コラム

社員の化学日記 −第13話 「乾燥剤」−

今回は,試験を行うときに使っている乾燥剤について書いてみたいと思います。

乾燥剤を使う試験としては,乾燥減量というものがあります。 乾燥減量とは,試料を一定の温度(100℃など)で乾燥して乾燥する前の重さからどれくらい減ったかを求めるものです。 具体的には,試料に含まれている水の量を確認する時などに行われます。 例えば,1gの試料を100℃で乾燥した後の重さが0.9gになったとします。 乾燥により水だけが蒸発したとすると,乾燥減量が試料に含まれている水の量となります。 このとき,乾燥前の重さ及び乾燥後の重さ,さらに乾燥減量を求める計算式は次の様になります。

      乾燥前の重さ:1g
          乾燥後の重さ:0.9g
          乾燥減量(%)={(乾燥前の重さ−乾燥後の重さ)/乾燥前の重さ}×100

この式に従って計算を行うと,

       乾燥減量(%)={(1- 0.9)/1}×100
                                = 10(%)

となります。 従って,この試料には,水が10%含まれているということになります。

試料を乾燥した後,重さを量るまでに試料をデシケーターという容器の中に入れて,室温まで冷やしますが,このデシケーターには,乾燥剤が入っており容器内の空気は乾燥しています。なぜ,空気を乾燥させるのかというと一度乾燥したものに空気中の水分が吸着して重さが変わることを防ぐためです。 このときに使用される乾燥剤には,シリカゲルが選ばれることが多いです。湿気易い食品の乾燥剤として入っていることが多いのでご存知の方も多いと思います。 シリカゲルには,着色しているものとしていないものがあり,着色しているものは乾燥しているときは青色ですが,吸湿してくると赤色になります。色が変わるのは,塩化コバルトという物質が加えられているためです。塩化コバルトは,乾燥しているときは無水塩化コバルト(青色),吸湿してくると塩化コバルト六水和物(赤色)となる性質を持っているため,この性質を利用して乾燥しているかどうかを色により一目で確認できるようにしています。 吸湿したシリカゲルは加熱することにより再生することができるため,何度も繰り返して使用することができます。これは,シリカゲルは空気中の水分を吸着することにより乾燥を行うため,加熱してやれば吸着している水が外れるためです。

これとは逆に,再生が不可能な乾燥剤もあります。酸化カルシウム(生石灰)というものですが,これもシリカゲルと同じように湿気易い食品の乾燥剤として入っています。この乾燥剤は,空気中の水分を吸着するのではなく,次の様な化学反応を起こして水酸化カルシウムという別の物質に変わることで乾燥を行っています。

       酸化カルシウム + 水 → 水酸化カルシウム

水も乾燥剤の酸化カルシウムも別の物質となっているため,加熱しても水が出てくることは無く,再生は不可能となります。従って,一度使用したものは再利用することはできません。

乾燥剤には,他にもいろいろな性質を持ったものがあるので,使用目的に合ったものを選んで試験に使用しています。

【三津 和次郎(ペンネーム)】

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