初版 09.2 最新版 2013.4

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 藤沢目次総目次



藤沢作品の魅力を書いた本 (3)

お詫び 2008.4.14
 70才(前期高齢者フフフ)を越して、根気とやる気がすり減ってきて、更新が進まなくなったし、書くことに手抜き(ネット引用、書籍帯の引用)が増えてきた。
 自分の感想も書けなくなってきた。というわけです。ごめんなさい。

この頁で取り上げた本

■雑誌『オール読物』(13.5月号)遠藤展子「藤沢周平「書き遺すこと」」

■ムック『藤沢周平と[海坂藩]を旅する〜日本および日本人の原風景』徳間書店 ■雑誌『オール読物』11月号2012.10 ■『歴史読本』編集部『藤沢周平を読む』 ■酒井英行『藤沢周平を語る〜『蝉しぐれ』のことなど』 ■野火 迅『ヘタな人生論より藤沢周平 』 ■青木美智男『藤沢周平が描ききれなかった歴史 『義民が駆ける』を読む』 ■高橋 敏夫 『藤沢周平の言葉  ひとの心にそっとよりそう』  ■高橋 敏夫 『藤沢周平 人生の愉しみ「生きるチカラ」と「小さな発見」』  ■NHK『わたしの藤沢周平』制作班編 『わたしの藤沢周平』

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2013.4 記

文芸春秋社90周年特別編集『オール読物』
「作家の手紙」特集号 藤沢周平(父)から家族への手紙というか遺書というか・・

遠藤展子《藤沢周平「書き遺すこと」 家族に当てた最後の手紙》

 (2013.4.22 文芸春秋社 1000円) 

「書き遺すこと」内容
 ■藤沢周平「書き遺すこと」 茶封筒に入っていた「書き遺すこと」が書かれた原稿用紙の写真(冒頭の一部)
 ■展子をたのみます。
 ■葬儀の希望 最小限の人たちでしてほしい  通夜なし  密葬 など

 ■ 和子(妻)に 特に言い残したいこと
 ■展子夫妻と浩平(孫)に

遠藤展子の文
 ■父からの最後の手紙
 ■父は良くなると信じていた
 ■今年は四十五回目の結婚記念日

 遠藤展子さんは、父藤沢周平さんの娘さんです。娘さんが書かれたお父さんの文章・本はかなりあります。
 これは少々異色なものかもしれません。

 そのなかでちょっと驚いて引きつけられたのは、次の文章です。
-------引用------
 この「書き遺すこと」にはもう一枚の原稿があります。万が一自分が亡くなった時に、葬儀で読む親族の挨拶文の見本でした。----当日は夫が、父が見本として書いた 原稿を親族の挨拶として読みました。

 「挨拶
 父は若いときに大病をわずらい、そのために病気になってからも、生活に苦労しました。
 しかし中年から晩年にかけては、自分のもっとも好きな仕事につくことが出来、本日ご参列のみなさんのあたたかいご配慮に包まれて、いい仕事を残すことが出来ました。
 作家として、めぐまれた生活を送ることが出来た、思い残すことはないと、生前の父が申しておりました。みなさんのあたたかいご配慮に厚くお礼申し上げます。
 本日はありがとうございました。」
-------引用------


 一読し、「藤沢周平さん、えらく面倒見のいいパパだなあ」「自分の死後も家族の お世話をするのだなあ」とニコリとしました(笑)
 もういちど読んでみると、遠藤展子さんは、「父は生きる意欲を持ち続けながらも、自分の最後を受け止め、家族が困らないように終(しま)い支度をして逝きました。そんな父に「お父さん、準備良すぎるよ」と今も思います」と書かれています。やっぱりね(笑)。


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2012.11 記

映像作品で読み解く「藤沢周平」の世界 **映像作品だけではおまへんが

藤沢周平と[海坂藩]を旅する〜 日本および日本人の原風景

 (2010.11.15 徳間書店  750円) 

おもな内容
 【映画・ドラマに描かれた藤沢周平作品全解説】
 【特別インタビュー】松平定知「日々を一生懸命生きる人たちへのやさしきまなざし」
 【特別寄稿】
   繩田一男「海坂藩 ある“悔恨”の昇華」
   遠藤展子「父・藤沢周平の思い出 父と映像」

 ●第一章 映像作品で読み解く「藤沢周平」の世界
 ●第二章 藤沢時代小説、時代劇を楽しむための基礎知識
 ●第三章 日本の原風景・庄内・鶴岡を訪れる

 ○ このムックの一番のウリは、テレビ・映画化された藤沢作品のデータ、画像の数々でしょう。映像をみて、藤沢作品を読んでみたという入門者も多いと思いますので、参考になると思います。

 ○ 藤沢作品を読むための用語解説、庄内・鶴岡の歴史、江戸時代の基礎知識などが 写真・絵・図などで書かれていて、読み物としても楽しめる。
  時代小説は読まなかった私は、藤沢作品を読むときに 「用心」「上士・下士」など用語など分からないことだらけで、辞書で調べたりしたものだ。

 ○ 著者、編集者の心のこもった仕事に敬意を持ちます。たとえば、28頁の『蝉しぐれ』の冒頭の文章など。


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12.11 記

没後15年の対談

『オール読物』2012.11月号

 (2010.10.21 文春  1000円) 

 没後15年 特別対談「藤沢周平の美しさ」 

杉本章子×葉室麟 
「たそがれ清兵衛」「海鳴り」『蝉しぐれ』・・・
なぜ人の心を捉えて離さないのか?

 対談の杉本章子さん(時代小説作家、直木賞『東京新大橋雨中図』)の選んだ「美しい小説」3作品----『玄鳥』『海鳴り』『橋物語「小ぬか雨』。杉本さんは藤沢周平さんについて書かれたものがいろいろとあります。
しかし、正直にいうとこの人の小説はひとつも読んだことがないと思います。

 葉室麟さん(時代小説作家、直木賞『蜩の記』)の3作品---『たそがれ清兵衛』 『三屋清左衛門残日録』 『橋物語 「小さな橋で』。
この人の『鯛の記』は読みました。主人公はできすぎというか、彼の人間性がかかれてないかなあ、と生意気に思いました。

 さて、お二人の対談は、「う〜ん」というところです(笑)


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盛りだくさんの編集

『歴史読本』編集部『藤沢周平を読む』

 (2010.9.23 新人物往来社  1575円) 

【目 次】

    巻藤対談 藤沢周平の世界(佐高信/宮部みゆき)

    第1章 藤沢周平の魅力(静かなたぎり(杉本章子)
          お家騒動と藩政改革(菊池  仁 ほか)
    第2章 藤沢周平論(藤沢周平という人生(関川夏央)
          対談 藤沢周平の魅力(皆川博子/常盤新平 ほか)
    第3章 藤沢作品の読み方・味わい方(『時雨のあ と』(藤田昌司)
         『竹光始末』(駒田信二 ほか)
    第4章 名作再録藤沢周平(上意改まる/長門守の陰謀 ほか)

    第5章 藤沢周平完全年譜─六十九 年の生涯(阿部達二)



【カバー帯から】から

 藤沢周平のすべてがわかる本! 
 自筆原稿・創作ノート・遺愛品・プライベート写真・・・
 初公開写真を含む貴重な図版を多数収録! 

 カラー口絵 藤沢周平に逢う

  収録されているのは、新人物往来社の出版物に掲載された作品です。だいたいは読んでいるはずですが、なんせ年をとった私は、どれも初めて読むようなものです。
 というわけで、この本のようにまとめてくれていますと、重宝です。

 藤沢周平さんの作品の魅力について みちびいてくれたひとがふたりいます。
 ひとりは、中野孝次氏(『清貧の思想』)です。テレビで『蝉しぐれ』を暗誦していました。もうおひとりががこの本にもいくつかの文章が掲載されている向井敏氏です。
 向井氏の藤沢作品の書評をまっさきに読みました。うまいもんです。


 巻頭のカラー口絵「遺愛の品品に人柄を憶(おも)う」、「藤沢周平原点(ふるさと)へ還る-藤沢周平記念館を訪ねる」も興味ふかい。

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10.10 記

対談です。が、どうもねえ。不思議というか。

酒井英行『藤沢周平を語る 〜『蝉しぐれ』のことなど』

 (2009.10 沖積社  2500円) 

【目 次】
   1 『隠し剣鬼ノ爪』
   2 『盲目剣谺返し』
   3 『山桜』
   4 『たそがれ清兵衛』
   5 『蝉しぐれ』
      1. 抒情の構造
      2. ホモソーシャルのユートピアとしての時代小説
      3. 女性ジェンダーはどのように描かれているか?
      4. 反体制小説か?

【著 者】
酒井英行 静岡大学(人文学部)教授
高野圭子 静岡大学大学院人文社会科学研究所(比較地域文化専攻) 修士課程修了

【カバー帯から】から

 男性ジェンダー/女性ジェンダー、ステレオタイプ化されたセクシュアリティなどの観点から、
藤沢周平の「蝉しぐれ」その他の傑作の魅力を語り尽くした対談。


 実はこの本を買ったのは、去年(2009.11)です。新しい本を買えば、なるべく早くホームページで紹介するようにしてきました。ところが、約1年も紹介できませんでした。
 気になることがいくつかあったからです。
 また、対談の編集がどうもどうもで、読みずらかったからです。編集者はもっと談話の内容がとらえられるようにしたらいいのに、と思いました。

対談集だのに、著者名はひとりの不思議


 著者名は酒井氏のみで、対談の相手の高野氏のお名前は、表紙にはない。
 「あとがき」と「奥付けの著者欄」に出てくるのみ。理解しがたい行為だが、ひょっとすると 対談相手の高野は、酒井の教え子、もしくは大学内の家来(笑)かもしれない。
それにしても、この“センセイ”は不遜なことをするなあ。


だから イヤなんです


 学者や知識人たちのなかには、自分たちの言葉で表現しょうとする人がいる。
 上の青色の部分の「男性ジェンダー/女性ジェンダー、ステレオタイプ化されたセクシュアリティなどの観点」は、なんのことだろう。私にはわからない。藤沢周平作品について書こうとゆうのに、一般的でないカタカナ語を使うというセンスはあきれる。
 大学という特殊な世界で生きていると、こうなるのだろうか。しかし、これは市販される商品だのに。


税込みで 2625円! 

 対談には、ついていけない。おもしろくもない。
『蝉しぐれ』について「ステレオタイプ化されたセクシュアリティなどの観点」から論じるなんて、なんなの?


 

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09.9記

なんともみょうな困ったような書名

 だが

野火 迅『ヘタな人生論より藤沢周平    
不朽の時代小説から読みとく「人生の重大な秘密」とは』

 (2009.8 河出書房新社  1575円) 

【目 次】

 1  家族のかたち
 2  運命に生きる
 3  心情を懐いて
 4  女がいて、男がいる
 5  信条をつらぬく
 6  勤めるという人生
 7  頂点をめざす
【著 者】
1957年生まれ。早稲田大学卒業。出版社の書籍編集長を経て、文筆活動を開始。日本古代史、中世史を中心とした歴史小説を発表。ま著書に『使ってみたい武士の日本語』小説には『仏鬼』『鬼食う鬼』他。

【カバー帯・出版社のホームページから】から

■藤沢周平の小説は、人間への深い観察、人生への鋭い洞察に満ち、情感豊かな人生世界を創出している。人生の普遍の真理がこめられた心情描写、科白、情景に光を当て、人生を探求する一冊!

■時代を描き、人間を描き切った藤沢作品には、“生きるヒント”がこんあにも詰まっている!!何を胸に刻んで、己が人生を歩むか…?!

 比較的若い世代の藤沢 周平ファンは、その時代小説を、魂の滋養を摂取する「人生の書」として読んでいる。人間にまつわる深い観察、人生にまつわる鋭い洞察に満ちているからだ。

  とはいえ、この小説世界には、幸と不幸の境もなく、成功と失敗、勝利と敗北の明確な区別さえもない。ここでは、正義感と野心、貧困と平穏、破滅と再生…が 背中合わせになっている。それらの相反するものが、一人の人間の人生において、あるいは一つの行動において、交互に変転する。藤沢周平の小説世界にあるの は、人生論ではなく人生そのものであり、藤沢周平は、明快な人生論を語らないことで、じつは「人生の重大な秘密」を語っているのだ…。


    「なんとも みょうな 困ったような書名」だなあ、と手を出すのにすこしためらわれました。

 ○他人の人生論を「ヘタな人生論」といい それを書名にしてしまうとは、品位にかけますね。
  河出書房ってそんな出版社ではないとおもってましたが。

 ○このシリーズ本は広告によると、70万部売れたそうです。「ヘタな人生論」よりいいぞと対比されたものには、
イソップ物語・徒然草・中国の固事寓話・良寛・寅さんのひと言・万葉集・一休・・・たち。いろいろだあ。
 不思議なノーミソをもった編集者だ。ひょっとすると、「ヘタな人生論」というのは 枕詞みたいなもんかも しれない。
 『ヘタな人生論より河出書房新社』でも 書名としておさまりますね。


 ○【不朽の時代小説から読みとく「人生の重大な秘密」とは】

 この文章がわからない。【藤沢周平さんの小説に「人生の重大な秘密」】がある、 という意味かもしれない。
 しかし、小説に人生の秘密を読み取る なんて、 【(ヘタな)人生論】を読むことになりそうな気もする。

 私は、人生論を読もうとして、または 人生について学ぼうとして、小説を読んだりはしない。ただただ おもしろいから、愉しいから。もしなにか得るもの・学ぶものがあれば、それは 副産物。

  **本書を読めば、藤沢周平作品の人生の重大な秘密について言及されています。

 書名などについて ながながと書きましたが、これらは出版社の編集者がつけた書名だろうし、つけた帯です。
 ところが、読んでみるとおもしろい。文芸評論家やら研究者たちの書いたものは、小難しいことばを つかったり、えらそーな言い回しをしたり、たのしくない! 
 ところが本書は、作家(小説)の書だ。読みやすいし、自分の日常・考えなどが挿入されていて、おもしろい。自分のいいたいことに説得力もある。

 たとえば、『蝉しぐれ』で 文四郎が切腹させられた父を運ぶ胸のつまるシーンがある。そこに 著者の父の葬儀の場面がでてくる。(23ページ) それと周平の文章を重ね合わすと、説得力がでてくる。

 次の文章がでてきたときは、絶句(笑)したね。『盲目剣谺返し』で、飼い殺しされる侍を書いていると、
「余談ながら、潤沢な資金にものをいわせて、年俸一億円クラスの野手をベンチ・スタートさせる読売巨人軍は、プロ球界でいちばん「飼い殺し」の得意なチームといえるだろう」とくる。


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09.8記

「ありもしないことを書き綴っていると、たまに本当にあったことを書きたくなる」
と語った藤沢周平氏の長編歴史小説を、歴史学者が知の限りを尽くして追求する。


 天保期の庄内国替え反対一揆を小説化するために藤沢がたどった思考を追いながら、
作家が踏み込みきれなかった醍醐味ある歴史像を提示する。

青木美智男『藤沢周平が描ききれなかった歴史 『義民が駆ける』を読む』

 (2009.8 柏書房  1890円) 

【目 次】

  序 藤沢周平の歴史小説
  1 『義民が駆ける』の筋書きと若干の問題
  2 川越藩から庄内藩を見ると
  3 三方国替えの真の狙いを考える
  4 事後談―騒動の傷あと・忠邦の怨念
  5 庄内藩の地名・役職名を知ろう
  6 主人公は義民の群れ


【著 者】
1936年、福島県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。
日本福祉大学教授、専修大学教授を経て、専修大学史編集主幹。専門は日本近世史

  【告白】 このホームページ「残日録」で紹介した藤沢周平と関連本は、全て購入し、だいたいは 読んだ。

 が、09.8に紹介したこの本は 購入してない!  
新聞広告とネットの記事の引用である。 
いいわけすると、年金生活での本題の出費は苦しいものもあるからね。

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09.5記

生きづらい時代に 心に響く 「微光のごとき」言葉たち
 また、また、また、また、また おなじみ高橋敏夫氏の藤沢周平本

高橋敏夫『藤沢周平の言葉 ひとの心にそっとよりそう』

 (2009.5.24 角川SSC文庫  780円) 

【目 次】

  はじめに--人にそっとよりそう言葉へ
  第1章  闇と微光--作家の原風景
  第2章  乳のごとき故郷--作家の自然
  第3章  苦しみと悲しみの交感--作家の誕生
  第4章  人のにぎわいに親しむ--市井もの
  第5章  ユーモアとストーリーの誕生--浪人もの
  第6章  いくつもの「友情」--武家もの
  第7章  強者を嗤う--武家もの
  第8章  「嫌い」づくし--作家の日常
  第9章  しんぼうづよく生きる--晩年もの
  おわりに--藤沢周平にとって時代小説とはなんであったか



  著者は例によって、藤沢作品・エッセイからキーワード的な言葉・文章を探しだし、分類する。
 引用された言葉・文章を 読んでいるうちにまたその小説を読みたくなる。

 巻末に「本書に取りあげた本の文庫版」リストがあるのは、これから読む人に 役立つだろう。

【カバー 帯裏】から

 藤沢周平の作品には、逆境を生きる者にそっとよりそう言葉があふれる。
おなじみの『蝉しぐれ』や『用心棒日月抄』などの時代小説から佳品のエッセイまで、印象的な言葉をあますところなく引用して、作家の生活史と豊かな表現世界をより広く、より深く紹介する。

 生きづらい時代の今こそ、「微光のごとき藤沢周平の言葉」が求められている。 本書をひもとけば、すでに読んだ作品は何度でも読みたくなり、未読の作品は読みたくなること、間違いなし。「感動する力」を本書で養おう。


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09.2記

人生の“こんな局面”で読んでみたい おなじみ高橋敏夫氏の愉しみ方

高橋敏夫『藤沢周平 人生の愉しみ「生きるチカラ」と「小さな発見」』

 (2009.1.1 三笠書房/知的生き方文庫  600円) 

『蝉しぐれ』『たそがれ清兵衛』『用心棒日月抄』などの名作から、「頭髪無情」「腰痛と散歩」「老年」「出発点だった受賞」などのエッセイまで、心に響く名文。 
【目 次】

  第1章 「自然」を生きる愉しみ
  第2章 「故郷」の愉しみ
  第3章 「旅する」愉しみ
  第4章 「人と会う」愉しみ
  第5章 「食べて」「飲む」愉しみ
  第6章 「ユーモア」を味わう愉しみ
  第7章 「逆境」の中の愉しみ
  第8章 「書く」という愉しみ
  第9章 「読む」という愉しみ
 第10章 「老い」の愉しみ


 高橋氏はたんねんに作品をよむ。彼のあげた“名文”を 再読しながら、「あ、そんな文章があったな」と思い出す。その文章を 上の枠内の 愉しみに分類してある。

 高橋氏の藤沢周平論には、「負の人生」、「憂屈の人生」とかいうキーワードがちりばめられていた。「ふ〜ん、しんどいのお。いうことはわからんでもないが、なんかなあ」と腰をひいて読んでいた。

 が、本書では「愉しみ」がキーワードになっている。読者としてはほっとするなあ(笑)

【担当編集者からのひと言】 ネットから

 藤沢周平の眼には、毎日がこんなにも豊かに見えるのか---

 読後、そう思って周りを見渡してみると、通勤電車から見える景色にも四季の変化が、ランチで食べる定食にも深い味わいが、電話で話す両親との会話にも静かなあたたかさが、ほんのりと感じられました。

 本書の中で私が一番気に入っているセリフは、
「話はこのぐらいにして蟹を喰おうじゃないか」(『三屋清左衛門残日録』) 何だか「幸せっていうのはきっとどこにでもあるんだなぁ」という気持ちになります。


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009.2記

NHK 衛星放送「わたしの藤沢周平」をもとに単行本化

NHK『わたしの藤沢周平』制作班編『わたしの藤沢周平』

 (遠藤 崇寿 遠藤 展子監修)(2009.1 宝島社 1470円) 

 07.1月から毎週一回 NHK衛星放送の番組「わたしの藤沢周平」を書籍化したもの。この番組では、多彩な有名人が藤沢作品を語っていました。佐高信、城山三郎といったいかにも語るにふさわしいという印象の人物から、江夏豊、佐藤江梨子といった肌合いの異なる人まで、スポーツ、役者、法律家など、34人が並んでいます。 

【おもな著者と作品名】

武士道編

蝉しぐれ----江夏豊 最高の色気、友情、剣。強烈な作品
風の果て----佐高信 青春小説であると同時に、晩年小説でもある。
    ----涌井雅之 これぞ東北の原風景。
用心棒日月抄----黒土三男 人間くさい痛快活劇 ・・・ほか

歴史小説編

漆の実のみのる国----沢松奈生子 励まされ、前向きな気持ちになれる上杉鷹山の生き方
義民が駆ける----佐藤忠男 農民が主役として描かれた非常に希な物語です
一茶----田中優子 一茶の日記が隠していたリアルな一茶が描かれている
  ----織本順吉 藤沢さんの死生観を感じました

市井人情編

約束----常盤新平 藤沢作品を読むにあたっての入門書のような作品
氷雨降る----山本容子 五十を越えて、日常に不満はないけれど、何か忘れ物をしてきた気がしている男
思い違い----ホリ・ヒロシ 人間というのは捨てたものではない!最後の三行で、ふわっと温かくなる思いに ・・・ほか



【帯 遠藤典子 藤沢周平・長女】 

 「もう一度、父の作品を読み返したくなりました。
 この本で“あなただけの藤沢周平”が見つかるかもしれません。


 作家でないさまざまな分野のひとたちの予想外の読み方も興味ふかい。 こういう本で 作品の読み方・感じ方を教えられることも多い。

 藤沢作品を読み出したときに、影響を受けたのは、故・中野孝次さん(作家・評論家)と向井敏さん(書評家)だ。テレビ番組で中野孝次さんが『蝉しぐれ』や『三屋清左衛門残日録』の一文をうれしそうに暗唱していたのに驚いたりした。

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テレビ番組で毎回気になったことがある。冒頭部分で、中学生くらいの少年がもっている原稿用紙が 
風ではらはらと飛んでいく映像だ。あれ なんだろう? 
藤沢さんの原稿用紙が飛んでいっているのかな(笑) ちょっとなあ。

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