蟹座のデスマスクと言やぁ、積尺気に自由に出入りし、魂を冥界へと誘う、ある意味神も同然の男。
この世とあの世を股にかけて大活躍する、スーパー最強黄金聖闘士。
そのデスマスク様が、だ。
チンケな肝試しなんぞやらされて、しかもまんまと・・・・・、クッ・・・・!
今思い出しても屈辱だぜ・・・・・。
○月×日 PM20:00
「じゃあ次は、肝試しをしまーす!」
風呂の後、が嬉々として発表した次なる予定は、肝試しだった。
たとえマジもんの亡者を出してこられたって屁でもねぇのに、肝試しだと?俺様を誰だと思ってんだ?
と、俺は思わず鼻で笑っちまった。
「肝試しって、あの墓地や何かを意味無く徘徊して騒ぐ遊びの事だろう?」
「で、出もしない幽霊の影に怯えてギャーギャー騒ぐんだよな。」
「フン、下らぬ。」
アルデバランとミロは顔を見合わせて苦笑いしていたし、シャカに至っては心底退屈そうに鼻を鳴らしていた。
こいつらだけじゃなく、他の連中も皆、概ね似たような反応を返していた。
まあ当然だよな。
この蟹座のデスマスク様及びその他の黄金連中が、子供騙しの肝試しなんぞで盛り上がれるわきゃねーだろっつーの。
しかしは俺達の反応を全く気にも留めず、ニコニコと説明を始めた。
「コースはこの森ね。ここからまっすぐ行った所にある大きな岩をぐるっと回って戻って来るだけの、
簡単お散歩コースです♪」
そこでは、突然声を低くして、『ただし・・・・』と付け加えた。
「これはあくまでも肝試しなので、色々と怖いものが待ち受けているかと思います。が、一度も怖がらずにゴールして下さい。」
「はぁ?」
あんまりマジに言うもんだから何かと思いきや、『怖いもの』だと。
これで馬鹿にするなって方が無理な話だった。
「ヘッ、くっだらねぇ。怖いものって、どうせアレだろ?ハリボテの化けモンとか、赤いペンキの血のりとかだろ?」
「う゛っ・・・・・・」
俺が指摘すると、は決まりが悪そうに黙り込んだ。
「ほらみろ、図星じゃねぇか。それでどうやって怖がれってんだ?ナメてんじゃねぇぞっつーのコラ。」
「ちょ、ちょっとやめてよ・・・・!」
笑いながらの頬をプニプニつついていると、はムッとして俺の手を払い除けた。
「馬鹿にするのは、一度も怖がらずにゴール出来てからにしてくれる?」
「ほ〜お、このオカルトの貴公子・蟹座のデスマスク様に向かって、随分な自信じゃねぇか。面白ぇ、この勝負、受けて立ってやるよ。」
俺はに詰め寄り、その顎を持ち上げて挑発した。
「その代わり、俺様が勝ったら、素直に負けを認めて『参りましたぁデスマスクさまぁ〜!』って謝れよ?」
「良いわよ。」
ほほう、結構ノリが良いじゃねぇか。さすが幹事、盛り上げ所をちゃんと弁えてるってか。
だったら俺も協力して、とことん盛り上げてやろうじゃねぇの、という事で、俺は更に要求する事にした。
「じゃあ俺様が勝ったら、谷間チラ見せ&上目使いで『参りましたぁデスマスクさまぁ〜!』ってやってるとこ激写するぜ?」
「良いわよ。」
「おい・・・・・!」
ほほほーう、弁えてるじゃねぇの、と、俺は内心で感心していた。
アイオリアは目ん玉剥いてたが、俺らのこのやりとりを聞いて、周りの連中のテンションが上がって来たからな。
「そういう事なら、俄然やる気が出て来たな!俺もその勝負乗った!というか、全員参加で良いだろ!
俺達を誰一人として怖がらせる事が出来なければ、谷間チラ見せ&上目使いで『参りましたぁ!』&記念撮影という事で!」
「には気の毒だが、負けは確実だな。しかし勝負は勝負、負けた暁には容赦なく谷間を出して貰うからな?」
「私はあまりあからさまなのは好かないんだが。何か良いポーズを考えておこう。」
「ホッホ。まあが泣かん程度に、程々にの。」
ミロとカノンは俺と一緒になってノリノリになっていたし、アフロディーテはカノンを窘めながらも割と乗り気だったし、老師もニコニコ笑っていた。
「、そんなに安請け合いして本当に大丈夫なのですか?」
「事実だからはっきり言わせて貰うが、肝試しで怖がる者はこの中には誰も居ないぞ。」
ムウは心配そうに、カミュは一見淡々と、を説得していた。
こいつら二人は、の負けが目に見えているので、何とか思い留まらせたいみたいだった。
が、は奴等の説得には応じなかった。
「大丈夫、心配しないで。それより、もし誰か一人でも怖がったら、同じ事やって貰うからね?」
「ほっほーう、言うじゃねぇか。良いぜ、上等だ。やってやろうじゃねぇの。」
俺は即座にOKした。
こんなチンケなキャンプしてんだ、せめてこれ位のバカ騒ぎしなきゃ盛り上がらねーだろ?
まあ、これも概ね皆が思っていた事のようで、話は割とすんなりまとまった。
「話は決まったか?では早速始めよう。」
それまで事態を黙って見守っていたサガが鶴の一声を発し、いよいよ肝試しが始まった。
俺達は全員でぞろぞろとコースを回り始めた。
別に一人ずつでも構わなかったんだが、この後もまだまだ予定があるから時間短縮したいという事で、皆ひと纏めにされたんだ。
全員で回るとなったら、最早これが肝試しである事すら忘れちまう。
普通に世間話や次の任務の話なんぞをしながらぞろぞろ歩いていると、後ろからが追いかけてきた。
「おう、何だよ?」
「御目付役。皆が本当に怖がらないかどうか、チェックさせて貰いますからよろしく。」
「へっ。好きにすりゃあ良いけどよ、御目付役がビビってテンパるんじゃねぇぞ。」
このアホらしい肝試しが、アホらしいなりに肝試しっぽくなってきたのは、がパーティーに加わってすぐだった。
「きゃあっ、おばけーっ!」
突如、がある方向を指さして悲鳴を上げた。
なので、俺達も一応そっちに目を向けたんだが。
「・・・・・もしかして、コレの事か?」
一番近くに居たシュラが摘んで見せたのは、木の枝に引っ掛かって揺れている白いシーツだった。
だが、俺達が呆れるより前に、はまたもや悲鳴を上げた。
「きゃあっ、火の玉!」
「・・・・コレか?」
アイオリアが首を傾げつつ確認したのは、木の枝にぶら下げられた見るからに嘘くせぇ火の玉だった。
そしてまたまた、俺達がツッコむより早く、は叫び声を上げた。
「いやあぁっ、な、生首ぃー!」
「・・・・・・コレの事かね。」
シャカが髪を掴んで持ち上げたのは、切り株の上に安置されていた生首。
ただし、どう見ても安物のラバーマスク。
もうな、ここまできたら笑えたぜ。
このちゃちな仕掛けがどうこうっていうか、の必死っぷりがな。
「おいおい頼むぜ〜!怖がらせる気あるんなら、もうちょっと気の利いたモン用意しろよ〜!」
「今時、銀行強盗でも被らんぞこんなモン。」
俺とカノンは、遠慮なしにせせら笑ってやった。
するとは、決まりの悪そうな顔でふて腐れた。
「な、何よー!これでも一生懸命色々考えて用意したのよ!?」
「ホッホ。その努力は認めるがの。しかし、ちぃとばかし稚拙じゃったかのう?」
「さては御目付役というのも嘘じゃないのか?」
「そうだ、本当はサクラだろう?」
「悲鳴を上げて、効果音係も兼ねているんじゃないか。ハハハ。」
「うっ・・・・・・」
老師に笑われ、カミュやミロやアイオリアにまでネタを暴かれて、は完全に言葉に詰まった。
しかし、全部図星ってどうよ。
もうマジで笑うしかないっつーか、呆れるしかないっつーか。
すると、遂には自爆して、『面白くない』と自ら認めるも同然の言葉を発してしまった。
「そ、そんな事ばっかり言ってたら、本当に面白くなくなるじゃない!皆、もっと素直に楽しんでよ〜!」
「いや、まあ、それはそうなんだがな・・・・・」
シュラの奴が、苦笑しながら困ったように言葉を濁した。
ズバリ言うとに悪いと思っていたみたいだが、しかし、言いたい事ははっきり顔に出ていた。
俺も同じ事を思っていたからな、すぐ分かったぜ。
悪いけど何つーか、一つ一つがいちいち残念だったんだよな。
「何もかもが安っぽすぎるんだ。ほら、言ってるそばから早速。バレバレの血のり。」
そこへカノンが遠慮なしにズバッとツッコんだ。
指差していたのは、木の幹にベッタリ塗られた赤ペンキ。
確かに安っぽい。大体、匂いで即バレだ。
「ああ、これもですね。あからさまに作り物の腕。」
ムウが拾い上げたのは、雑貨屋の倉庫で埃被ってそうなアホくさいオモチャの腕。
千切れた断面の表現がえらくテキトーで、明らかに安物と分かる。
「偽の骸骨。素直に楽しみたいのは山々なのだが、これはちょっとな・・・・・。」
カミュが掌に載せている真っ白なドクロは、一目でプラスチック製と分かるシロモノだった。
素直にキャアキャア怖がれっつー方が無理だろこりゃ。
連中にビシビシ指摘されてしょげたの肩を、俺はバシバシと叩いた。
「な?分かったか、?俺らを怖がらせたきゃ、もうちっと気の利いたモン持って来・・・」
そこまで言った時、俺はふと誰かの視線を感じて横を向いた。
そしてその瞬間、俺は不覚にも凍りついた。
「うおおっ・・・・!」
藪の中に潜むようにしてこちらを見ていたのは、双子座の黄金聖衣だった。
それまで気配も何もなかったので、まるで気がつかなかった。全く、不覚だったぜ。
だが、それは他の連中も同じだったようで、皆、似たようなリアクションだった。
「あ、今デス『うおおっ』って言ったわよね♪怖かった?怖かった?」
「ばっ、バカ言いやがれ!黄金聖闘士である俺様が、黄金聖衣を怖がるわきゃねーだろ!いきなりだったからちょっと驚いただけだ!」
ニヤニヤしているに力一杯否定しておいてから、俺は双子座の聖衣に近付いた。
「何だ、中身はナシか。」
ヘッドパーツを取ってみると、中は空洞だった。
すると、アフロディーテの奴も近寄って来て、俺が元に戻したヘッドパーツをまた取った。
「確かに空だ。何だ、てっきりサガが入っていて、追いかけてくるのかと思ったが。」
すると、今度はミロがやってきて、アフロディーテが戻したヘッドパーツを(以下同文)。
「本当だ、単なるオブジェみたいだな。ハァ・・・・、どこまでも手抜きか。」
「お前ら、人の聖衣のヘッドパーツを鍋のふたみたいにパカパカやるな。」
カノンは俺達を一睨みしてから、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「しかし、サガの奴め、俺と共用の聖衣を勝手にオモチャにしやがって。」
「まあまあ、許してやれよ。これが精一杯のとっておきのつもりだったんだろ?」
俺はハハハ〜と笑いながら、双子座聖衣のツラをペシペシと叩いた。
その瞬間。
ザンッ!!!!
という音がして、俺は再び凍りついた。
「・・・・・・・」
何が起きたのか、一瞬、本気で分からなかった。
気付いたら俺は腰をかがめていて、目の前で銀髪がヒラヒラと舞い散っていた。
間一髪、咄嗟にかわせたみたいだったが、
何か、もしかして俺、
首狙われた?
っぽい??
「うわぁぁぁっ!!!」
「うおおっ!!!」
と認識すると同時に、他の奴等が叫び声を上げ始めた。
ふと見ると、双子座の聖衣が動き出し、無差別に首を狩ろうと連中を追い回し始めたところだった。
「うおおっ、危ないなオイ!!」
「こっちに来るなーっ!!」
アルデバランとミロは、本気で焦っていた。
いや、こいつ等だけじゃねぇ。皆そうだった。それ位、聖衣の奴はマジで攻めてきていた。
つーかアレはもう、制御不能のレベルだった。
「これ、サガよ!タンマじゃタンマ!聖衣が暴走しとるぞい!」
老師が呼びかけても、サガの奴はシカト決め込んだままだった。
勿論、聖衣の暴走は止まらず、それどころか酷くなる一方だった。
幾ら俺様がジョークの分かる男だからって、これはねーよ。笑えねぇ。
「いい加減にしろよ、このアホ聖衣がっ!!」
口で言って分からねぇなら実力行使に出るしかないと思って、俺は聖衣を迎え撃とうとした。
しかし、聖衣が襲い掛かったのは、俺じゃなかった。
「ギャアアッ・・・・・!」
ザシュッ、という嫌な音と同時にゾッとするような悲鳴を上げたのは、だった。
悲鳴を上げた瞬間、の首は宙を飛び、地面に落ちて転がった。
ほんの一瞬だけ辺りはシン・・・・、と静まり返ったが、その直後。
『ぎゃああああーーーっ!!!』
という、大音量の悲鳴が轟いた。
「くっ、くっ、首がっ・・・・!」
地面に転がったの首を見て、アフロディーテは青ざめていた。
「の首がっ・・・・!」
シュラは明らかにビビッてた。
そして俺は、というと。
「と、とと、ととと、取れちまったあぁぁーーーっ!!」
・・・・・今更ウソ書いてもしゃーねーから本当の事を書くが、俺も完全にテンパッてた。
まあ、皆同じだったが。
「ーーーーっ!!」
「しっかりしろっ、ーーっ!!」
「しっかりも何も即死ですよこれ!!どうするんですかこんな事になって!!」
「どうもこうもどうしようもあるまい・・・・!ええい、サガは何をしているのだ!?」
「そ、そうだ!サガ、サガ!聞こえているのか!返事をしろ!大変な事になっているんだぞ!」
ミロもアイオリアも、ムウにシャカにカミュまで、皆、いつになく取り乱してパニクってた。
だが、パニックはこれだけでは終わらなかった。
むしろここからだった。
「ちきしょう、どうすんだよコレ・・・・・・!」
どえらい事になっちまって、俺はもうどうすりゃ良いのか分からずに、呆然との首を見ていた。
その時、ふとの首が動いたような気がした。
「え・・・・・・・?」
「・・・・・フ・・・・・・、フフ・・・・・・・・」
「なっ・・・・・・!?」
「フフフ・・・・・・・・・」
はじめは目の錯覚かと思ったが、そうじゃなかった。
の首は不気味な笑い声を上げながら、ゆっくりと転がり、とうとう俺の方を向いた。
「ねえ・・・・・・、私、怖い・・・・・?」
「っ・・・・・・・!」
「ねえ・・・・・・・!」
そしての首は、突然、俺を目掛けて飛んで来た。
ここから先は、阿鼻叫喚だったよな。
取り乱したのは俺だけじゃねぇ。
どいつもこいつも、忘れたとは言わせねぇぞ。
「っ・・・ぎええええーーーッ!!!」
俺の腕の中に飛び込んで来た(の首)を、俺は反射的に投げ飛ばした。
「ちょっ・・・・、やめて下さい!私の方に投げないで下さいよ!」
それがムウの所に飛んで行き、受け止めたムウがまたうっかり投げちまって。
「私の所に回すのはやめたまえっ!!」
ソレをまたシャカがどっかに弾き返して、またまた誰かの所に飛んでいって。
と、今思い返せばある意味笑える騒動だったが、この時の俺達は生憎とマジだった。
「フフフ・・・・・。ねえ、私、怖い・・・・・?怖いでしょう・・・・・?」
何しろ(の首)は、気っ色悪い笑みを浮かべてこんな事を呟きながら、俺達の間を飛び交っていたんだ。
マジになっちまったって仕方なかったんだよ。
「ねえ、デス・・・・・・、ねえってば・・・・・・」
「ひぃっ・・・・・・!」
また俺の腕の中に戻ってきた(の首)としっかり&バッチリ目が合って、俺の恐怖はピークに達した。
で、つい言っちまったんだ。
「こ・・怖ぇーよーーっ!!!怖ぇから勘弁してくれーーーっ、頼むからーーーっ!!」
と。
するとその瞬間、の首は跡形もなく掻き消えた。
「・・・・・・・へっ?」
俺は呆然と、辺りを見回した。
よく見ると、の首だけではなく身体も、そしてあのちゃちな仕掛けの数々も消えていた。
「これは一体・・・・・・」
「どういう事じゃ・・・・・?」
アイオリアも老師も、そして他の連中も、皆、俺と同じように呆然と立ち尽くしていた。
まるで狐にでもつままれたような気分だった。
すると不意に、俺達の背後でサガとの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「ははは、見事大成功だったな。」
「皆バッチリ怖がったわね!」
サガは勿論、もちゃんといつものだった。
一体、何が何だかさっぱり分かんねぇ。
俺達は満足そうに笑っている二人を、ただ呆然と見ていた。
「どうだ?私達が考えた演出は。なかなかスリリングだっただろう?」
「普通のやり方じゃ絶対怖がらないから、サガに幻影を作り出して貰ったのよ♪」
『げ・・・・・、幻影・・・・・・??』
ポカンとする俺達に向かって、アホ幹事二人は得意げに解説を始めた。
「そうだ。コースの空間を迷宮化し、その中に様々な幻影を張り巡らせたのだ。」
「見るからにリアルなのじゃ騙されないだろうから、わざとちゃちなオモチャみたいなのにしたのよ。
それから、皆について歩いていた『私』も、勿論幻影ね。」
「そう。そうして十分にお前達を油断させておいてから、さり気なく忍ばせておいた私の聖衣を
遠隔操作で操り、お前達に襲い掛かると見せかけて幻影のの首を刎ねる。
そしてそのの首が・・・・・、フフフ。手前味噌のようだが、実に良い演出だったと思う。」
「練りに練っただけあって、本当、見事に引っ掛かってくれたわね!良かったね、サガ!」
「ああ。腕によりをかけて編み出した幻影だ。楽しんで貰えたようで何より。」
つまり、何か?
肝試しが始まった時から、俺達はまんまとサガの術中にどっぷりはまり込み?
全部幻影とも知らないで、良いように踊らされてやったって訳か?
「しかも、全部幻影だから、お金一切掛かってないもんねー?」
「うむ。どの面から見ても申し分ない、実に良い催しになった。」
そう考えると、もうな、何ていうかな。
この自慢げに小鼻を膨らませているアホ幹事共に、言いようのない怒りが湧いてきてな。
『何が良い演出だ、趣味悪ぃんだよ!』と頭の一発でも叩いてやろうと思ったんだ。
だが。
「という事で、皆、早速罰ゲームね♪谷間チラ見せ&上目使いで『参りましたぁ幹事さまぁ〜!』ってやってくれるんでしょ?」
「そう。そしてその様を記念撮影するんだったな?確か。」
ニヤニヤ笑うアホ幹事二人に、先手を打たれちまった。
「ま・・・・待ってくれ!私はそんな事をやるなどとは一言も・・・・・!」
「私も言っていませんよ!むしろ私は渋った位なんですから!」
「そうだ!あれはミロが勝手に全員参加だと言い出しただけで・・・・!」
「ちょっ・・・、俺だって別に言い出しっぺって訳じゃないぞ!そもそもはデスマスクの奴が・・・・・!」
アフロディーテ、ムウ、シュラ、そしてミロが、口々にグズグズ言い出したが、サガとはそれを全て涼しい顔で聞き流した。
「あら。私、最初に言ったわよね?誰か一人でも怖がったら、この罰ゲームやって貰うわよ、って。」
「その通り。しかも、この案を持ちかけてきたのはお前達の方からだ。忘れたか?」
こいつら、ハナから負ける気してなかったって事か。そんだけ自信があったってか。
しかし、事実、俺らはまんまと引っ掛かった訳だからな。
全員、ぐうの音も出なかった。
そして、やり場のない気持ちを刺すような視線に託し、全員、俺一人に向けてきやがった。
どの目もこう語っていたぜ。
『お前のせいで・・・・・!』ってな。
「・・・ちっっきしょー!やりゃ良いんだろやりゃあ!!野郎共、やるぞオラァ!!」
俺はその視線に気付かない振りをして、連中を煽った。
連中にタコ殴りにされるかと思ったが、奴等も腹括ったのか、やけくそのようにノってきた。
「ううむ・・・・・、仕方ない、これも思い出と割り切ってやってやろうじゃないか!」
「あははっ、さすがアルデバラン!男気が溢れてるわね〜!」
「で、どのようにすれば良いのかの?脱げば良いのか?」
「あ、それは別に童虎の好きなようにしてくれてOKよ。」
「おい、そこのクソバカ幹事(男)。谷間チラ見せったって、男の胸板でどうしろというのだ。
チラ見せ出来るものなんて、乳首ぐらいしかないぞ。」
「大胸筋でも寄せて上げておけば良かろう。乳首の露出は好きにしろ。
クソバカ弟の乳首なんぞ、私は別に見たくもないが。」
そうして俺達はやけくそのように幹事二人の前に並び、大声で『参りましたぁ幹事さまぁ〜!』とやってやった。
そして、ニコニコと満面の笑みを浮かべる二人を中心に据え、記念撮影もした。
その写真はまだ一応保管してあるみたいだが、その内こっそり黄泉比良坂でも捨てておこうと思う。
記述者:蟹座デスマスク
〜読後コメント〜
・えーっ!?捨てるなんて勿体ない!折角良い記念写真が撮れたのに!()
・↑いえ、私からも頼みます。捨てて下さい。(ムウ)
・いやぁ、すっかりしてやられたぞ!子供じみた遊びだからと、完全に油断していた!(アルデバラン)
・↑フフ、だろうと思ったのだ。まんまと引っ掛かってくれて私とも満足だった。(サガ)
・↑お前の演出は趣味が悪い。をネタにするのはある意味反則だろう。(カノン)
・↑俺もそう思う。真剣に騙されてしまったぞ・・・・。まあ、ネタで良かったが。(アイオリア)
・この私とした事が、不覚にも取り乱してしまうとは、私も屈辱だ・・・・・。(シャカ)
・ホッホ、まあなかなかに刺激的じゃったのう。(童虎)
・良いようにしてやられたのは悔しいが、偶にはああいう悪ノリも良かろう。(ミロ)
・↑いや、悪ノリは何だかんだでしょっちゅうだろう?(シュラ)
・しかし、寄せて上げて谷間を作れと言っているのに、何を勘違いしたか、
ボディビルダーみたいになっていた奴もちらほら居たな。(カミュ)
・↑ああ、居た居た。見るからにムサくて最悪だった。
どうせならせめて美しくやって貰いたかったのに。(アフロディーテ)