What a Wonderful Destiny 21




「バスに乗るのは久しぶりだな。」
「面倒だな。テレポーテーションなら一瞬で着くものを。」
「だって、あれ苦手なんだもん・・・・。」

ミロ・カノン・の3人は、バスの後部座席を陣取って寛いでいた。
昨夜の約束通り、町に買い物に行く為である。
バスを利用したのは、のたっての希望であった。

「カノン、そう嫌がるな。一刻を急ぐものでもなし、のんびりバスに揺られていくのも一興だ。」
「別に嫌とは言ってない。」

他愛もない会話を楽しみながら、3人を乗せたバスは長閑な片田舎を走っていく。
そして30〜40分程経った頃、バスは目的の町へと到着した。




「着いたぞ。」
「うわぁ、結構大きな町ね!」
「だろう?ロドリオ村とはわけが違うぞ。ここなら色々手に入るからな。」

顔を輝かせるに、ミロとカノンは満足そうな笑みを浮かべた。
そして、そわそわと町を見渡すを促して歩き出した。



「何を買うつもりだ?」
「自分のものは大体持ってきてるから特に必要ないんだけど、食器とスリッパを買い足すわ。誰か来た時の為に。」
「賢明な判断だが、あまり客用の環境を整えすぎない方がいい。遊びに来るどころか、気をつけないと住み着きかねんぞ。
「言えてるな。特にデスマスクあたりは要注意だ。」
「言っておくがお前もその中に入ってるぞ、ミロ。」
「プッ・・・!あっははは!」

二人のやり取りを聞いて、が突然笑い出す。

「なんだ?何か面白い事でも言ったか?」
「ううん、なんとなく。この二日間で思ったんだけど、なんか皆仲が良いのね。兄弟みたい。」

にこにこと笑うとは対照的に、ミロとカノンは嫌そうに顔を見合わせた。

「冗談じゃない。こんな始末におえん兄弟など要らん。」
「同感だ。兄弟ならサガ一人で十分すぎるほど間に合っている。
「そう?でも皆を見てると、なんか育ったところを思い出すわ。人数多くて楽しくて。」
「育ったところ?ああ、孤児院か。」
「まあ似たようなもんかもしれんな、聖域も。さあ行くぞ。」

太陽の光がさんさんと降り注ぐ大通りを歩き、3人が最初に入ったのはインテリアショップであった。




、これはどうだ?」
「あっ・・・、気持ち良い・・・・」
「だろう?ほら、こうしてみろ。もっと凄いぞ・・・」
「ああ・・・・、駄目、溶けそう・・・・!」

何をやらかしているんだ!?

スリッパコーナーを物色していたカノンは、クッション売り場から聞こえてくる連れの妙な声に驚いてすっ飛んで来た。
そして、手当たり次第にクッションを揉み倒し頬擦りしているミロとを見て、一気に脱力した。

「あ、カノン。ねえこれ触ってみて。すっごく気持ち良いから。」
「思わず眠くなるぞ。」
・・・・・お前ら、何事かと思えばそんな下らん事を・・・・!

こめかみに血管を浮かび上がらせるカノンをよそに、ミロとは楽しそうに品定めしている。

「買うのならとっとと選べ!全く、紛らわしい・・・!
「紛らわしいって、何だと思ったの?」
「・・・・・いいからさっさと選べ。」

素で気付いていないに対してますます脱力するカノンに、ミロはニヤニヤと笑いながら母国語であるギリシャ語で語りかけた。
それに対して、カノンもギリシャ語で応対する。

『カノン、ナニと間違えてたか察しはつくが、こんな所でそんな事をするわけがなかろう。』
・・・・貴様、後で覚えていろ。
「え?何?何て言ったの?」
「何でもない。さあ、どれにする?」

ミロは、自分達二人の会話がさっぱり分からず首を傾げているを上手く誤魔化した。
まんまと誘導されたは、再びクッションに向き直って真剣に選び出した。
そして散々悩んだ末、特に手触りの気に入った2つを購入することにした。

「スリッパはどれにする?」
「2〜3足じゃやっぱり足りないわよね。結構数が要りそう。」
「ならこれでどうだ?」

そう言ってカノンが指を指したのは、ワゴンにどっさり詰め込まれているセール品の山であった。
安いし色数も豊富で、確かに沢山買い揃える為にはもってこいの品だ。

「そうね。どれにしようかな?」
「どれでもいいだろう。俺の知る限り、スリッパに拘る奴は聖域にはおらん。」
「そうだな。履ければ良いという感じだからな。」

二人の勧め(?)もあって、はあまり悩まずにシンプルなデザインのものをカートに放り込んだ。
だが全部同じでは味気ないと思い、せめて色ぐらいはと、ありったけの種類を制覇しておいた。
重さはさほどないがかさばる荷物を抱えて、インテリアショップでの買い物は速やかに終了した。



「さて、次は何だ?食器か?」
「そうね。あれ?カノンは??」
「その辺にいないか?全く、いい年して迷子か?面倒な。」

荷物を抱えたミロとは、カノンの姿を探して来た道を引き返した。
探し人は案外すぐに見つかった。

「おい、何をしている。」
「ん?ああ。ちょっとな。」
「何見てるの?サングラス?」
「お、色々あるな。俺も見るとしよう。」

カノンとミロは手当たり次第にサングラスを手に取り、次々に試着している。

「どうだ?」
「うん、似合ってるよ!」
「お前も一つどうだ?ギリシャは日差しがきついからな。夏は特に必需品だぞ。」
「そうなんだ。じゃあ私も見ようかな?」

すっかり脱線した3人は、当初の目的外の買い物に夢中になった。
そして、色々試してみて一番気に入ったものをそれぞれ一つずつ購入することになった。
カノンはオーソドックスな感じの黒、ミロはシャープな形の青、は丸みを帯びた小さめの薄い茶色を選んだ。
勿論UVカットはどれもバッチリである。

買うものも決まっていざ会計という時、カノンがの手からサングラスをひったくった。
そしてそのまま、ごく当然のように2つ分の会計を済ませてしまった。
カノンの横であたふたする

ちょっ、何で・・・!
「別に。大したことでもあるまい。何をそんなにうろたえている。」
「何って・・・・、だってそんな事・・・・。理由もないのに悪いわ!」
「これぐらいでいちいち理由など不要だろう。ほら。」

カノンは含み笑いを浮かべながら、に会計済みのサングラスを返した。
は恐縮しつつも、礼を言ってそれを受け取った。
ところが、そんな二人を見て面白くないのはミロである。

「出し抜くとは卑怯な・・・」
「だから言っただろう。『後で覚えておけ』とな。」
「くっ・・・!」

してやったりと言わんがばかりのカノンに、ミロは忌々しそうに歯軋りした。
そして悔し紛れにの手を取ると、強引に引っ張って行ってしまう。

「さあ行こう!食器だ食器。」
「あっ!ちょっと・・・!もうちょっとゆっくり歩いて・・・!」

ミロに引き摺られるようにして歩くの後姿を面白そうに見ながら、カノンは悠々と二人の後をついて行った。




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後書き

これまた『続く』ですか。
もう、何でこの手は言うことを聞かないんですかね(笑)?
頭ではもっと短くまとめようと思っているのに、書いていくうちに長くなるという(笑)。
分けずに一つのファイルにまとめてしまえばいいんでしょうけど、何故か
自分の中に基準ファイルサイズがいつのまにか出来ていて、それに従ってしまうのです(笑)。
ここは一つ、管理人は融通のきかん奴だと諦めて頂いてですね、
ごゆるりと楽しんで頂ければと思います。(←開き直り 笑)