ΔLOOP9の詳細

作成日: 2010年10月17日
更新日: 2011年09月03日

1.回路図
  以下に回路図を示します。WSMLの日本版のような感じですが、温特対策、発振対策、バラツキ対策等を行っています。
トランジスタには、比較的高周波まで増幅ができる2SC1907を使用しましたが、短波帯のみで良い場合は、もっと手に入りやすい2SC1815、2SC1685、2SC945等で十分です。回路図の上側が、室外BOX、下側が、室内BOXの回路図となります。
 

 

2.動作原理の説明
 アンテナには、代々用いてきた1辺が1メートルのΔLOOPエレメントを使用しています。
(1)Q1、Q2について
 この部分の回路は「ベース接地増幅器」という構成です。ベースに一定の直流電圧を加え、エミッタが入力、コレクタが出力となります。ベース接地増幅器の特徴は、入力インピーダンスが低く、かつ、周波数特性が良い、非反転の電圧増幅器になります。入力インピーダンスが低いということは、低い周波数までゲインを持たせる事が可能で、当家では60kHzのJJYも入ります。
 この回路のゲインGは、G=Rc/re となります。Rcはコレクタ抵抗(今回は390Ω)、reはエミッタの持つIe-Vbeカーブの傾きから発生する抵抗成分です。近似的には、re=26mV/Ie となります。つまり、Ie=10mAとなるようにR3とかR4の値を決めると、約2.6Ω程度となります。これが入力インピーダンスとなるわけですから、ベース接地は入力インピーダンスが低いアンプであると言える訳です。これで、ゲインを計算しますと、G=390/2.6=150(倍) の増幅器である事がわかります。更にエミッタ電流を増しますとゲインは上昇します。でも、単純に流せば良いというものではありません。トランジスタが一番良好に動く電流というものはありますので、それに合わせて設計しております。
 ここの計算で用いたトランジスタは、バイポーラIC用のトランジスタをモデルに計算しました。パーツ店で売っているようなディスクリートトランジスタでは、ゲインは1/4〜1/8になりますので要注意です。また、reは4倍〜8倍となります。
 また、ここで問題は、reを決めるIe-Vbeカーブは双曲線のような形状をしており、どの点をとってもゲインが直線にはならない。このために、中波帯の上などでは、強い放送局の2倍3倍という周波数に、いわゆる「オバケ」が発生します。この対策としては、できるだけ直線性が高いIeが大きい部分を使用することです。ただ、上記のように、流せば良いものではないです。色んな要素から一番良いバランスとなる点にIeを決めるべきでしょう。本アンテナではそういうバランスで、各抵抗値を決めました。
(2)Q3、Q4について
 この部分の回路は「エミッタ接地の差動増幅回路」となっています。この回路は、トランジスタ回路の基本中の基本回路です。ゲインGは、G=Rc/Reとなります。今回は、Rc=200Ω、Re=27Ωとしていますので、G=200/27=7.4(倍)となります。エミッタ設置型の特徴は、高入力インピーダンス、反転型の電圧増幅器になります。よって、前段のベース接地増幅器の出力インピーダンスが390Ωでしたので、これを無視できるくらいの高入力インピーダンスであり、前段のアンプに影響を与えないという意味で、良いコンビとなります。
 T1のトロイダルコア(FT-50-77)をトライファイラー巻き(7回)として、ここで、差動動作をさせています。
(3)室外BOXと室内BOXの接続
 同軸ケーブル1本で接続します。当家では、アンテナまでの距離が短いので、1.5D-2Vを使用しました。
(4)電源について
 非スイッチング型の12VのACアダプターを使用します。100mA程度の容量があればOKです。LDO(低ドロップ)タイプの3端子レギュレータ、TA7810Sを使用していますので、一番手に入りやすい12VのACアダプターでOKなのです。
(5)入力部のLPFについて
 当家のベランダの端っこに設置しましたら、発振をしてしまいました。ベランダの真ん中では発振しません。ゲインが高いからでしょうし、増幅器もFtの高いトランジスタで組んだからでしょう。L3、L4、C15、C16は、大屋根等に接地される場合は他の構造物との干渉が無いでしょうから、削除した方がノイズフロアーが一定化して良い結果が出ると思います。これは、それぞれのご使用環境で試してみてください。LPFは入れないのがベターなのです。

<LOOP ANTENNA部>
 ΔLOOP7と同じアンテナエレメントとしております。

<室外BOX部>
 以下にユニバーサル基板に製作した、室外BOXの写真を示します。左側2個の端子は、LOOPエレメントからの入力を接続するバナナ端子です。右のコネクタは同軸ケーブルの入力です。
 室外BOXは、エレメント直下に設置して、エレメント両端部に逆相で出てきた電圧成分のみを増幅する働きをします。
 

 
 
<室外BOX部と室内BOX部の接続>
 同軸ケーブル1本です。50Ωのものをお勧めします。私は、1.5D-2Vを7m使用しています。

<室内BOX部>
 基本的な回路はΔLOOP8と一緒ですが、電圧を10V化したのと、より小さいケースに入れてみました。
 

 
 
<室内BOX部と受信機の接続>
 室内BOXには、BNC端子と3.5mmΦモノラル端子を受信機接続用に設けております。BNCは通信型受信機接続用、モノラル端子はDEGEN 1103等のポータブルラジオ用です。同軸ケーブルで接続します。

<ACアダプターについて>
 ΔLOOP7の本を購入されて製作された皆様が一番苦労されたのが、このACアダプターの調達でしょう。ACアダプターには非安定タイプというスイッチング式でない、トランス式のものを使います。スイッチング式ですとノイズ発生等の危険性があるからです。
ACアダプターからの電圧を安定化させるために、3端子レギュレータを使用しますが、ここで約2Vの電圧降下が起こりますので、ΔLOOP7では14V以上程度の物をお勧めしていました。(実際は消費電流が少ないので12V品でも動作はしましたが…)
今回の、ΔLOOP9ではこの点にも配慮して3端子レギュレータを10Vのものにしております。つまり、一番手に入りやすい12VのACアダプターがそのまま使用可能なのです。この点は、ΔLOOP7の反省を入れたつもりです。

3.部品表
 次にこのアンテナの部品表を示します。
 

4.設置状況
 ΔLOOP7をとりあえず外して、ΔLOOP9のみにしております。いざとなれば3分もあればΔLOOP7に戻せるようにしています。現在は、ΔLOOP10となっております。
 

本アンテナの評価結果はこちらから!


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