野草と野菜
(卓効のある野草と健康野菜)


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8  梅・梅干し(疲労回復、健胃、解毒に)
 梅干し、といえば保存食の王様のように言われていますが、体調を整え、胃腸を丈夫にする働きは昔から知られていました。梅そのものは果実を生食することができないため、万葉集の時代の人々は、もっぱら鑑賞用として歌いあげています。それが庶民の保存食として、また、優れた民間薬として育ったのは、戦国時代からではなかったかと言われていますが、とにかく、梅干しや梅肉エキスは、本場の中国にもない日本独自の民間薬なのです。
〔効用〕
 梅干しの成分は、ミネラルとクエン酸がほとんど。食当たり、日射病の予防と治療、下痢、伝染病予防、疲労回復、ご飯の腐敗防止に効果があり、腸内の異常発酵を抑え、血液の酸性を中和し、カルシウムの吸収をよくし、老化現象を予防します。青梅を煮つめた梅肉エキスは梅干しの30倍の効力があるといわれますが、下痢には卓効があります。とくに細菌性のものによく、赤痢、急性胃腸カタル、腸チフス、しょうこう熱、丹毒、肺結核、不明熱、セキ止めにも効果があります。梅干しをつけたときにできる梅酢は肺炎、気管支炎、喘息によく、また脳貧血の時の気付け薬にも有効。常飲すれば夏バテ防止、健胃、疲労回復に役立ちます。青梅をホワイトリカーにつけた梅酒は、疲労回復、夏バテ防止、食欲増進の効果で知られています。
〈用い方〉
 健康増進のためには、毎朝毎晩1個ずつ梅干しを食べるのが、手軽で効果的です。これは梅干しを民間薬として利用する際の前提でもあります。もちろん、それまで梅干しを食べていなかった人が、民間薬として用いても効果はありますが、食卓にいつも梅干しを置くことも、ぜひお勧めしたいものです。
 
【肩こり、腰痛、疲労感をとる梅干し茶の作り方】
〈材料〉梅干し大1個、しょうゆ大さじ1、よく煎じた番茶1カップ
〈作り方〉梅干しとしょうゆをコップに入れ、熱い番茶を注ぎます。
〈用い方〉よく混ぜながら、熱いうち飲み、梅干しも食べてしまいます。新陳代謝を盛んにし、疲れをとります。
 
【貧血、消化不良によい梅干し茶の作り方】
〈材料〉梅干し2個、おろししょうが大さじ1、しょうゆ大さじ1、黒砂糖小さじ2、番茶1カップ
〈作り方〉梅干し、しょうが、しょうゆ、黒砂糖を、コップに入れ、熱い番茶を注ぎます。血行を良くし、胃腸を整えます。
 
【カゼ、せき止めによい梅干し薬の作り方】
〈材料〉梅干し大5個、刻みしょうが300g、焼いたみかんの皮、黒砂糖各少々
〈作り方〉梅干しの種を取り除き、ほかの材料と一緒にして、弱火でドロドロになるまで、よく煮つめます。これを食べると、汗が出て、軽いカゼなら一晩で治すことができます。
 
【肺炎、喘息によい梅酢の民間薬の作り方】
〈材料〉梅酢大さじ1.5、れんこんのおろし汁大さじ2、ハチミツ(味つけ程度)
〈作り方〉材料をすべてコップに入れ、熱湯を注ぎます。れんこんのせき止め効果も生かされ、効果的です
脳貧血には、さかずき1杯ほどの梅酢を一気に飲むと効果があります。
 
【梅肉エキスの作り方】
〈材料〉青梅4-5s
〈作り方〉青梅をよく洗って、種を取り、すり鉢ですりつぶします。これを木綿の袋に入れ、土鍋の上で、鍋に汁けがたまるように、よく絞ります。しぼり汁のたまった土鍋を火にかけ、ごく弱火で絶えずかき回しながら気長に熱を加えます。青黄色の汁はだんだん茶色に変わり、全体に泡立ちながら、ドロリと粘りが出てきます。泡をしゃもじですくって、糸を引くようになったら火を止めますが、この間、少なくとも約2時間はかかります。火からおろしたら、消毒したふたつきの容器に入れて保存します。4〜5kgの青梅から作れる梅肉エキスは80〜100gです。
〔注意〕
 黄色く色づく前の青々とした青梅を用いてください。有効成分は若い青梅の果肉に含まれているのです。
〔メモ〕
 絞った青梅のカスは、ハチミツを加えて、弱火で煮るとジャムが作れます。
〈用い方〉
 健康増進や細菌性胃腸病の予防に用いる場合には、大豆粒大(約1g)を食前に飲みます。下痢、腹痛には5gを2時間おきに4、5回飲みます。同様の方法でカゼにも効果があります。
 
【梅干し、梅酢、梅酒、梅肉エキスの外用薬としての使い方】
〈神経痛、リュウマチ、肩こりの場合〉
 梅干しの肉をつぶして、丈夫な和紙に3〜5mmの厚さに塗り、はれた部分、痛む部分にはります。1日3回ぐらい取り替えてください。また梅酢か梅酒を水で5倍に薄め、タオルにたっぷり浸して、痛む部分を冷やすのも効果があります。
〈手足の捻挫、打ち身の場合〉
 梅干しの肉を神経痛の場合と同様にはりますが、ゆり根をすりおろして少々混ぜると効果的です。また梅酒か梅酢と小麦粉を混ぜて、よく練り、ネルの布に5mm厚さにのばして患部に当て、湿布するのも効果的です。
〈頭痛、めまい、歯痛、腹痛の場合〉
 頭痛、めまいには梅干し、2〜3個の肉をこめかみにはります。慢性頭痛の場合は梅干しの肉をタオルに5mm厚さにのばし、和紙をのせて鉢巻きにします。頭痛がとれ、頭が軽快になります。歯痛には痛む側のほおに梅干しの肉をはります。冷えや食当たりによる腹痛には梅干しの肉を、へそを中心にはりますが、下痢がある場合は梅肉エキスの服用も併用してください。また、梅酢を熱い湯で5〜6倍に薄め、タオルにしませて、腹部を温湿布すると腹痛に効果があります。
〈いぼ痔〉
 梅肉エキスと青のりの粉末を練り合わせ、肛門にはって、ごぼうの葉で押さえておきます。食事には、ハトムギを用い、すりおろしたれんこんの絞り汁大さじ2と梅肉エキス3gをよく溶かして、1日3回飲みます。
〈うがい薬に使う場合〉
 梅酢を30倍に薄めたものでうがいをします。何度か繰り返し、最後に、この液を、一口飲み込んで仕上げにします。このうがいは口臭を消す効果もあります。
〈胸部の湿布薬として使う場合〉
 セキ止めには、梅干し1個分の肉に黒砂糖少々と、卵白1個分、そば粉3分の1カップを加えてよく練り、和紙かネルの布にのばして胸にはります。肺炎、気管支炎には梅肉エキス3gを飲んでから、梅酢か梅酒を熱い湯で3〜4倍に薄めて胸部を温湿布します。1日3回以上行ってください。
〈婦人病に用いる場合〉
 こしけ、トリコモナス膣炎には梅肉エキスを入れた干葉湯が効果的です。干葉湯は5本分の大根の葉を陰干しし、乾燥したものを木綿の袋に入れ2リットルの水でよく煮出したものです。これをたらいに入れ、梅肉エキス5gを加えて、下半身を湯につけます。糖尿病のかゆみにも効果があります。