コラム

社員の化学日記 −第104話 「無題」−

今年も3月を迎えた。

桜にはまだ早いが,梅の木の開花はもう直ぐであり,春はもうそこまで来ている。 朝の暖房器具をつける時の感覚から,老体にはこたえる朝の冷え込みも少しずつ弱まっているように感じる。。

昔は暖房器具といえば火鉢に炭を燃やして暖をとるのが当たり前だった。コタツも電気ではなく,炭を用いたものが主流であり,「あんか」(布団などに入れ直接手足に当てて暖をとる暖房器具であるが,もはや死語?)も湯タンポや炭を燃やすのが当たり前だった。 ただ,こういう固体燃料の類は着火させるのが大変だった。特に真冬の朝の着火作業はこたえるが,それが当たり前と思ってみんな生活していた。

今の時代はボタン一発で暖房家電器具等が動き始め,瞬く間に室内を快適温度にしてくれる。 昔のことを思うと魔法の世界だ。

高度経済成長期以降,国内の電力事業には原子力が導入されていたが,2011年福島第一原発事故以降,「脱原発」が世論の主流となっている。

でも,問題なのは「脱原発」しても残ってしまう放射性廃棄物,いわゆる「核のゴミ」。今まで後先考えずに原子力を利用してきたツケが回ってきている。単なるごみなら燃やしたり,埋め立てたりすればいいが「核のゴミ」はそうはいかない。「核のゴミ」の中には放射性元素が含まれ,長い年月をかけて周囲に放射線を放出し続ける。

こういう「核のゴミ」をリサイクル,あるいは無害化しようとする研究は以前からなされているらしいが,なかなか進展していないらしい。

先日ある新聞記事を見つけた。

理化学研究所において,113番目の元素を発見したのと同じ加速器という装置を使って「核のゴミ」の中のパラジウム107(放出する放射線が半減するのに650万年かかるという放射性元素)を無害化する研究を始めるとのこと。

ただし,まだまだ基礎研究段階であり,実用化できるかどうかも未知の段階らしい。

113番元素の発見は私たちの生活に直接役立つものではなかったが,こういう研究は未来のことどもたちのためにも役立つようなものであってほしいと思う。

【YS(ペンネーム)】

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