What a Wonderful Destiny 6




『その声は・・・・女神!?』
「げ、やべ。」

突然脳内に響いた沙織の声に、カノンは手を止め、デスマスクはバツが悪そうに口籠もってを離した。

『カノン、デスマスク。あなた方は一体何をしているのです。』
『それは・・・・』
『任務ですよ。今取り込み中なんで、邪魔しないで頂けると有り難いんですがね。』
『デスマスク、口を慎め!』
『二人とも、その者を今すぐ私の元へ連れて来なさい。』
『女神!何をなさるおつもりですか!!』
『私の屋敷で待っています。良いですか、今すぐにですよ。』
『女神!お待ち下さい、女神!!』

カノンが呼び止めるのも聞かず、沙織は一方的に会話を切った。

「ちっくしょー、いきなり出て来て勝手なこと言いやがって!」
デスマスクは面倒くさそうにブツブツと不平を漏らす。


何?
何なのよ、この人達!
あ、なんか段々腹が立ってきた・・・・。

一方、いきなり刑の執行を中断されたまま放置されたは、ワケの分からない展開に恐怖を通り越して次第に怒りを感じ始めていた。
そして目に溜まっていた涙を拭うと、二人に詰め寄った。

「ねえ!ちょっと!!」
「あぁん?」
「さっきから一体何なのよ!?結局私はどうなるわけ!!??」
「ああ、ちょっと予定が変わった。」
「え?」
「今からお前を俺らのボスの所へ案内することになった。」
ぼ、ボス!?そんなのいるの!!??」

こんな屈強な男共のボスというからには、さぞかし恐ろしい人物なのだろう。
いや、人かどうかも怪しい。
大体この男達からして、十二分に人間離れしているのだから。

頭の中で恐ろしい『ボスの図』を描いて一人怯えているを、背後から忍び寄ったカノンが抱え上げた。

「ちょっ!何すんのよ!?」
「いいから黙って目を閉じていろ。」
「え?」

その瞬間。
異様な無重力空間に放り込まれ、その衝撃に耐え切れずは再び意識を飛ばした・・・・





「・・・・さん、さん・・・・」
「ん、んん・・・・」

誰かに名を呼ばれ、はゆっくりと目を開いた。

「沙織、ちゃん?」
「良かった、気がついたようですね!」
「あれ、なんで沙織ちゃんが・・・・」
「何でもクソも、このお方が俺らのボスだよ。」
「・・・・え、ええーーーー!!??

寝起き(?)でぼんやりしたに、デスマスクが衝撃の事実を伝えた。
驚きの余り飛び起きる

さん、急に起き上がっては・・・・」
「あっ・・・、クラクラする・・・・」
「大丈夫ですか?」
「うん、平気平気・・・・」

の様子が落ち着いたのを見計らって、沙織が話を始めた。

「それにしても驚きましたわ。この二人が手に掛けようとしている人がさんに似ていたのでもしやと思ったのですが、まさかご本人とは・・・・」
「似ていたって・・・・、もしかして沙織ちゃん、あの場に居たの!?」
「いえ、そういう訳ではないのですが・・・・。とにかく災難でしたね。事情はこの二人から聞いております。」
「この人達、沙織ちゃんの事ボスだって言ってるけど、一体何なの?」
「そうですね、知られてしまった以上、きちんとお話しなければいけないでしょうね。」

そして長い話が始まった。
聖闘士の事、彼らの役割、そして女神としての沙織自身の事。
昨日までの自分なら、作り話だと笑い飛ばしたに違いないだろう。
しかし今は違う。それらが作り話などでないことは、既に身をもって体験済みなのだから。

は真剣な表情で沙織の話に耳を傾けた。



「沙織ちゃんが神様だなんて・・・・」
「驚かれたでしょう。」
「うん、ちょっと、ううん、かなり吃驚してる。そっか、だから私だって分かったんだ・・・」
「ええ。そして彼らが『聖闘士』と呼ばれる人間なのです。」
「星矢君達も同じ、って訳か。」
「はい。」
「私、聖闘士っててっきり格闘家か、軍隊の特殊部隊か何かかと思ってた・・・。全然違ったのね。」
「ええ。聖闘士は歴史の陰で動く者、人々に知られてはならない存在なのです。だからたとえあなたでも、詳しくお話する訳にはいかなかったのです。」
「じゃあ私の口を封じなきゃいけないって言うのも・・・・」
「ええ。本来ならそうしなければならないところなのですが・・・・」

言葉を濁す沙織に、デスマスクとカノンが畳み掛けた。

「女神、たとえお知り合いと言えども、こればかりは見過ごせませんぜ。」
「デスマスクの言う通りです。我が兄サガも同じことを申すでしょう。」


彼らの言うことは尤もだ。万が一世間に広まれば大事になる。
この件に関しては、城戸沙織としてではなく、女神として、的確な判断を下さなければならない。
しかし、危険を承知で記憶を操作したり、まして殺すなど、どうして出来ようか。
自分にとっても、そして密かに思いを寄せる星矢にとっても、は大事な友人であり、姉のような存在なのだから。


皆が不安げに見守る中、沙織は一人考えを巡らせた。
そして一つの案を思いついた。
少々強引かも知れないが、を傷つけることなく、かつ聖域の秘密を守れるたった一つの方法を。




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後書き

ますますMY設定がはびこっています。
強引なのは私の話の運び方やっちゅーねん、という突っ込みを己に入れたくなります。
そしてまだまだご都合主義設定がてんこ盛り出てくる予定ですが、悪しからずご了承下さい(笑)。