「全くもう、何が何だか分かりゃしないじゃないの!はじめから説明しなさい!」
は勢いよくスイカに齧り付くと、星矢をじろりと睨んだ。
驚くべきは、星矢のそのびくついた顔。
いつも勇気リンリンなさしもの星矢も怖い物があったのだと、その場に居た誰もが思った。
「・・・・・こないだ、俺の所にこれが届いたんだ・・・・・・・」
「どれ!?」
「い、いやでも、姉ちゃんは見ない方が良いかも・・・」
「見 せ な さ い 。」
『・・・・・・・・・;』
口調は静かだが、その迫力に圧された一同は、スイカに齧り付いたまま互いに目を見合わせた。
何しろ黄金聖闘士達は皆、の姉貴モードを見るのは初めてなのである。
「おっかねえ姉さんだこって・・・・・・・」
「星矢・・・・・、このサガには決して退かず立ち向かって来たのに・・・・・・」
「あの時の威勢が嘘みたいだな;」
デスマスクが、サガが、ミロが、に恐る恐る写真を渡す星矢を不憫そうに見る。
「この写真が何だって言うのよ・・・・・」
一方、はそんな周囲の事など全く気に留めず、裏を向いていた写真をひっくり返した。
そして。
「ブーーッ!!!!」
と、スイカを盛大に噴き出した。
その被害を被ったのは、の向かいに座っていた童虎である。
普段のならば慌てて彼の元へすっ飛んでいくところだが、流石に今はそれどころではないようだ。
写真をクシャリと握り締めて、青いのか赤いのか分からない色の顔を強張らせている。
「こっこっこれっ・・・・・・・」
「という訳なのじゃ。こやつ等の怒りの原因、分かったじゃろう?」
童虎は顔に飛んだスイカの種と果肉を拭い取りつつ、ほのぼのと言った。
バンッ!!!
「最低だぜお前ら!!男の癖に!!!」
忌々しげに問題の写真をテーブルに叩き付けた星矢が、声も高らかに叫んだ。
「おいアイオリア!!」
「おっ、俺!?」
「姉ちゃんを裸にしてふん縛るのがそんなに楽しいかよ!こんな素敵な笑顔浮かべやがって!!」
「だから誤解だと言っているだろうが!!」
「ふん、どうだかな!怪しいもんだぜ!!」
「ハッ、これだから子供は困る。人の話にろくに耳を傾けず、己の言いたい事だけワアワアと。」
「何だと、アフロディーテ!?」
「私達の言う事が信用出来んのなら、に直接訊いてみるが良い。、このヒヨコ共に言ってやってくれ。私達は潔白だと。」
「本当なのか、姉ちゃん!?」
アフロディーテを筆頭に黄金聖闘士達全員と、星矢を頭とする青銅聖闘士全員から一心に注目を集めたは・・・・・・・・
「・・・・・・・?」
「姉ちゃん?」
「さん?」
「・・・・・・・・・・・・・」
余りの驚きとショックに、すっかり白くなっていた。
「おいコラ!トリップしてんじゃねえぞ!」
「・・・・・はッ!!あっ、あぁ・・・・・、え、何?ごめん、聞いてなかった・・・・。」
「だから、俺達がシロだってこいつらに証言してやってくれっつってんだよ!しっかり聞いとけ!」
デスマスクのこの頼み事は、黄金聖闘士達共通の願いだった。
全員、コクコクと頷いてを見る。
呆然とする余り、つい現実逃避してしまっていたが、勿論とてこんな覚えは皆目無かったので、即座に少年達に向かって断言した。
「私、こんなの知らないわよ!?」
『え゛っ!?!?』
少年達が声を合わせて驚く。
「うっ・・・・・嘘だ!嘘だ!!姉ちゃん、俺を誤魔化そうとしてるんだろう!?本当の事を言ってくれよ!」
「だから本当だってば!!こんな恥ずかしい写真撮った覚えないし、っていうか撮る訳ないでしょ!しかも、それを何であんたの所に送らなきゃいけない訳?」
「そ、そう言われてみれば尤もだ・・・・。さんがこんなふしだらな事を許すとはとても思えん・・・・・」
「何今更気付いたように言ってるのよ、紫龍君;当たり前じゃない。」
「そらみろ。俺達は潔白だ。」
「それを早とちりして殴り込んできやがって。テメェら、この落とし前はキッチリつけて貰うぞ?」
呆れるに便乗して、シュラとデスマスクが少年達をじろりと睨んだ。
その視線の恐ろしさときたら、到底口で言い表せるものではない。
だが、それに怯みつつも、瞬は捲し立てるように言った。
「でも、この写真はサガから星矢に宛てて送られてきたものなんだよ!そうだよね、星矢!?」
「あ、ああ!」
・・・・・・・・・・・。
一同の視線が、一斉にサガへと突き刺さった。
バンッ!!!!
「だ〜か〜ら〜!!!!私は何も知らんと言っている!!!!」
サガは苛立ち紛れに、テーブルを力一杯叩いた。
こんな不名誉極まりない濡れ衣を着せられるのは、流石に我慢ならないようだ。
サガは感情を激しく露にしながら、必死で容疑を否認した。
だが。
「嘘つけ!!しらばっくれようったって、そうはいかねえぜ!!」
問題の写真を送ってきた張本人を疑わしく思うのも、これまた当然の事であって。
星矢も負けじと怒鳴り返す。
「そうだ、いい加減に吐いたらどうだ。」
「自首すりゃ罪も少しは軽くなるぜ?」
「やかましい、愚弟、蟹!!お前らにまで取り調べられる筋合いはないわ!!引っ込んでろ、ギャラクシアンエクスプロージョン!!!」
横から首を突っ込んできたカノンとデスマスクに必殺技を放ってから、サガは目の前に置かれている写真を手に取った。
「全く・・・・、冤罪もいいところだぞ!私は本当に、こんな写真になど心当たりはない!それに、だってそう言っているだろう!?」
「そうよ!本当に知らないってば!!」
即座にサガに同意するを見ていると、どうも本当のようだ。
少なくとも、脅迫されて偽証させられているようには見えない。
「・・・・・なあ姉ちゃん、本っっ当に知らねえのか?」
「本っっっ当に知らない。」
「おい、星矢。何だかおかしいぞ。こいつ等、本当に知らんようだ。」
「だから最初からそう言っているだろう。」
心底不可解そうな顔をする一輝に、サガはうんざりと溜息をついてみせた。
「しかしこの写真、解せぬな。」
その横からひょいと顔を出したシャカが、サガの手から写真を奪ってしげしげと観察し始めた。
「えっ?何が解せないの?」
「よ、よく見てみたまえ。ここに写っている女は、確かに君の顔をしてはいるが・・・・」
「・・・・・ちょっと、あんまり見ないでよ;」
写真の中の自分がどんな姿であるかを今更ながらに思い出したは、気まずそうにシャカを窘めたが、シャカは平気の平左な顔をして続けた。
「だが、これは君ではないな。」
「えっ!?どういう事!?」
「よく見てみたまえ。この乳房、まるで小玉スイカの如き豊満さではないか。これは明らかに君ではなかろう。」
『確かに!!!』
シャカの鋭い考察に、一同は感銘したように柏手を打った。
「こりゃあどう見ても明らかにFカップ以上だぜ!ぜってーじゃねえ!!」
「そうだ!はこんなに爆乳じゃない!!」
「デス〜、ミロ〜♪」
『はっ!?!?』
「最っ低!!!」
デスマスクとミロの両頬をフォア&バックハンドで打ってから、は憤慨しつつ一同を睨み付けた。
「皆も変な所で納得しないでよ、失礼ね!!でも・・・・、確かにこれ、私じゃない。」
「とすると、これは首の部分を挿げ替えた合成写真、という事か?」
「アイオリア、貴方にしては冴えた推測ですね。まあ、恐らくそんなところでしょう。というか、それ以外の何だという感じですが。」
「ムウ・・・・・、喧嘩なら買うぞ。表へ出ろ。」
「お前達、止めないか。今はそんな場合ではないだろう。今はこの写真の謎を解き、我々の無実を証明せねば。しかし・・・・、まるでアイコラだな。」
「カミュ、アイコラとは一体何ですか?」
「・・・・・・・・氷河、お前知らなくて良い事だ。今の私の言葉は忘れろ。」
「うるさいぞお前達。無駄話はその位にしたらどうだ。」
シュラに窘められて、一同はようやく静まった。
場も治まったところで、考えねばならないのはこの写真の事。
シュラは星矢に向かって問いかけた。
「ところで星矢、この写真はいつ送られてきた?」
「確か・・・・・、一週間位前だったかな。」
「らしいぞ。覚えはあるか、サガ?」
「ふむ・・・・・」
サガは首を傾げながら、シュラの質問に答えた。
「・・・・・・・いや待て、ああそうだ、写真なら確かに送った。星矢よ、確か他にも何枚かあっただろう?」
「あ、ああ。何かお前らと姉ちゃんが酒飲んでどんちゃんしてる写真が何枚か。」
「うむ、それだ。お前もの近況が知りたいであろうと思ったのでな、一番最近撮った飲み会の時の写真を何枚か同封した。」
「あ〜!そういえば!!これ、あの時の写真ね!」
はポンと手を打った。
何処かで見覚えのある写真だと思ったら、これはその飲み会の時に撮った写真をベースに加工されているものだ。
「そういえばそうだな。だが、私が送ったのは普通の写真だけだ。こんなポルノ紛いの写真は知らん。」
「紛いも何も、これがポルノでなければ何だという話だがな。」
一輝は小さく鼻を鳴らした後、星矢を一瞥した。
「星矢、この男からの手紙はその一通だけだったのか?その前後にも送られてきたのでは?」
「いや、なかった。」
「ならば、他の連中からはどうだ?」
「それもない。」
「む・・・・・・・・・」
自信のあった推理が外れて、一輝は黙り込んだ。
だが、一瞬訪れたその沈黙を、サガの悲痛な声が破った。
「一輝、氷河、紫龍、瞬、そして星矢・・・・・・」
「何だよ!?」
「共に写っている以上、お前達がこのサガを、黄金聖闘士達を疑うのも仕方がない。だがな、これだけは言わせてくれ。」
「何だ!?」
「確かに私達は、お前達に偉そうな事を言える立場でないやもしれん。特にうちの愚弟なんぞ。」
「おい。」
「だがな星矢。そんな馬鹿共でも、こんな次元の低い、下らぬ真似をするような男達ではない。ましてやこんな我々に精一杯尽くしてくれているを標的にするなど・・・・。それはこのサガが誰よりも良く知っている。どうか、どうか・・・・・・・、信じてやってはくれまいか?」
「サガ・・・・・・・」
仮にも聖域の教皇、一回り以上も年上の、しかも死闘を共にした男に深々と頭を下げられては、いかに血気盛んなお年頃とは言え、誰も何も言えなかった。
誰もがしんみりと視線を落としているそんな中。
― 飲み会・・・・?
― 合成・・・・・・写真・・・・・・?
『はっ!?!?!?』
顔色の変わった人物が二人居た。
― やっべぇ・・・・・、もしかしてアレか!?
― しまった・・・・、すっかり忘れていた!!
犯人は誰にも悟られないように、こっそりと顔を見合わせて頷きあった。
今更『犯人は僕で〜す』と名乗り出られる筈がない。
自首したが最後、この場で極刑にされる事は間違いないのだから。
「あ〜あ、これで皆目見当がつかなくなっちまったな。」
「うむ、もうこれ以上考えたところで、時間の無駄じゃないか?誰がこんな悪質な悪戯をしたのかは知らないが、とにかく俺達が潔白だという事は分かった筈だ。」
「おう星矢、俺らがに何もしてないって事が分かったんなら、もうそれで良いだろ?」
「あ、ああ・・・・・、まあ、姉ちゃんさえ無事だったんなら・・・・・」
何のかんの言っても、まだ純朴な少年。
デスマスクとカノン、オッサン二人の有無を言わせない説得に、星矢達はまんまと乗せられた。
「・・・・・んじゃ、俺達帰るよ。」
「えっ!?もう帰っちゃうの?」
「ああ。姉ちゃんが心配で来ただけだからさ。何事もなかったんなら、それで良いんだ。さあ皆、帰ろうぜ!悪かったな、付き合わせちまって。」
「フッ・・・・・、なぁに、良いって事よ。」
「水臭いぞ、星矢!」
「そうだよ、星矢!」
「よし、帰ろう!」
かくして捜査は打ち切られる事になり、少年達は来た時と同じく突然に帰る事になった。
「んじゃ姉ちゃん、また会おうぜ!」
「うん!今度はもっとゆっくりしていって。皆もね!」
「はい!」
少年達はとにこやかに別れの握手を交わすと、黄金聖闘士達に向き直った。
「老師、シュラ・・・・・、申し訳ありませんでした。」
「良い良い、紫龍よ。それより、春麗に宜しゅうな。」
「はい。」
「気にするな、紫龍。また来い。」
「ああ!」
紫龍は己の非礼を師とシュラに詫び、
「我が師・・・・・、申し訳ありませんでした。先程の俺の言葉、どうか訂正させて下さい。」
「氷河・・・・・・・、良いのだ、分かってくれさえすれば・・・・・!」
「ま、良いって事だ。許してやる!勘違いは誰にだってあるしな。」
氷河はカミュと手を取り合って号泣し、二人揃ってミロに宥められ、
「じゃあね、アフロディーテ。さよなら。」
「私には詫び無しか、アンドロメダ。」
「ある訳ないでしょ。」
「邪魔したな、シャカ。」
「うむ。一輝よ、次に来る時は手合わせでもしてやろう。」
「いや遠慮する。」
瞬と一輝の兄弟が、実にドライな別れをシャカとアフロディーテに告げ、
そして。
「よく考えたら、あんた達程の人がこんな変な事する筈ないもんな・・・・。疑って悪かったよ。」
「星矢・・・・・・」
「もう良いのだ。お前達の誤解が解けたのなら、それで良い。」
サガとアイオリアに優しげな笑顔を向けられて、星矢は照れたように頭を掻いた。
「これからも、姉ちゃんをよろしくな。頼んだぜ!」
「うむ、このシャカがよきに計らってやろう。安心して帰るが良い。」
「ああでも!良いか、本当に妙な真似したら、その時こそ承知しないぜ!?」
星矢の顔は、そんな事は有り得ない、そう分かって言っているかのような晴れ晴れとした笑顔だった。
そうしてようやく、聖域に平和が戻った。
「ま〜〜ったく、うるせぇガキ共だったぜ!!」
「まあそう言うな。あいつらもが心配の余りやった事だ、許してやろうじゃないか!」
豪快に笑ったアルデバランは、ちらりとを見た。
「あ〜〜・・・・・、だが、の気はそれで済まんか・・・・・。あの写真を作った輩を見つけるまでは、腹の虫も治まらんよな。」
「ま、良いじゃねぇか!どうせただの悪戯だよ。気にすんな、な?。」
「デスマスクの言う通りだ。もう忘れろ、。」
「ん・・・・・・」
デスマスクとカノンに言われ、は渋々ながらも頷いた。
だが、以上に納得出来ていないといった風に、シュラが横から口を挟んだ。
「そうはいかんだろう。の為にも、やはりここはきちんとケリをつけた方が良いんじゃないか?」
「でもよ!今は掃除中だろ!?あのガキ共のせいで中断されちまったが、この有様だぜ!今日中に片付けなきゃ明日からどうすんだよ!?」
そういって、デスマスクは散らかり放題の執務室を指差した。
その横で、カノンも尤もらしく頷いてみせる。
「そうだぞ、シュラ。今すぐ行動を起こしたからとて、この写真が無かった事になる訳でなし、それはまた明日にでもしろ。今は何より掃除が先決だ。」
「まあ・・・・、その通りなような違うような・・・・・・・」
「さてと、んじゃバケツの水でも替えてくっか!」
「では俺は、貴様らが食い散らかしたスイカの皮でも片付けてこよう。」
二人は手に手にバケツやスイカの皿を持ち、忙しそうに執務室を出て行った。
「危なかったぜーーッ!」
「ああ、すっかり忘れていた!」
執務室を出た途端、二人はまっしぐらに給湯室へと駆け込み、額に浮かんだ汗を拭った。
「やっべーな、どうするよカノン?」
「酒を飲みながら現像していて、いい感じに酔っ払った時につい湧いた悪戯心で・・・・・、なんて説明が通るか?」
「いんや、無理だな。良くて半殺し、悪けりゃ全殺しだ。」
険しい表情を浮かべたデスマスクは、シンクに躊躇い無くバケツの水をひっくり返し、新しく水を入れながら言った。
「取り敢えず、ほとぼりが冷めるまでどっかに飛ぶか?」
「そうだな・・・・・」
犯罪者二人が逃亡計画を練っていた正にその時、その場に招かざる客が現れた。
「あなた方。そんな所で何を?」
『ム、ムウッ!?』
「全く、むさい男がコソコソ給湯室で無駄話なんてお止しなさい。OLじゃあるまいし。」
「あ、ああ悪い悪い!今戻ろうと思ってたところなんだよ、なあ!?」
「あ、ああ!」
「まあ、別に構いませんけどね。」
そそくさと逃げようとする二人の背中に向かって、ムウはきっぱりはっきりと言った。
「ところで今の話・・・・・・、何やら聞き捨てなりませんね。」
やっぱり聞いてたーーーー!?
という表情を浮かべた二人に、ムウはゆっくりと歩み寄った。
「酔った勢いの悪戯心ですか・・・・・、まあ、あなた達らしいとは思いましたが。」
「てっ、てめぇ・・・・・!」
「おや、そんな口を利いても良いのですか?良くて半殺し、悪ければ全殺しでしょう?」
「くっ・・・・・!」
忌々しそうに唇を噛み締める二人に向かって、ムウは穏やかに微笑んだ。
「良いでしょう。他ならぬ仲間の名誉を守る為です。このムウが一肌脱いで、この一件を揉み消して差し上げましょう。」
「・・・・・・・テメェ、何か企んでやがるな?」
「企むだなんて人聞きの悪い。ただ、少しばかり献血にご協力下さればそれで結構ですよ。丁度そろそろ修復を手掛けなければならない聖衣がありまして。これがまた見事なまでに再起不能でしてねえ。」
「・・・・・で、どれ位なんだよ?」
「ええ、一人あたまほんの2リットルばかり。」
「ふざけるな!!2リットルも抜いたら死ぬだろうが!!」
噛み付きそうな勢いのカノンを往なして、ムウは思慮深そうな瞳をきらりと光らせた。
「ならば、今すぐこの場で告発しましょうか?もれなく全員の必殺技及びの往復ビンタによる制裁の後、聖域中引き回しの上打ち首獄門に処される事を覚悟しておいでなら、それもまた一興。」
「一興じゃねえよ!!」
「何が『他ならぬ仲間の名誉を守る為』だ!!」
「では、宜しくお願い致しますね。」
ぽん、と叩かれた肩がやけに痛い。
もはや完全に弱みを握られた二人は、ムウのこの言葉に、
『謹んでお引き受け致します・・・・・』と答えるしかなかった。
〜おまけの後日談〜
「あっ、デス!カノンも!丁度良い所で会ったわ!ねえ、一緒にご飯食べない?昨日シチュー作り過ぎちゃって〜。」
「おう・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
「あれ?何か二人とも顔青いよ?っていうか白いよ?大丈夫??」
「あ、ああ、まあな・・・・・」
「大丈夫だ・・・・・・、ちょっとばかり貧血気味なだけだ・・・・・」
「そう?じゃあ沢山食べて行って!あ、そうそう、ところでさ〜、こないだの写真の件なんだけど、犯人の目星がついたって!」
『なにっ!?』
「なんかね、サガにしごかれ過ぎてストレスの溜まった雑兵さんが暗殺を目論んで、あの写真を作って星矢の所に送りつけたんだって。」
「まさか、そいつら捕まえたのかよ!?」
「まだみたい、っていうか、まだ推測の域を出ていないみたいよ。でもその線が一番有力だって、ムウが言ってたの。」
「で、連中は・・・・・・!」
「うん、最有力な説だって信じてた。ムウの言う事なら間違いないって。」
『ほ〜〜〜う・・・・・・・』
「ま、そんな事よりさ!上がって上がって!」
に誘われてふらふらと歩きながら、二人はもう二度と、写真を肴に酒は飲むまいと心に誓った。
そして、何があろうとムウだけは怒らせない、と。