ホンヤドカリと遊ぶ!
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日本海の磯遊び!

「磯遊び」といえば、潮の引いた岩場で潮溜まりをのぞきこむ・・、という、イメージで紹介されることが多いが、それは主に太平洋岸での話。
干満の差が最大でも数十p程度しかない上に、急峻な地形が多い日本海岸の磯で、大きな潮溜まりが点在するフィールドを探すのはなかなか大変。
それでも、春の大潮の日には、けっこう潮が引くから、運良くそんな日に海岸に行くことができれば、潮溜まりで色々な生き物を見つけることができるだろう。
と言っても、これは幸運中の幸運。
大潮がうまく休日に当るとは限らないし、雨が降ったり海が荒れたりすることもある。
まずは開き直って潮に濡れる覚悟を決めよう。
大潮でも小潮でも、天気さえよければ、とにかく海岸へGO!
満ち潮も引き潮も気にすることなく、半ズボンにTシャツで膝まで水に浸かり、波しぶきを浴び、びしょびしょになればそのまま泳いでもいい。
水に親しみ生き物を身近に感じる・・それがみーばい亭流の磯遊び。

潮の引いた磯
ここまで潮が引くのは日本海では珍しい
海に入らずに生き物と触れあえる数少ない機会だが、
夢中で遊んでいれば結局ずぶ濡れになる
着替えは必ず持っていこう




潮溜まりをのぞいてみる
まず目につくのは、クボガイやイシダタミなどの巻貝
よく見るとヤドカリが入っている貝も多い
他に生き物の姿は見えないようだが・・・
水面に顔を近づけてじっくり探すと・・・
ホンヤドカリ、ヒライソガニ、イソニナ、クボガイ、・・・
ひとつの潮溜まりで、これだけの生き物が見つかった
海藻をゆすってみると、ワレカラやヨコエビが飛び出してくるかも






イソギンチャクも磯ではお馴染みの生き物
飼ってみると意外におもしろいのだが、岩にしっかりと張り付いているので、傷つけずに採集するのは難しい
小さな石ころや流木に付いている個体が見つかればラッキーだ
磯遊びの友ワレカラ
海藻の間を丹念に探せば、わりと簡単に見つけられる
カマキリのようなカマを振り上げて立ち上がったり、シャクトリムシ歩きでへこへこ移動したり・・とにかく動きがおもしろくて、ずっと見ていても飽きない

                  




磯遊びの極意は四足歩行!

「素手、素足はNG。磯には危険がいっぱいだから、きちんと靴を履いて、軍手をはめるのが鉄則」
まあ、それはそれで正しいだろう。
誰だって、貝で手を切ったり、ウニに刺されたりしたくはない。
しかし、少しだけ想像力を働かせて考えて欲しい。
軍手をはめた手で押さえつけられたイソギンチャクはどうなる?
ゴム底で無造作に踏みつけられたカイメンはどうなる?
シロガヤは?ウミウシは?グソクムシはフジツボは?
そして多くの藻類やコケムシやヒドラやホヤやワレカラやヨコエビは?
イガイやカメノテも岩からぽろりと剥がれ落ちればあとは死ぬしかない。
人間がただ歩き回るだけで、磯に暮らしている多くの命が踏み潰されて消えていく。
頑丈な靴を履いて顔を高く上げて歩いていたら、そんな生き物たちの死に行く痛みに気付きもしないだろう。

磯に出る時は素手、素足。
まあ、ゴムぞうりくらいは許されるかな?
そして、ビルを登るスパイダーマンのように四つんばいになって静かに海へ入る。
顔を水面に近づけて、目の前の生き物をよけながら、そっと手を付き足を運ぶ。
もちろん、そうしていてもたくさんの生き物を潰してしまう。
だけど、目線を下げて生き物たちとの距離が近くなれば、彼らともっと親密になれるし、潮を浴び波に濡れ、少しだけ磯の暮らしを感じることができるはずだ。
それに四足歩行なら、ぬるぬると苔生した岩場でも、不安定なゴロタの浜でも自由自在に動き回ることができる。
なだらかな岩壁なら、頭を下にしてとまることだって可能だ。
気分はスパイダーマン・・・というよりフナムシかな。
もちろん貝殻や岩の角で手や足を切ってしまうこともあるだろう。
けれど、はじめから姿勢を低くしていれば、滑って転んでも大した怪我にはならないはず。
ちょっとした切り傷や擦り傷なら、海水で洗えばすぐに治ってしまう。
もちろん、怪我をすれば痛い。
しかしその痛みは多くの生き物たちの命を犠牲にして磯で遊ぶための対価だと思う。
手のひらと足のうらで海を感じ、岩を感じ、命を感じながら、四つんばいで磯を歩く。
素手、素足で磯に出れば、少しだけ生き物に対して優しくなれるはずだ。



磯の危険な生き物は・・?

あたりまえだが、日本海の磯で遊んでいてサメに襲われることはない。
サメを見たければ、船を頼んで何キロも沖合まで連れて行ってもらわなければならない。(それでもめったに会えないが)
かつて、ニコノスXにサメレンズ(UWニッコール20o)を装着して、サメを追い掛け回していたサメ好きの私としては、もっと近場の磯でサメと遊べたら・・と思うのだが、サメ=ジョーズという固定観念に凝り固まった世間の人々には、なかなか理解してもらえない。
まあ、たかだか2メートルのアカシュモクザメが沿岸に現れただけでパニックになる国民だから仕方もないが・・・。

サメはともかくとして、亜熱帯の沖縄や黒潮が洗う南紀の磯には、危険な生き物が少なからずいる。
(爬虫類の)ウミヘビ、ヒョウモンダコ、アンボイナ、大型のオコゼやカサゴの仲間、毒針を持つエイ・・・。
ウツボや、ノコギリガザミなども、下手に手を出せば大怪我をしかねない。
残念な・・いや幸いなことに、日本海の磯にはそれほど危険な生き物はいない・・はず。
それでも、油断するとちょっと痺れたり腫れあがったりすることは良くあるので、気をつけるにこしたことはない。

まあ、見るからに痛そうなウニやクラゲを、わざわざ触る人は少ないだろう。
シロガヤやヒドラなどは水脹れができるくらいだから、誤って触ってもたいしたことはない。
イシガニやガザミの鉗脚にも、人間の指を切断するほどの威力はない。(人差し指の爪を割られた経験はあるが(^^;)
要注意なのは、トゲに毒を持つ魚たち。
こいつらに刺されるとけっこう痛いし、人によってはアナフィラキシーショックの危険もある(かもしれない)。
日本海の磯でよく見かける毒魚は、ゴンズイ、アイゴハオコゼなど。
もっとも、泳いでいるアイゴやゴンズイが人を刺しに来ることはないし、岩の上でじっとしているハオコゼにしても、人が触る前に大抵逃げる。
刺されるとしたら死んだ魚。
釣り上げられて殺されてその辺に捨てられた魚だ。

割れた空き瓶(釣り人は栄養ドリンクがお好き)。
無造作に捨てられた釣り針や釣り糸。
腐臭を放つナンキョクオキアミ。
狭い場所を独占してバーベキューに興じる家族連れ。

磯で本当に危険な生き物はマナーを知らない人間たちかもしれない。


ゴンズイ
固まって泳ぐ幼魚の群れは「ゴンズイ玉」と呼ばれる。
その名のとおり、海底を転がるように移動する様子は見ていて楽しい。
成長すると単独行動になるが、海藻の茂みや物陰に潜んでいることが多いようで、昼間はあまり見かけない。
海藻をかき分けると、突然ぬっと現れて驚かされることがある。
釣魚としては外道扱いだが、港町の民家で干物にされていたりするので、食用にもなるようだ。
私は試したことがないが、ナマズの仲間なので、淡白な白身で美味しいのではないかと思う。
背鰭や胸鰭のトゲに毒があるのは有名だが、意外と知られていないのが体表を覆う粘液の毒性。
キズのある手でつかんだりすると、刺されなくても傷口から粘液毒が入るのでご注意を。

幸いなことにゴンズイには刺されたことがないが、同じナマズの仲間で淡水産のギギにはやられたことがある。
刺されたというより切られた感じで、その夜は痛くてよく眠れなかった。
ちなみにギギも煮付けにするとたいへん美味。


      
     



ンヤドカリと遊ぶ!


ホンヤドカリ
日本海の磯で最も繁栄している生き物といってもいいだろう

磯に下りてまず目に入る生き物といえば、間違いなくホンヤドカリだろう。
とにかく数が多いし、どこにでもいる。
小さなヤドカリだが、小さな潮溜まりに何十匹も群れていることもあり、近付くと一斉に岩からばらばらと転がり落ちる様子には圧倒される。
飛沫帯の主フナムシと共に磯の王者の双璧である。

私がフィールドにしている越前海岸の磯でも、たくさんのホンヤドカリが群れ遊んでいるのだが、わらわらと動く群れをぼんやり眺めていると、時折ふと違和感を覚えることがある。
なんだろう?と、良く見ると群れの中に体つきの違うヤドカリが混じっている。
摘みあげてみると、なんとユビナガホンヤドカリ!
河口の干潟を住処とするヤドカリが、どうしてこんな岩だらけの磯にいるのだろう?
いったい、どこからどうやってこの磯にやってきたのだろう?
小さなホンヤドカリ社会の中にも、いろいろなドラマがあるのかもしれない。

ところで、このホンヤドカリ、ごく浅い所に群れているが、積極的に水から出ることはない。
捕まえてコンクリートのスロープに置いてやると、必ず海に向って走り出す。
まあ、海と反対の方向に向えば、待っているのは乾燥死だから、当然といえば当然なのだが、どうやって方向を知るのだろうか?
こんな事を書くと、ヤドカリ好きの読者に怒られるかもしれないが、昔、ダイビングの合間に、この習性を利用して仲間たちとよくヤドカリレースを開催したものだ。
各自これは!と思うホンヤドカリを選んで、一列に並べて競争させるだけなのだが、これがけっこう盛り上がるのだ!
あまり海から遠いとかわいそうなので、距離は50cmくらいだったかな。
もちろん金を賭けたりはしていない。
ただし敗者は慈愛の心で缶ビールなどを・・・わはは(^^;





狙い目は岩

浅場のホンヤドカリなら、岸から水面を通して観察することもできるが(それが普通)、どうせ濡れるのなら水中で直接眺める方が、ずっと楽しい。
とはいっても、ホンヤドカリが暮らしているのは岸近くのごく浅い所だから、水中で観察するといっても潜るわけにはいかない。
ごつごつした磯に寝転んで波に揉まれていれば全身キズだらけになってしまうだろう。
だったらどうするか?
水面下のホンヤドカリを水中で観察するのなら、少し沖の海中から顔を出している岩が狙い目。
ある程度の深さがあれば立ったまま体を沈められるので、シュノーケルを咥えれば目線の高さで彼らの暮らしぶりを観察することができる。
海面すれすれ辺りには、ホンヤドカリやケアシホンヤドカリがたくさん居るはず。
全身で潮を感じながら野性味たっぷりのヤドカリたちの暮らし振りを眺めていると、つい時間を忘れてしまう。
その辺りで拾った貝殻を置いてやって宿替えの様子を観察したり、ちょっと餌をやってみたりするのも楽しい。
私はイワシやアジを調理する時に落とした頭を冷凍しておいて、ヤドカリたちのお土産にしている。
かつてダイバーの間では、自然の魚に餌付けすることの是非が姦しく論議されたものだが、磯のヤドカリにアジを与えることくらいに、いちいち目くじらを立てることはないだろう。

また、自然の磯の雰囲気は損なわれるが、段々になったコンクリートの護岸も観察スポットとしては悪くない。
フラットなので採餌や貝殻交換の様子を観察するのには最適なのだ。
ただし藻で滑りやすいので、くれぐれもご注意を。


こんな岩のすそ辺りが狙い目
そっと顔を沈めてみると、」様々な生き物を観察できるはず



水面下の磯
干満の差が少ない日本海は、水面下の環境が比較的安定しているので、
穏やかな景観が広がっている

ゆらゆらと揺れる海藻に差し込む陽射しが美しい


クロシマホンヤドカリ
数は多くないが、上の画像のような
岸から少し離れた岩の壁面などで見ることができる
垂直に近い岩壁に付いていることが多くて、
近付くところころと転がり落ちてしまう
小型で地味なヤドカリだが、見つけるとちょっと嬉しい

磯のアイドル、アオウミウシ
ごく浅いところで普通に見られる
お馴染みのウミウシだが
新鮮な海綿しか食べないので
水槽で飼育するのは難しい
無理に飼育して短期間で死なせてしまうより
自然のままの姿を眺めているほうが癒される
越前海岸はウミウシの宝庫
真剣に探せば10種類くらいは見つけられるはず


波の荒い時は磯に下りないこと!

潮の引いた磯をフィールドにした磯遊びが推奨されるのは、波がなく危険が少ないことが理由の一つだろう。
砂浜の海水浴場ならば、波にさらわれて転んでも笑い話ですむかもしれないが、岩のゴツゴツした磯では大怪我をしかねない。
波は人間ごときの力とはまったく次元の異なる膨大なエネルギーを秘めている。
波に揉まれて岩に叩き付けられれば、皮膚はもちろん、ウエットスーツでも簡単に裂けてしまうのだ。
波が荒い時は決して磯には下りないこと!
無理やり海に入っても、ホンヤドカリやイソスジエビがいる浅場のポイントは、どろどろにかき回されてしまって観察どころではない。
などと偉そうなことを言っている私自身、何度も磯で危ない目にあっている。
恥ずかしい話だが、「死ぬ!」と、目を閉じたこともあった。
あの時の恐怖と痛みを忘れないために、膝や太股がざっくりと裂けた古いウエットスーツを捨てずにとってある。
楽しい磯遊びを悲劇にしないためにも、時には引く勇気を持ってほしい。



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