第3版(1997.9)
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『秘太刀馬の骨』を読んでみると、ゲストの言ったように時代小説を読んだことのない私は侍の名前がややこしく「ええっとこれ誰だっけ」と筋を追うのがせいいっぱいでした。
でも、子どもを急死させて心の病になった主人公の妻の描写は印象に残りました。
そして、ラストの妻のたちなおりのシーンはぐっときました。剣の小説としてではなく、一種の“家庭小説”として楽しみました。
子どもをだしに商人を脅迫している浪人者を征伐した奥さまの「ずいぶん手間どりました。さあ、はやく帰って旦那さまのお夜食を支度せぬと」とのセリフを書きたいために、藤沢さんはこの小説を書いたのではないだろうかという人すらいます。
私は、最後の文章「旦那さま、奥さまはもうご病人ではござりませぬ。お屋敷に入れば、すぐにそのことがおわかりになりましょう」でつんときました。
本屋では自分の知らない・読んだことのない作家の多いことに愕然とします。何かのきっかけで新しい作家を読むときは、原則として (という程でもないが) 3冊読みます。
そして、「これから全部読むからね」とか「またお目にかかるかもね」とか「さよならね」とか選別をします。(3冊は原則で さよなら作家はたいがい1冊ですが)
3冊とは、だれかに教えられてなどの「きっかけとなった本」、「作家が評価されるようになった本(受賞作など)」、「題名のいい本」です。
目黒の「女性の描き方がいい」との言葉につられて、「ではもう少し藤沢を読んでみるか」と本屋に。時代小説のコーナーに近寄ったことのない私は藤沢作品の多さに驚きました。
どれが評価の高い作品か,人気のあるのはどれか わかりません。
で、題名のしゃれている『三屋清左衛門残日録』・『麦屋町昼下がり』(文春文庫版)を買いました。
この二作が読み終わらないうちに、藤沢本を求めに本屋に走りました。
そして、今、引多網家庭頁も「残日録」です。