は皆同じなので頑張って突破してもらいたいものです。

化学会社に席を置く、化学を愛する者にとって化学の試験問題がどのようなものかは興味あるものです。

従来の「大学入試センター試験」は知識がどのくらいあるかを問うもので今の時代に合わないと批判がありました、 これからの時代にはその知識を使って応用できる能力が必要だというわけで問題傾向が変更され、暗記系から思考系能力を試す問題が多くなってきたというわけですね。

予備校講師の友人が言うには、
理科にかかわらず科目全体において、新方式の問題は受験生が知ってることを答えるだけでなく自ら考えることが必要となるので回答するのに時間が足りない受験生が多いのではないか?採点する側も時間がかかり苦労するだろうと。

又コロナウイルスから導かれる問題も多く出題されたそうです。生物基礎では、ウイルスが体内に入った時の細胞の働きから免疫についての問題が出ました。

少し前の新聞に掲載された記事で、
昨年のニュースでは宇宙関連の話題が多く、探査機[はやぶさ]や[KAGRA]についてたびたび報道されました、事実数多くその言葉を耳にしたり目にもとまりコラムでも話題にしました。入試問題でも注目のテーマだったいうことです。

例として東京大学の物理問題があげられていました。そのまま概略を転記すると 「ボーアの原子模型は電子の円軌道の円周2πrとド・ブロイ波長λの間に量子条件2πr=nλ(n=1,2,3,……)が成り立つ」と仮定して
宇宙には暗黒物質が存在し、銀河の暗黒物質は中心から1022mの半径内に集まっていると考え
その粒子の質量の下限を求める問題が出されました。

解くことが目的でないので詳細は省きます。

正体不明の暗黒物質、「そんなんないよ」という科学者もいますが最近の研究で存在が明らかになりつつあります。 重さはあるらしいが目に見えなくいので暗黒物質、その最も小さい重さを求めなさい」という問題ですが、高校の授業では取り上げられない事柄だけど世の中では話題になっていることを題材に問題作成された様子です。

2022年度からは高校に対しても教え方が変わり、「学ぶ → 覚える」だけでなく学んだことを各方面で生かすためにより深く研究する能力を高めるための教育に変わるようです。 文科省説明では、「思考力、判断力、表現力」を育てるための新学習指導要領だそうです。

ここで思うのが今年の大阪公立高特別選抜問題中の理科問題。

《炭酸水素ナトリウムの水溶液は、酸性かアルカリ性か?PHは7より小さいか大きいか?》 という問いが出されていました。

新聞掲載の問題を読んだだけなので作成者の意図はわからなく正誤は別にして非公式の個人意見を好き勝手に思いつくまま言わせてもらうと
学校での教育目的が、学んだことを日常生活で利用したり応用したりする考える力を育てるということなら、入試問題も「炭酸水素ナトリウムは重そうと呼ばれ食品の膨張剤や炭酸飲料を作ったりするのに使われたり、油汚れを落としたり生ごみの臭いを消すのに使われることもある」というような身の回りの生活事柄からどうして使われるのか?と考えさせるような問題形式も欲しかったと思いました。考える力を持った学生が世の中に出た時には思いもつかなかった新たな用途も発見してくれるのではないかと期待もできます。 。

次の問題には
「炭酸水素ナトリウムを加熱すると、炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素が生じる。この化学反応式を完成させる目的で、[?NaHCO3 → Na2CO3 + H2O +CO2]の?の数を問う問題がありました、50-60年前にはしょっちゅう触れたこの問題形式も今となっては疑問。この?を求めるのは算数の問題とちゃうんか?と素人なりにちゃちゃを入れながら新聞掲載の理科問題だけで高校受験を半世紀ぶりに体験したコロナ禍の冬でした。

令和3年2月

【今田 美貴男】

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