本文へスキップ

小さな子どもが過ごす場所だからこそ、保育園は”家”でありたい。

電話でのお問い合わせはTEL.072-747-4697

〒563-0026 大阪府池田市緑丘2-6-20

コラム 11.「子どもの味覚ってどうなってるの?」 

 突然ですが、皆さんは粉ミルクを溶かして飲んでみたことはありますでしょうか。赤ちゃんの時ではなく、大人になってからです。

 私の娘が生まれた時、実は興味本位で飲んでみたことがあります。思いのほか甘くてびっくりしました。これだけ甘ければそりゃあ赤ちゃんも喜んで飲むだろうとも思えたのですが、しかし、私の娘はまったくというほどミルクを受け付けませんでした。
 ミルクはわりと早い段階であげていたので、母乳育児を長く続けたせいというわけでもなさそうです。両親ともに仕事をしているのでいつでも母乳を飲ませられる状況ではありませんから、親としてはやはり先が不安になります。
 哺乳瓶の乳首が固すぎるのではないかと付け替えてみたり、粉ミルクの種類を変えてみたり、かなり試行錯誤したのですがまったく飲みません。あれやこれやと考え、ふと思い立ち、粉ミルクを通常の2倍量に薄めて与えてみました。すると、ごくごくと勢いよく飲み始めたのです。その時になって、ああ、この子には粉ミルクが濃すぎたんだとやっと理解できたのでした。

 その後に色々調べてみると、ヨーロッパ(確かスイスだったと思います)の調査で「そもそも粉ミルクは濃すぎる」という結論が出ているのを知りました。保健師からは「ミルクは既定の濃さがもっとも吸収しやすくなっているのに!」と言われましたが(飲まないものはどうしようもないじゃないか、と思ったのですが)、医師からは「それで飲むんなら、回数を増やせば問題ないよ」とも言われました。(ちなみに、規定より濃くすれば胃腸に負担がかかるという事は理解できるものの、薄くすると吸収効率が下がるというデータはどこを探しても見つかりませんでした)
 そして思い出したのは、私自身の味覚が人より強かった、という事でした。

  ご自身の経験に、大人になってから食べられるものが増えたということはないでしょうか。多くの方にそのような経験があることとと思います。対して「子どもの頃からなんでも食べれたよ」という人は少数派です。これは年齢を重ねるにつれて味覚が衰え、かつて苦手だったものの苦みやえぐみ等を感じなくなったからという事がおおいにあります。
  味覚は赤ちゃんの頃がもっとも強く、大人の3倍にもなります。ですから離乳食を始めたばかりの頃は味付けをせずに与えないと、刺激が強すぎるということになってしまうのです。
 成長するにつれて味覚は少しずつ衰えていくので、徐々に調味料を加えるようにしていき、2歳半頃には大人と同じ味付けの物を食べさせるという事は皆さんもよくご存じだと思います。味覚はその後も引き続き衰えていくのですが、ずっと薄味のままだと、いずれ子どもにとって味気のない食事になってしまいます。その都度、適切な味付けにする事が大切です。

 人によって違う味覚ですが、この違いは衰えによるものだけではなく、生まれ持っての個人差もあります。人口の25%は味覚が非常に鋭く、これが「スーパーテイスター」と呼ばれます。逆に「ノンテイスター」と呼ばれる味覚の鈍い人も25%います。
 一見、味をしっかり感じられるスーパーテイスターの方が良さそうに思えるのですが、実はそうでもありません。味覚が鋭いという事は、野菜の苦みも強く感じるという事です。
 そもそも味覚が何のためにあるかというと、口に入れた物が食べて大丈夫かどうか判断するためにあるのです。そして苦味は、毒の味です。野菜は自己防衛のために自然毒を作りだすことが最近知られてきましたが、この毒には発がん性があることが指摘されています。野菜も食べすぎれば、がんになるのです。
 また一説では、この自然毒は農薬よりも強いとも言われています。スーパーテイスターはこの毒性を強く感じ取ってしまうので野菜嫌いが多くなります。
 子どもが口に入れた野菜などを吐き出すのを見て嫌がる大人は多いのですが、そもそも毒を体外に吐き出そうとするのは体が持つ自己防衛機能です。“美味しくないものは食べたくない”というのは、ごく自然な反応です。体が毒だと言っている物をなんとかして食べさせようとするのは少々酷でしょう。
 しかし食物には体にとって必要な栄養素が含まれているので、これを摂り入れやすくするために、調味して美味しく食べられるようにすることが人類の英知として生まれました。

 スーパーテイスターは苦味以外にも味の濃いもの全般が苦手です。私の娘が通常の濃さの粉ミルクを飲まず薄めたものをよく飲んだ話を先にしましたが、つまり私の娘にとってはミルクの味が甘すぎたということですね。スーパーテイスターは必然的に好き嫌いが多くなるため大腸がんのリスクが高まりますが、油濃い物などもあまり食べたがらないためスリム体型になる傾向があります。

 対してノンテイスターの方はと言うと、味覚が鈍いのでなんでもよく食べます。好き嫌いがほとんどありませんので大人から「なんでも食べて偉いね」とよく褒められますが、味覚が鈍いぶん味の濃い物を好むようになり、大きくなるにつれて肥満や心臓病の傾向がでてきます。

 いろんなものを食べられるようにする、あるいは食べすぎないようにするのは確かに大切なのですが、大人が神経質になりすぎると過干渉につながりかねず、そうなってしまうと子どもの人生にもっと大きな悪影響が出てしまいます。どういったものにせよ偏った食事傾向が子どもの育ちに良い影響を与えないことは当然のことですが、それに対する関わり方も、いきすぎたものになる前にまずはその子自身の味覚に注目してみても良いかもしれません。育ちに合わせるのはもちろん味覚にも合った適切な味付けで、美味しく様々な食事を摂れるようにしてあげたいものですね。

information

子どものお家 ぞうさん保育園

〒563-0026
大阪府池田市緑丘2-6-20
TEL.072-747-4697
FAX.072-747-4697