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お念仏の教え



共命之鳥(ぐみょうしちょう)@
 
 お釈迦様がのこされたお経をみてみると、お浄土には色とりどりの珍しい鳥が たくさんいて、一日中、優雅な鳴声で仏様(阿弥陀如来)の教えを説いているんだ そうです。
その中に「共命之鳥(ぐみょうしちょう)」という鳥がいるんだそうです。この鳥は非 常に変わった鳥でして、足や羽・胴体までは普通の鳥と変わらないのですが、な んと首から先、つまり頭が二つあるんだそうです。そして、体の表面の羽毛はとて も綺麗で、その鳴声は非常に美しいんだそうです。


 さて、そんな「共命之鳥」について、次のような物語があります。
 昔、ある時、多くの「共命鳥」の中でも、とりわけすばらしい鳥がいたそうです。 お互いとても仲がよくて、毎日、そのきれいな鳴声を森の仲間たちに聞かせて楽 しく暮らしていたそうです。
 そんなある日、森の動物たちの間で、一体どちらの鳴声のほうが美しいのだろ うかと話題になったそうです。それを聞いた二羽(本当一羽ですが)は、お互いが 「自分のほうが一番に決まっているじゃないか!」と言い争いを始めたそうです。 頭は二つですが、身体は一つですので、離れたくても離れることができず、争い はどんどんとエスカレートしていき、お互いがお互いを憎しみあうまでになったそ うです。そんなある日、片方の鳥が「そうだ!もう一方のほうが、この世からいなく なってしまえば、自分は一番になれるぞ!!」と考え、こっそりとエサに毒を混ぜ て片方に食べさせたそうです。・・・・相手の苦しむ顔を見ながら「これで俺が一番 だ!」と微笑んだ瞬間、自分自身も同じように苦しくなってきて、そのまま両方とも 死んでしまったという話です。・・・当たり前の話ですよね。頭は離れていて別々で すが、身体は一つなのですから、毒を食べた方も死にますが、食べさせた方も一 緒に死んでしまうのは・・・。


 さて、この愚かな「共命鳥」の話は、一体私たちに何を物語っているのでしょう か? 
 
 そうです、この物語は、「他を滅ぼすことは、自分自身を滅ぼすことになる」、と いうことを私たちに教えてくれているのですね。
 普段、私たちは自分ひとりで生きていると思っています。しかし、そうではないん ですね。気がつかないだけであって、私たちは、沢山の周りの人々や、他の植物 や動物のいのち≠ノ支えられてはじめて生きることが出来ているのですね。そ れと同じように、私のいのち≠熨シのいのち≠支え、生かしているのです ね。人間も動物も植物もすべてのいのち≠ェ互いを支え支えられつつ、一つ の大きないのち≠共に生きているのでね。
 それなのにどうでしょうか、「自分さえよければ、他人はどうなってもいい」とか 「われ善し、ひと悪し」といつも自分中心に都合よく物事を考えていたのでは、相 手を傷つけるのはもちろん、結局は自分自身をも傷つけることになってしまうの ですね。


 さて、その後、この愚かな「共命之鳥」がどなったかというと、実は、阿弥陀様に よってお浄土に救われていったんだそうです。そして、そのお浄土から「他を滅ぼ す道は己を滅ぼす道。他を生かす道こそ己の生かされる道」と、美しい声で毎日 鳴き続けているんだそうです。

 ところで一体誰に向かって鳴き続けているのでしょうか?
 私には、この共命之鳥が、今の私たち人間の姿を見て、「このままじゃ、まずい ぞ!」「早く今の自分の姿に気づいて、二度と俺たちと同じ道を歩んでくれる な!」と、私たち一人一人に呼びかけてくれているように思えてなりません。


05.1.15(tomo)



参考資料:『阿弥陀経のことばたち』 本願寺出版 辻本敬順著


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