What a Wonderful Destiny 4




「気を失ったか・・・。まあある意味幸せか。死ぬ恐怖を味わわなくて済むんだからな。」

ずるずると地面に倒れこみそうになるを抱きかかえ、デスマスクは積尺気への扉を開きかけた。
その時。


『デスマスク!!』
『誰だ?サガか?』

テレパシーで話しかけてきたのは、聖域の現教皇・ジェミニのサガであった。

『そうだ。ターゲットを仕留め損ねたのか!?』
『いや、奴は始末した。』
『では何故二度も積尺気冥界波を放とうとしている?』
『何でもねえよ。ちっとばかし目撃されちまってな。そいつを消すところだ。』
『何だと!!』

サガの声が一段大きくなる。

『んな怒んなよ、すぐ始末すっからよ。』
『バカめ!!だからあれほど言っておいただろうが!!東京は人口が多いから目撃されぬよう細心の注意を払えと!!!』
『あーあーうっせぇよ!!小言は後で聞くからジャマすんな!!』
『ちょっと待て貴様!!その者、一般人であろう!!』
『あぁ、まあそうだろうな。どうみても普通の姉ちゃんだぜ。』
『女!?仮にも正義の女神に仕える聖闘士が、何の罪もない者を、まして女を殺してもいいものか・・・・』
『仕方ねえだろ!生かしておいたらマズいだろが!!他にどうしろってんだよ!!』

苦悩しているらしく、デスマスクの頭にサガの唸り声が響く。

― 亡者の呻きより鬱陶しいぜ。

デスマスクは嫌そうに顔を顰めた。

『ううむ・・・・・、そうだ!!デスマスク、その女まだ殺すな!!』
『んだよ?』
『これからカノンをそっちへ向かわせる。奴の幻朧魔皇拳で記憶を操作してみるのだ!』
『なるほどな。しかしあの技は・・・・』
『分かっている。しかし上手くすれば殺さずとも済むやもしれん。やってみる価値はある。』
『了解。例の場所で待ってる。』
『分かった。』


「とりあえず命拾いしたな。まあ、それが良いか悪いかは分からねえがな・・・・」


デスマスクはまだ気を失ったままのを抱え直して、『例の場所』へとテレポーテーションした。





遠くで汽笛の音が聞こえる。
ここは何処だろう、何だか寒い・・・・

「ん・・・・」

は薄らと目を開けた。
辺りは暗く、高い位置にある窓から月明かりが僅かに差し込んでいる。
どうやら大きな木箱のようなものの上に寝かされているらしく、背中が少し痛い。
そして横たわる自分の体に、白い布が掛けられている。

あれ?
ここどこ?
私何してるの?
確か帰ろうとして道を歩いてたら、変な人がいて、それで・・・・・


ようやく現状を把握したは、勢いよく飛び起きた。

「そうだ!!あの変な奴!!!
起きた早々ご挨拶だなコラ。
きゃーーーーっ!!

横から急に声を掛けられ、驚いたの絶叫が辺り一帯に響き渡る。

っっ!!デケェ声出すんじゃねえよ!
イヤーー!!来ないで!!殺さないで!!
だーかーらー!うるせぇっつってんだよ!!殺さねえから黙れ!!!
「っ!」

自分よりも更に大きな声で怒鳴られ、は口を噤んだ。

― あれ、この人今何て言った?

「あの・・・、殺さない・・・・の?」
「んだよ、殺して欲しいのかよ?」

頭と両手を力一杯横に振る

「起きたならそれ返してもらうぞ。」
「え?」
「それだよ。お前の腹の辺りでくしゃくしゃになってるやつ。俺のマントだよ。」
「あ・・・ごめんなさい・・・・。っふ、ふ・・・・・」
「ふ?」
ふぇっくしょん!!!
「・・・・ちっ。」

デスマスクは、奪いかけていた自分のマントをの肩に掛けてやった。

「・・・・・ありがとう・・・・」

予想外の行動に、は思わず礼を述べてしまう。
予想外なのはデスマスクも同じだったらしい。
礼を言われるとは思っていなかったらしく、意外そうに一瞬肩を竦めた。

「安心しろ、殺しはしねえよ。とりあえずな。」
「・・・・・・とりあえず?ちょっと待って!とりあえずってどういう事!!??

聞き捨てならない言葉を聞き、が再び騒ぎ出す。

「ああうるせぇ、黙って待ってろ。」
そう言ったきり、デスマスクは目を瞑って黙り込んでしまった。



黙って待て?
殺されるのを??

冗談じゃない!!!


当然の如く、は逃げ出そうとした。
だがあっさりと捕まってデスマスクの腕に閉じ込められる。

「おおっと待て待て待て。何処へ行く気だ?」
「離してよ!!!殺されてたまるかってのよ!!」
「大人しくしといた方が身のためだぜ。これ以上暴れたらこの場で死んでもらうぞ。」
「っっ!!」

ダークレッドの瞳に射竦められ、再び強い恐怖心が戻ってくる。

「よーし、いい子だ。」
抵抗を止めて大人しくなったに満足したのか、デスマスクは口の端をつり上げた。



― 駄目だ、やっぱり私殺されるんだ・・・・

逃げることも叶わず、はただデスマスクの腕の中で恐怖に震えるしかなかった。




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後書き

ご覧の通り、デッちゃんのミスはカノンにフォローしてもらうことにしました。
銀河戦争とか、もう散々一般人の目に触れているじゃないかとも思うのですが、
それでもやっぱり一般人に存在を知られるのはマズいという方向で進んでおります(笑)。
幻朧魔皇拳に関して勝手な設定が出てくると思いますが、その辺はどうかお許し下さい(謝)。