コラム

社員の化学日記 −第119話 「新聞紙1枚は月に届くのか」−

新聞紙を42回折ると月まで届く。 この話は皆さん聞いたことがあると思います。

厚さ0.1mmの紙を42回折り重ねていくと,約439,800kmになり,地球から月までの距離,約380,000kmより長くなるという話です。

その話を聞いてふと考えました。 紙を何回も折ることができれば月に到達することは分かったけど,新聞紙1枚を42回折った時の状態はどんな感じなのか,と。

目で見えるくらいの細長いヒモ状になってる? そもそも新聞紙1枚分の物質量では月まで届きそうにありません。

そこで計算してみました。 (とはいっても素人計算です。計算に使用する新聞紙の重さや厚さも素人(私)の手によるざっくりとした測量ですし,計算も分子径や結合距離など考慮せず,あくまで新聞紙を原子レベルまで裁断したとして,その原子を一個ずつ並べたときに月まで届くのか,ざぁっっっっくりとしか計算しておりません。)

計算の前に大前提として,新聞紙は40回も折るなんてできません! 原子サイズまで裁断したり,切り重ねたりしたものをイメージしながら計算しております。

まず新聞紙1枚の重さを量ってみました。 新聞紙の重さ 16.4g。 これが全部セルロースだとします(水分量,インク等は考慮せず)。

セルロースの分子式は (C6H10O5)n なので,分子量は162.1406×n, 新聞紙1枚には約0.101molのセルロースが含まれていることになります。
水素の原子径 106pm(ピコメートル)(=0.000000106mm)
酸素の原子径 120pm(=0.000000120mm)
炭素の原子径 140pm(=0.000000140mm)
として,新聞紙1枚分の原子を直線に並べたとすると,

152280040000kmになります。

・・・あれ?地球から月までの距離が約380000km,これはおかしい。地球から太陽までの距離よりも長いなんて。 たぶん私の計算が間違っていますね。

別の角度から計算してみました。

新聞紙1枚の厚さを測ってみたところ,0.0475mmでした。 これを月に届くまで(380000km以上になるまで)折ろうとすると,43回で約417800kmになります。

新聞紙1枚の大きさはA1サイズです(A4コピー用紙の8倍の大きさ)。 A1サイズの面積は0.5m2(=500000mm2)なので,これを43回折った場合の折った1面の面積は,
500000mm2 ÷ (2の43乗) = 約0.000000057mm2
になります。 この面が正方形だとすると,1辺の長さが0.00024mmとなり, 0.00024mm×0.00024mm×380000kmの人間には見えないであろう超細長い線状になります。

でも,0.00024mm = 240000pm ですので酸素や炭素の原子はもちろん,セルロース分子も余裕で入るくらいの大きさではあります。

1つ目と2つ目の計算結果は全然違いましたが,新聞紙1枚の物質量で月まで届くことは確認できました!

それにしても,kmやらpmやら単位の幅が大きすぎて計算がとてもややこしかったです。 もしかしたら計算間違っているかもしれないのですが,計算ミスを見つけてもそこはご愛嬌ということで見逃してくださいね! もう計算したくありませんので!!笑

【栗林】

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