御同朋の社会を目指して!


「教育基本法」改正・私の見方

 
                                          
 現在、子供たちが学ぶ教育現場では様々な改革が急ピッチで行われていま
す。その中の一つに、現在の「教育基本法」を改正して、新たな法律を作ろうと
する動きがあります。     
 でも、「教育基本法の改正だ!」と言われても、何がどういけないのかわから
ない方も多いのではないでしょうか。実は私も最近までその一人でした。
 そこで、このページではこれから何回かに分けて、政府が進める「教育基本
法」改正の意図について、私の見方・意見等を述べてみたいと思います。



『心のノート』を考えるE


 さて、これまで『心のノート』の内容についてみてきましたが、どうだったでしょう か?表向きは道徳の「補助教材」になっていますが、その内容は、社会の矛盾や 不条理に対して無批判であり、かつ排他的愛国心を兼ね備えた、国家にと って非常に都合のいい従順な国民を一律に育てることにあるということが分かっ ていただけたのではないでしょうか。



 では、なぜ、今、この『心のノート』が子どもたちに配布されることになったのでし ょうか?少しその背景を考えてみたいと思います。
 

 現在、日本の教育現場では、「ゆとり教育」というやさしい′セ葉とは裏腹に、 「習熟度別クラス」の導入や、「中高一貫校」の設立、全国学力テストの実施など 教育現場に競争原理を導入することで、公教育のスリム化、能力別差別化という 新自由主義的教育改革が急ピッチで行われています。ちなみに、「自己責 任」や「勝ち組・負け組み」という流行り言葉もその一環から出てきています。
 
 それを裏付けるものとして、元教育課程審議会会長・元文化庁長官の三浦朱 門氏の次の発言はあまりにも有名です。

 「できん者はできんままで結構。戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることば かり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。百人に一人 でいい、やがて彼らが国を引っ張っていきます。限りなくできない非才、無才に は、せめて実直な精神だけを養ってもらえばいいのです。(略)国際比較をすれ ば、アメリカやヨーロッパの点数は低いけど、すごいリーダーも出てくる。日本もそ ういう先進国になっていかなければいけません。それがゆとり°ウ育の本当の 目的。エリート教育とは言いにくい時代だから、回りくどく言っただけの話だ」


 また、昨今の教育基本法見直しを提言した教育改革国民会議の元座長・ノーベ ル物理学賞受賞者・江崎玲於奈氏が、「・・ある種の能力の備わっていない者が、 いくらやってもねえ。いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺 伝子情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ」と優生学(悪い遺伝子 を避け、「優良な」子孫の社会をつくることを目的とする学問。その最悪の対応と しては、ナチスの人種絶滅政策や障害者「安楽死」、強制赴任手術などがある) 的とも言える選別を奨励する発言をしていることからも窺えます。



 さて、このような新自由主義的教育改革の結果、将来の日本社会では、熾 烈な競争を勝ち抜いたわずか数%のエリートが、その他大多数の非エリートを支 配するという構図が出来上がっていくと予想されます。
 
 しかし、そのような社会の中で、競争に敗れ、経済的にも社会的にも下位の位 置に置かれることとなる大部分の人々の間に、大きなストレスや不満が生じてくる ことは十分に想像できます。もしその不満が爆発するようなことになれば、それ は、政府や権力者にとってもっとも脅威となることは歴史の示すとおりです。
 そこで、そのような不満やストレス、空しさを自らコントロールして抑え込み、「前 向きに」「自己責任」において生きていく無批判で従順な国民が国家にとってどう しても必要となってくるのです。
 

 つまり、少し前に「今、なぜ「教育基本法」改革なのか?」で書いたように、今、ア メリカを中心として世界規模で経済のグローバリゼーション化が進んでいます。そ のような世界の中で日本が勝ち残っていくためには、国益を代表して国を引っ張 っていく有能な人材と、それを支える心のセルフコントロールを備えた無批 判的大衆の形成がどうしても必要となってくる。さらには、いざという時に、戦争 のできる国家についていく「愛国心」をもった国民を準備しおく必要もあると権力を 持った人たちは考えているのですね。



 どうでしょうか?以上のような背景をもとに、国は、各方面からの批判にもかか わらず、この『心のノート』を配布し、教育を通して子どもたちの心を操ろうとしてい るのです。


05.1.26(tomo)


参考資料:『「心のノート」を考える』 岩波ブックレットNO.595 三宅晶子著



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