What a Wonderful Destiny 3




それはやけに月の輝く夜のことだった。
友人達と食事をした帰り、は少し酔いを醒まそうと遠回りをしていた。
よく来る場所でも、普段と1本違う道を歩くだけで新鮮さが蘇ってくる。
ほろ酔い気分も手伝って、は鼻歌まじりで機嫌よく帰途についていた。



「ふんふ〜ん・・・・、あら、何?ケンカ・・・?」

曲がり角に差し掛かったところでは足を止めた。
男が二人、剣呑な空気を纏って対峙していたからだ。
普通ならそのまま来た道を引き返すところだが、はその場から動けなかった。
なぜなら一方の男の格好が余りにも変わっていたからだ。
金色に光る鎧を纏って歩く男など、見たことがない。
あまりの物珍しさに、の目は二人に釘付けになった。


男達は何語か分からない言葉で喋っている。
どうやら鎧の男の方が優勢のようだ。
鎧の男が詰め寄れば、もう片方の男が後退る。
追い詰められた男は、脂汗を流しながら懐から拳銃を出し、鎧の男に向けた。

「ひっ!!」

は思わず息を呑む。

― 撃たれる!!!

は次に起こるであろう事態を予測して、固く目を瞑った。
しかし聞こえてくるはずの銃声はいつまで経っても聞こえない。
は恐る恐る目を開いてみた。



鎧の男は、平然と笑いを浮かべて男の腕を捻り上げている。
発砲しようとした男は苦痛に顔を歪めて、手にしていた拳銃を取り落とす。

― 何なの、この人達・・・・

驚きと恐怖で竦み上がるの目に、更に信じられない光景が飛び込んで来た。
鎧の男が右手の人差し指を掲げ、何事かを呟いたかと思うと、そのまま二人の姿が消えたのだ。

「何・・・・、何が起こったの・・・・・」

気味悪く澱んだ空気が、名残惜しげに小さく渦巻いて消える。
そして辺りは、まるで最初から誰も居なかったかのように静まり返った。
ただ鈍く光る拳銃が、先程までの光景が夢ではないことを物語っていた。




「に、逃げなきゃ・・・、警察に・・・・、電話・・・・・!」

頭は危険を告げている。
しかし体が言うことをきかない。
震える足はその場に凍りついたまま一歩も踏み出せず、はその場に縫い付けられたように動けなかった。

「見られちまったか。」
「ひっっ!!」

突如背後から声が聞こえ、の恐怖は最高潮に達した。
振り返ると、先程消えた鎧の男がすぐ後ろに立っていた。
は後退って逃げようとしたが、電信柱にぶつかってそのまま寄りかかってしまう。

「み、見てません・・・・、何も・・・・!」

もはや動くことも出来ず、は必死で言い逃れようとした。
しかし恐怖に凍りついた顔では説得力がない。

「見え透いた嘘をつくなよ。顔に書いてあるぜ。見てました、ってな。」
「そんな・・・・・」
「俺としたことが失敗だぜ、見られちまうとはな。」

男はじりじりと距離を詰めてくる。
の背中を、冷たい汗が滝のように流れる。

「あんたにゃ何の恨みもねぇが・・・・、消えてもらうしかねえか。」
「わ、私、誰にも言わないから・・・・・、だから助けて・・・・!!」
「悪ぃな、それは出来ねぇ。」
「お願い・・・!命だけは・・・・!!」
「悪く思うなよ。」

男が更に近付いてきた。
すぐ目の前まで迫って来られて、否が応でも目が合ってしまう。
月光に煌く銀の髪、血のようなダークレッドの瞳、そして金色の光を放つ鎧。
そのどれもがの恐怖を煽り立てる。


男はゆっくりと右手の人差し指を掲げた。

― もう駄目、殺される・・・・!!!

はとうとう観念した。
そして男に震える肩を掴まれた瞬間、死の恐怖に耐え切れず、意識を手放した・・・・・。




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後書き

前回までと全く関係ないかのような話になってしまいました(笑)。
鎧の男とは、言うまでもないですが、デスマスクです。(←好きやな〜)
何で彼を使ったかと言うと、好きというのもあるんですが、彼の技が暗殺に向いてるなと思ったからです。
デッちゃんがターゲットの体ごと連れて積尺気に行き、黄泉比良坂にぽいっと投げたら終了、
ターゲットは行方知れずのまま二度と見つからない、というのが好都合だな、と(笑)。
これがミロとかシュラだと、血まみれの派手な死体が発見されそうですからね(爆)。

じゃあサガ・カノンでもいけるやんけと思った方、仰る通りです(笑)!
しかしサガは教皇職で現在多忙ということにしてありますし、カノンは目撃されるようなヘマはしそうにない。
つまり、

1.管理人の贔屓
2.技が暗殺向け
3.黄金聖闘士の中で比較的ドジりやすそう(←失礼千万)

という3つの理由から、ヒロインと最初に接点を持つ黄金様はデッちゃんに決定いたしました。