社会保障削り、軍事費最大、大企業に減税、格差拡大
安倍晋三内閣は14日、2015年度政府予算案を閣議決定しました。国の基本的な予算規模を示す一般会計の総額は、14年度当初比0.5%増の96兆3420億円と過去最大になりました。社会保障に切り込む一方、軍事費は過去最大に膨張。
歳入には、国民の負担で大企業を優遇する安倍内閣の暴走姿勢が露骨に表れました。税収は4兆5240億円の増加を見込みます。最大の要因は、消費税収が14年度比1兆7730億円増の17兆1120億円に達すること。納税時期のずれにより8%への消費税増税分が15年度に満額になるためです。税目別で消費税収が2年連続の最多額となります。一方、法人実効税率を2年間で3.29%引き下げ、黒字の大企業に約1兆6千億円もの減税をばらまきます。
歳出では、手当たり次第に社会保障を切り下げます。公的介護を担う事業者への介護報酬は2.27%減額。生活保護も家賃にあたる住宅扶助費と防寒費にあたる冬季加算を削ります。協会けんぽへの国庫補助も削減。これらだけで自然増分を1700億円削ります。
加えて、生活保護の日常生活費である生活扶助費も13年度から3年連続の減額。年金額については、物価・賃金の上昇に応じた増率を2.4%と見込みながら、1%増に抑制して実質的に大幅削減します。8月以降、介護保険の利用料を所得に応じて1割から2割にアップ。70〜74歳の患者負担は新たに70歳になる人から順次2割に倍増します。貧困と格差を激しく拡大するものです。
米軍とともに「海外で戦争する国」づくりにまい進する姿勢も鮮明です。垂直離着陸機V22オスプレイ5機の購入など、軍事費は3年連続で増加。史上最大の4兆9801億円に膨らみました。14年度補正予算案と合わせて5兆円を超します。沖縄県名護市辺野古への新基地建設費は14年度比80倍以上(契約ベース)に増やしました。
「原発ゼロ」の世論に背いて原子力発電所の再稼働に突き進みます。「原発施設立地地域基盤整備支援事業」を8億円から23億円に増やし、原発を再稼働した場合に限って交付金を配る新たな枠組みをつくります。
雇用分野では、雇用維持に貢献する「雇用調整助成金」を3分の1に激減させ、リストラを支援する「労働移動支援助成金」を48億円増額しました。
公共事業費は14年度とほぼ同水準ですが、不要不急の三大都市圏環状道路(14年度比1%増の2379億円)、国際コンテナ戦略港湾の機能強化(同12%増の687億円)などを積み増しました。
2015年度予算案 暮らし・経済どうなる
- 生活・社会保障
- 社会保障費の「自然増」を1700億円削減
- 「マクロ経済スライド」を発動し年金を実質減額
- 高齢者医療の窓口負担増
- 介護保険の利用料引き上げ。介護報酬を2.27%引き下げ
- 生活保護の生活扶助、住宅扶助、冬季加算を引き下げ。国費で330億円減額
- リストラ支援助成金を増額、雇用維持助成金を大幅減額し逆転
- 「マクロ経済スライド」を発動し年金を実質減額
- 教育
- 教職員数を少子化に伴う「自然減」を除き約100人削減
- 大企業・公共事業
- 法人実効税率を数年間で20%台に引き下げるため15年度2.51%引き下げ
- 公共事業費3年連続増。三大都市圏環状道路、国際コンテナ戦略港湾も増額
- 軍事費
- 史上最高の4.98兆円
- オスプレイ5機、水陸両用車30両購入
- 沖縄米軍基地建設工事費を前年度比80倍以上(契約ベース)
- オスプレイ5機、水陸両用車30両購入
- 原発
- 再稼働に向け「新規制基準」への対応など102億円。核燃サイクルなど398億円
- 原発輸出に向け原子力海外建設人材育成委託費4.3億円