What a Wonderful Destiny 11




「失礼いたします・・・・」

恐る恐る中へ踏み込んだを待ち受けていたものは、ずらりと並んだ金の鎧・鎧・鎧。
その全員の視線を一身に浴び、照れと気まずさに思わず俯いてしまう。

さん。遠いところをご苦労様です。」

黄金聖闘士達の奥から沙織が声を掛けた。

「沙織ちゃ・・・っと、ア、アテナ、只今到着しました。」
「クスッ、そんなに畏まらないで下さい。どうか普段通りで。さあ、こちらへ。」
「あ、はい・・・」

沙織に促されるまま、は左右向かい合わせに並ぶ黄金聖闘士達の間を歩き始めた。
皆が思い思いの表情で自分を見つめているから、気恥ずかしいことこの上ない。
ニヤニヤと笑いかけてくるカノンとデスマスクに心持ち赤い顔を顰めてみせながら、は無言のまま沙織の元まで歩み寄った。
沙織はを自分の横に立たせて、黄金聖闘士達に紹介した。

「皆さん、この方がさんです。よろしくお願いしますね。」
です、この度こちらでお世話になることになりました。宜しくお願いいたします。」

沙織の紹介が済んだ後、は手短に自己紹介をした。
のお辞儀に合わせて軽く頭を下げる者、無表情の者、ニヤつく者、様々な反応を返す屈強な男共に向かって、沙織の鶴の一声が発せられた。


「さあ皆さん、さんに自己紹介をして下さい。」
「では私から参ります。」

沙織の命にいち早く反応したムウが、一歩前へ出ての方を向いた。

「白羊宮を守護しております牡羊座の黄金聖闘士、ムウと申します。以後よろしく。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」

ふんわりと柔らかく微笑まれ、の緊張が少し解れた。
眉毛はかなり個性的だが、美しい顔立ちの優しそうな人だ。
冷たくあしらわれたらどうしようと密かに心配していたは、ムウの柔和な微笑みで気持ちが随分と軽くなった。

「次は俺だな。牡牛座の黄金聖闘士アルデバランだ。金牛宮を守護している。歓迎するぞ。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

退いたムウの次に前に出たアルデバランは、豪快な笑みを浮かべて友好の情を表した。
恐ろしく大きな人だ。一体何センチあるんだろう?
が呆気にとられてアルデバランを見ていると、次の者が前へ出た。

「俺の名は覚えているだろう?」
「はい、ええと、カノンさん、でしたよね?」
「うむ。後で双児宮を案内してやる。」

が自分の名を覚えていた事に気を良くしたのか、カノンは笑みを浮かべてを誘った。
それを遮るように、今度はデスマスクが出てくる。

「早速口説くなよ愚弟。オラ邪魔だ。俺の番だっつーの。」
「分かった分かった。拗ねるな蟹。」

カノンが引き下がった後、デスマスクはニヤニヤと笑いを浮かべてを見た。

「buongiorno、signorina!」
「う、こんにちは・・・」
「そうしかめっ面すんなよ。で?勿論俺の事も覚えてるよな?」

覚えてるも何も、忘れるもんか。

そう言いたいのをぐっと堪えて、は努めて冷静に返答した。

「ええ、蟹座のデスマスクさん、ですよね?」
「よーしよしちゃんと覚えてたな。ちなみに俺ん家は巨蟹宮だ。いつでも来いや。」

意味深な笑みを浮かべてデスマスクが引き下がった後、以上に緊張してガチガチになったアイオリアが前に出た。

し、獅子座の・・・ゴホン!獅子座の黄金聖闘士アイオリアだ、獅子宮を守護している。」

裏返った声を必死で直して早口気味に自己紹介をするアイオリア。
何故か自分以上に緊張している彼の様子には思わず笑いがこみ上げそうになったが、吹き出しては悪いと必死で堪える。

「これからよろしくお願いします。」
「ああ、こちらこそ・・・!」

赤い顔でアイオリアが下がった後、尊大な顔付きのシャカが一歩前へ出た。

「処女宮を守護している乙女座の黄金聖闘士、シャカだ。」
「はじめまして、よろしくお願いします。」
「うむ。しっかり頑張りたまえ。」
「はい。」

必要な事を言い終えるとさっさと退いたシャカの次に出てきたのは、
天秤座の黄金聖闘士・童虎であった。

「天秤座の黄金聖闘士、童虎じゃ。よう来たの。」
「あ、はい・・・、よろしくお願いします。」

見た目と違う年寄りじみた口調に呆気にとられる
しかし童虎は全く気にせず、にこにこと温かい笑顔を向ける。

「本来は天秤宮を守護せなならんのじゃが、儂にはここより五老峰の水が合っとるでな。大抵はそっちにおるか女神のお供でここにはあまりおらん。じゃがよろしゅう頼むぞ。」
「五老峰?それじゃああなたが紫龍君の・・・」
「なんじゃ、お前さん紫龍を知っとるのか?」
「はい。以前星矢から紫龍君達を紹介されまして。」
「そうか、紫龍が言うておったのはお前さんの事じゃったか。いかにも、儂は紫龍の師じゃ。あやつが世話になっとるの。」
「いえ、こちらこそ。」

頭を下げ合う二人に、ミロが焦れたように口を挟んだ。

「老師!俺の番ですよ!!」
「ホッホ、分かっておる。そう慌てるな。」

そわそわと落ち着きのないミロを宥めて童虎が下がった後、
待ちきれないといった様子でミロが進み出る。

「俺はミロ、天蠍宮を守護する蠍座の黄金聖闘士だ!よろしくな、!!」
「こちらこそよろしくお願いします。」

ミロの人懐っこい笑顔につられて、思わずも満面の笑みになる。
握手を求めて差し出された手を握ると、ミロがぎゅっと握り返してくる。
そのまま豪快にぶんぶんと手を振るミロを、いきなり何者かが引き剥がした。

「ミロ、後がつかえてるんだ。その辺にしとけ。」
「ああ、悪ぃ悪ぃ。」

退いたミロと入れ替わりに、その人物が前へ出る。

「磨羯宮を守護している山羊座の黄金聖闘士、シュラだ。よろしく頼む。」
「あ、はい。こちらこそ宜しくお願いします。」

鋭い三白眼でニヤリと笑いかけられ、の笑顔が少々強張った。
その笑顔に悪意は見当たらないけれど、ちょっと強面な感じについつい怯んでしまう。
そして彼が退くと同時に前に歩み出たのは、無表情な赤毛の男性だった。

「私の名はカミュ。宝瓶宮を守護する水瓶座の黄金聖闘士だ。よろしく。」
「こちらこそ宜しくお願いします。あの、もしかしてあなたは・・・」
「私は氷河の師だ。貴女の事は氷河から常々伺っていた。」
「やっぱりそうでしたか。私もあなたの事は氷河君から伺っていました。」
「氷河が大変世話になっている。これからも是非仲良くしてやって欲しい。」
「ええそれは勿論。私こそ宜しくお願いします。」
「氷河がいつも楽しそうに貴女の事を語っている。もし姉がいたらこんな感じかと・・・」
青銅のヒヨコの話は後でゆっくりしたまえ。

保護者モード全開のカミュを半ば強制的に退かせて進み出たのは美の戦士・アフロディーテであった。

「さて、初めましてミス。私は双魚宮の守護者、魚座の黄金聖闘士アフロディーテだ。お会いできて光栄だよ。」
艶然と微笑み、の手をとって口付けるアフロディーテ。
恐ろしい程違和感のない仕草に一瞬呆気にとられていただったが、
その直後一気に顔が紅潮する。

「あっ、あのっ、宜しくお願いします・・・!」

照れる余り反射的に引っ込めようとするの手をやんわりと解放してやり、アフロディーテはとどめと言わんばかりに極上の笑顔を贈った。
対女性用のとっておきの笑顔に、周りの男共はジト目で彼を睨みつけ、当のはひたすら何度も頭を下げている。
その滑稽な状態が治まった後、最後にの前に出たのは。

「遠路はるばるよく来た。私はサガ、双子座の黄金聖闘士にして聖域の現教皇だ。慣れぬ土地で大変だろうが、一つよろしく頼む。」
「は、はい!未熟者ですがこちらこそ宜しくお願いいたします!」

うわ、そっくり。

は思わず口を滑らしそうになったが、それをぐっと堪えて深々とお辞儀をした。
何と言っても相手は教皇。つまりは自分の上司なのだ。
最もショッパナからしくじってはいけない相手である。

「執務開始は後日にする。まずは旅の疲れをゆっくり癒すが良い。荷解きもせねばならんだろうしな。」
「はい、ありがとうございます。」

先程の沙織の説得が功を奏したのか、はたまたようやく自分自身で納得がいったのか、サガは割合にこやかにに接していた。
一同の者が内心ホッと溜息をつく。
かくして、全員の自己紹介は滞りなく終了した。




さん、本当によく来てくれました。私達は貴女を歓迎いたします。どうかこの聖域をよろしくお願いしますね。」
「そんな、こちらこそ宜しくお願いします!」

改めて深々と頭を下げるに、沙織が言い難そうに口を開いた。

「それで・・・、実は私、早速さんに謝らなければならないことがあるのです。」




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後書き

まずは自己紹介ですね。
本当に軽くになってしまいましたが。
さてさて、いきなりトラブル発生の予感です。
何てったって聖域ですからね。(←意味不明)