夢の貌 ― ゆめのかたち ― 7




短い夏が駆け足で過ぎてゆき、世間のお盆休みが終わった頃、真島は特別な客を二人、クラブパニエに案内した。


「ま、真島さん、俺ホントこれで大丈夫ですかね?変じゃないですか?」

その二人の客のうちの一人、勝矢直樹は、店のすぐ前で立ち止まると、おどおどと自分の格好を気にした。
薄手の黒いジャケットに白いTシャツとブルージーンズという服装は勝矢に良く似合っているし、店の雰囲気にそぐわないという事もないのに、勝矢はそれを恥じて隠すかのように、逞しい肩を縮めて小さくなった。


「砕けすぎてますかね?やっぱり一張羅の背広着てきた方が良かったですか?」
「大丈夫やて、それで十分十分!そんなカチコチにならんでも、うちはそない煩い店とちゃうし、気楽に楽しんでってくれや!な!」
「ねぇねぇ、あたしは?これで大丈夫?」

勝矢に釣られるようにして、もう一人の客、朴美麗も同じ事を言い出した。


「地味すぎる?もっと派手な方が良かったかな?」

尤も、美麗は勝矢とは心配のベクトルが違ってはいたが。


「どうせ買うんだったら長く着れて色々着回せる物が良いと思ってこれにしたんだけど、でもこういうお店の女の人って皆もっと派手で綺麗だよね?
あぁどうしよう、失敗したかなぁ!?やっぱりベアトップにした方が良かった!?スカートももっと短い方が良かったよね!?」

心配せずとも、美麗の着ている膝上丈の黒いノースリーブのワンピースは、程良いレベルで十分にセクシーだった。
イケイケのボディコンとまではいかずとも、適度に体に沿ったタイトなデザインなので、美麗のスレンダーなボディラインがしっかりと出ている。
よく見ると、化粧が少し背伸びしすぎていて幼い顔には些か不釣り合いな印象だが、それでもパッと見は十分に大人の女、誰も16歳の女の子だとは思わないだろう。
これで更にスカートが短くなったりなんかした日には、いよいよ目のやり場に困ってしまう。真島は苦笑いしながら、要らん要らんと手を振った。


「それで十分やて!店のネーちゃんらは、仕事やからあないして着飾っとんねん!ああいう派手なドレスは、言うたら仕事着や!美麗ちゃんはそれでええねんて!十分可愛い可愛い!」
「本当〜?なーんか誉め方テキトーじゃない?ねぇ勝っちゃん?」
「え、そ、そうかなぁ・・・・?」
「ほれ!二人共、いつまでもこんなとこ突っ立ってんと、早よ入れや!ほれほれ!」

真島は店のドアを開けて、二人を中に入れた。
通常、フロントには男のスタッフ、つまりボーイか支配人の真島が立つのだが、今日はがいて、勝矢と美麗をにこやかに出迎えた。


「いらっしゃいませ。クラブパニエにようこそ。」

涼しげな薄い水色のスーツ姿のと対面した二人は、揃って呆然と目を丸くした。


さん、まるで別人みたい・・・・・!お店もすっごい綺麗・・・・・!」
「ありがとうございます。『みたい』じゃなくて別人です。と申します。どうぞ宜しくお願いします。」

は取り澄ました顔で畏まってみせてから、にんまりと二人に笑いかけた。
美麗の方はそれで幾らか緊張が解けたような笑顔になったが、勝矢の方は緊張を通り越して殆ど挙動不審になりながら、店内を恐る恐る見回していた。


「す、すいません、お言葉に甘えて本当にノコノコ来ちまって・・・・・。俺みたいなの、場違いですよね・・・・・。」

華やかな芸能界に身を置いてはいるが、生真面目で大人しい性分である勝矢は、未だつましい暮らしをしている。夜の店で女達を侍らかすような派手な遊びとはとんと無縁な、純朴な男なのだ。
ここは1発、背中でもぶっ叩いて緊張を解してやろうかと思ったが、それより先にが明るい笑い声を上げた。


「なーに言うてんの!そんな事ないって!うちは別にそんな敷居の高い店とちゃうし、気楽にして!な?」
「は、はぁ・・・・、ありがとうございます・・・・・。」

素のままのの笑顔を見て、勝矢の顔にもようやくぎこちない笑みが浮かんだ。


「さ、どうぞどうぞ!」

は先頭に立って、勝矢と美麗を誘った。
二人の事は取り敢えずに任せておいて、真島は先に着替えを済ませる事にした。
週明けの比較的暇な日ではあるが、今日も店は営業中なのだ。二人の相手をするのが優先だとしても、必要に応じて支配人としての仕事もしなければならなかった。
真島は手早く身支度を済ませてキッチンへ行き、二人の席のオーダーを確認した。
シャンパン・ゴールドと、ノンアルコールのトロピカルカクテル。丁度ボーイがそのカクテルを作っているところだったので、出来上がるのを待って給仕を引き受けた。


「失礼します。お飲み物をお持ち致しました、お客様。」

営業モードで現れてやると、と談笑していた勝矢と美麗は、また揃ってさっきのような顔になった。


「こちらになります。」

テーブルの上には、が予め支度をしていたのであろうフルーツ盛りやアラカルトが、既にセッティングされていた。
その隙間を埋めるようにしてグラスやドリンクを置いていくと、美麗がまた『別人みたい・・・・』と呟いた。
勝矢に至っては、目も口もポカンと丸く開かれっぱなしになっている。
この二人と会う時は、それぞれの練習に付き合うか、飲み食い遊びのいずれかなので、驚かれるのも無理はないのだが、それにしてもあからさまな驚かれ方に、真島は堪え切れず苦笑を零した。


「ひひっ、二人共何やねんなその顔。そないビックリせんかてええやろ。」
「あ、す、すいません・・・・!あまりの別人っぷりについ驚いちまって・・・・!」
「吾朗さんって敬語話せるんだぁ、意外・・・・・・!」

美麗が大真面目な顔でそう呟くと、は遠慮なしに、勝矢は堪え切れないといった風に、それぞれ吹き出した。


「何やねんお前ら、よってたかってバカにしとんか。」

真島は顔を顰めて他の客に聞こえない程度の声で言い返しながら、大人3人のグラスにシャンパンを注ぎ、注ぎ終わると美麗の隣に座った。


「さあ、ほな乾杯しよか!」

真島が自分のグラスを掲げると、と美麗もサッと動いて同じようにした。


「勝っちゃん、ドラマ出演おめでとうさん!かんぱーい!」
「「かんぱーい!」」

今日こうして二人を大阪に招いたのは、単になかなか会えないと会わせてやる為だけではなかった。
地道にトレーニングを積み重ねて俳優活動を続けてきた勝矢に、ようやく運が向いてきたのだ。ある単発ドラマの準主役の座を射止め、その撮影が先日無事に終わったのである。その祝賀会というのが、今日の一番の名目だった。


「ありがとうございます・・・・・!」

勝矢はしきりに照れながらも、嬉しそうに乾杯に応えた。
おずおずと掲げられた勝矢のグラスに、まずは真島が先頭を切って自分のグラスを当てると、と美麗もそれに続いた。
勝矢はそれにも都度都度礼を言いながら、嬉しそうに笑った。


「放送はいつなん?」
「10月みたいです。日程がまだはっきりしていないんですけど、決定したらすぐお知らせします!」
「絶対やで!私、ビデオも録画して保存版にするつもりやねんから!」
「はは、ありがとうございます!」

と談笑している勝矢の嬉しそうな笑顔を見ながら、真島もまた胸の内で喜びを噛み締めていた
知り合ってまだ半年足らずだが、勝矢は真島にとって大事な友だった。
組を追われて大阪に来てから以降、堅気の知り合いが随分増えて付き合いも広がったが、その中でも勝矢は一番気が合い、一番大切な友人だった。
その勝矢が日の目を見るという事は、表の社会で華々しく脚光を浴びる事は決して無い極道者の真島にとって、まるで我が事のように誇らしく喜ばしい事だった。


「ほんで?どないやねん手応えは?次の仕事に繋いでいけそうなんか?」

真島がそう訊くと、勝矢は傾けかけていたグラスをテーブルに置いて、少年のようにキラキラと輝く目を真島に向けた。


「それがね、決まったんですよついこないだ!また似たような単発ドラマなんですけど、今度は主役で!」
「ホンマか!凄いやんけ!」
「こないだのドラマで、何か監督に気に入って貰えたみたいで・・・・・!
それに他にも別件で、脇役だけど幾つか貰えそうなんです!勿論、主演作が最優先なんですけど、こんなチャンスもう二度と無いだろうし、片っ端から全部受けようと思ってるんです!」

余程高揚しているのだろう、勝矢は珍しく捲し立てるような喋り方でそれを打ち明けた。
すると、と美麗が顔を輝かせて歓声を上げた。


「凄いやんかー!おめでとう勝っちゃんー!」
「やったね、勝っちゃん!おめでとう!今まで頑張ってきた甲斐があったじゃない!」
「うん、ありがとう!さんも、ありがとうございます!」

勝矢はから酌を受けながら本当に嬉しそうに笑い、グラスのシャンパンを一気に飲み干すと、不意にその笑顔に幾らかの緊張を漲らせた。


「・・・だから、思い切って居酒屋のバイト辞めたんです。
長い間世話になってた店で、大将も店の奴らも皆良い人達だったんですけど、やっぱり俺、俳優として身を立てて行きたいから、その為には退路を断って自分を追い込まなきゃと思って。」

夢という不確実なものを追いかけながら生きていくのは、口で言う程容易くない。
追えば追う程、ひたむきになればなる程、捨てなければならないものが多く、大きくなっていく。そして、そこまでしたところで叶う保証も無い。むしろ、夢破れて挫折していく者の方が圧倒的に多い。
夢を追った結果、何もかもを失くして窮地に追い込まれた連中を、真島はこれまで何人も何人も見てきた。


「・・・そうか。そやな、それがええ。」

だが、夢というものはきっと、それを百も承知で挑む奴だけが叶えられるものなのだろう。失敗を恐れず、只々己の夢だけを見据えて突っ走る、馬鹿みたいにひたむきな奴だけが。


「よっしゃ!ほないっちょド派手にブチかましたれや!未来の大スター、勝矢直樹の快進撃の始まりや!」

夢を叶えるのは、あくまでも己自身。
苦労を乗り越えプレッシャーを跳ね除けるのも、あくまでも己自身。
友としてしてやれる事は、心から強く信じて応援する事だけだった。
勝矢は必ず成功する。絶対に、絶対に、夢を叶える事が出来る、と。


















今夜のクラブパニエは、いつもより早く店じまいをした。勿論、滅多に無いこの機会を楽しむ為である。
だが、初めて会った時のように4人で朝まで遊び倒す、とはならず、今回は男同士と女同士でそれぞれ別行動という話になった。
勝矢のスケジュールの都合で、勝矢と美麗は明日の午後の新幹線で東京へ帰る事になっており、と真島も店の営業があるので、前回のように徹夜で遊ぶ訳にはいかないのだ。
それに、幾ら真島が一緒でもの部屋に泊まるのはどうしても気兼ねするという勝矢の必死の訴えもあって、そう決まったのであった。


と美麗ちゃん送ったら、まずは1発スパーリングして、ラーメンでも食いに行って、ほんでからサウナでも行くか!なあ勝っちゃん!」
「良いですね!スパーリングはお手柔らかにお願いしたいですけど。」
「ほな私らは、女の子らしくお家でお菓子でも食べながらパジャマパーティーしよっか!途中のMストアでお菓子いっぱい買って行こ!」
「うん!もう今日は特別にダイエット中断しちゃおっと!」

真島と勝矢も男同士の遊びを楽しみにしていたが、と美麗も女同士のお泊まりを楽しみにしているようだった。
二人共、さっきまで散々飲んで食べて喋り倒していたのに、まだお菓子だのアイスだのの話をしてキャッキャと盛り上がっている。
その様子は微笑ましいが、もしもこれに付き合わされていたらと思うと、それだけで胸が焼けそうだ。内心ホッとしながら、真島はニヤニヤと女二人をからかった。


「おいおいお前ら、こんな夜中に菓子なんぞバクバク食うとったら肥えるでぇ。特に、ひひっ。」
「うっさいなぁ、ほっといて。ラーメンの方がヤバいやろ。」
「フフン、俺はなんぼ食うても太らん体質やから大丈夫やねん。」
「うわあムッカつくぅ!何やそのフフンて笑い!腹立つわぁ!」

は即座に膨れっ面になって、真島にドンと肩をぶつけた。いつもの他愛ないやり取りである。それを見た勝矢が、目を細めて笑った。


「ホントお二人、仲良いですね。」
「ねー。なんか息ピッタリでラブラブだよねー。」
「そう見えるか?俺が一方的にどつかれとるだけやねんけど。」
「あんたがいちいち要らん事言うからや!」

4人で連れ立って騒ぎながらネオンの街を歩いていると、向こうから五十がらみの男と若い女が歩いて来た。女の方はどこかの店のホステスで男はその客、夜の街ではよく見かける組み合わせだ。
そして、その男が極道者である事もまた然り。
幾ら喧嘩師とはいえ、誰彼構わず闇雲に喧嘩する気は無い。向こうはこちらに目を留めたが、真島は知らない振りをして、そのまま通り過ぎてしまおうとした。


「あれ?若やないですか?・・・・あ、やっぱりそうや!」

だが、男はこちらに歩み寄って来た。
男はどうやら人違いをしているようだった。
真島はこの男に見覚えも無ければ、『若』と呼ばれる立場でもないのだから。
親しげに笑って近付いて来る男に、人違いやでと言うつもりになっていると、男は真島には目もくれず、勝矢一人に声を掛けた。


「若ぁ!久しぶりでんなぁ!えらいすっかり大人になりはって!ええ!?」
「・・・・お久しぶりです、武田の叔父貴。」

驚きのあまり、声も出なかった。
そうするしか出来なくて呆然と突っ立っていると、勝矢が武田と呼んだその男は、ようやくその目を真島達にも向けた。


「若、こちらのお方々は?」

武田が気にしているのは、実質真島一人だった。
と美麗は武田の眼中にはなく、武田は疑念と警戒に満ちているその目を、明らかに真島だけに向けていた。


「皆、俺の個人的な友達です。」

勝矢はすぐさまそう答え、まるで真島達を庇おうとでもするかのように一歩前に出た。
そう言われてはこれ以上詮索出来ないのか、それともその気自体が無いのか、武田は『そうでっか、そらどうも』と呟き、真島達に向かって形ばかりに頭を下げた。
だから真島も、無言のまま形式的に礼を返した。
すると、武田は真島から目を逸らし、また親しげな笑みを勝矢に向けた。


「あれからもう何年や?10年ぐらい経ちますかいな?」
「ええ、まぁ・・・・・。」
「姐さんの事は聞きましたわ。まだお若かったのにお気の毒でしたなぁ。
その節は誰一人顔も出さずに失礼しました。そやけど組の方で相談した結果、弔問は遠慮させて貰おうという事になったんですわ。
親っさんと別れはってからもう随分経つのに、今更わしらのような極道者が堅気の女子はんの葬儀にゾロゾロ押しかけて行ったら、却ってご迷惑や思て。」
「いえ、そんな・・・・。お気遣いありがとうございます。」
「今日は!?親っさんに会いに来はったんでっか!?」

武田は期待するように顔を輝かせたが、勝矢はその淡々とした表情を変えないまま、即座に首を振った。


「いえ、違います。見ての通り、友達に会いに来ただけです。
親父の所には寄りませんので、武田の叔父貴も、今日俺に会った事は内緒にしていて下さい。お願いします。」

勝矢が頭を下げると、武田は困惑しながら、不承不承というように小さく唸った。


「・・・・まぁ・・・・、若がそない言わはるんなら・・・・・。
そやけど、出来たら顔見せたって下さいや。このところ、親っさんもすっかり歳取って気弱になってしもてなぁ。身体の調子もあんま良うないみたいやし。
一人息子の若が顔見せてくれはったら、元気出ると思うんですわ。」

武田のその言葉に、勝矢は諦めたような薄い笑いを微かに浮かべた。


「買い被りですよ、それはありません。俺とあの人は、赤の他人同士とさして変わりませんから。別に俺と会ったところで、元気になんかなりませんよ。」
「若・・・・」
「それじゃ、失礼します。叔父貴もお元気で。さ、行きましょう。」

勝矢は真島達を促して歩き始めた。
いつになく強引に見えるのは、きっと気のせいではない。
勝矢はきっと、知られたくなかったのだ。
しかしこうして知ってしまった以上、訊かずにおく訳にはいかなかった。


「・・・・・どういう事や、勝っちゃん。」

武田の姿が見えなくなる辺りまで来ると、真島は率直に尋ねた。
すると勝矢はその場に立ち止まり、物憂げな眼差しをアスファルトに落とした。


「・・・・・すいません、ずっと黙ってて・・・・・・。」
「親父さん、何処の人や?」
「近江連合です。直参勝矢組の組長・・・・、それが俺の親父です。」
「近江連合・・・・」

よりにもよって、一番の敵対組織の直参組長の息子だとは。
そんな事をしたくはなかったのだが、当てつけがましい深い溜息が思わず真島の口をついて出た。


「真島さんの所とは敵対しているんですよね、確か。それ位は知っています。」
「何で言わんかったんや?」
「関係無いからです。」

顔を上げた勝矢は、まっすぐに真島を見つめた。
嘘偽りなど欠片も感じられない、誠実な眼差しだった。


「親父は極道でも、俺は極道じゃない。近江連合も勝矢組も、俺には何の関係も無い。あの人はもう10年も前に別れたきりの、他人も同然の人です。
だから、言いませんでした。近江連合にとっての東城会は敵でも、俺にとっての真島さんは大事な友達です。だから。」
「勝っちゃん・・・・・」

もしも勝矢が最初から素性を明かしていたら、付き合わなかっただろうか?


「俺達、これからも友達ですよね?そう思ってて良いんですよね?」
「・・・・・当たり前田のクラッカーや!」

答えは否だ。
真島が笑うと、それまでずっと不安そうに黙っていたが安心したように笑った。


「・・・ふふっ、古っ。」
「何?その、あたりまえだのクラッカーって?」
「知らんのかいな美麗ちゃん!?この伝統的なギャグを!」
「あっはは!東京の若い女の子が知ってる訳ないやろ!勝っちゃんかて知らんのちゃう!?」
「あはは、いや、一応知ってますよ。聞いたのは随分久しぶりですけど。」

東城会も近江連合も関係ない。極道か堅気かも関係ない。
勝矢直樹という男そのものに惹かれているから、こんなにも心を許す事が出来たのだ。
こんな事で、真島の勝矢に対する友情は些かも変わりはしなかった。


















真島と勝矢に送って貰って自宅マンションに帰り着くと、は手早く真島の着替えを用意した。
それを受け取った真島は、晴れやかな笑顔でと美麗に手を振り、勝矢と共にまた夜の街へと戻って行った。
再び合流するのは、昼12時の予定である。
男連中が帰って来たらどこかで食事をしてから、新大阪まで勝矢と美麗を送っていく事になっているのだ。
それまでの間、こっちはこっちで存分に盛り上がろうと、と美麗は女同士の誓いを立てた。
まずはさっさと風呂に入り、パジャマに着替え、テーブルの上に買い込んできたお菓子やジュースをズラリと並べて、準備が万端整うと、後は眠くなるまでひたすら喋って喋って喋り倒すのみである。
文通はずっと続けているが、会うのはこれが2度目とあって、話題はまたもや泉の如く湧き出て尽きなかった。
の店の感想や、大阪に来るまでの道中の事、手紙には書ききれない日々の小さなよもやま話を中心に、も美麗も時間を忘れて喋り続けた。
美麗がふと黙り込み、儚げな表情を見せたのは、ひとしきり喋って笑ったその後だった。


「・・・・でもさ、ちょっと吃驚したね、さっきの話。」
「さっきの話?」
「勝っちゃんの話。」
「ああ・・・・・・」

確かに驚きはした。だが勝矢本人も言っていた通り、彼の父親と彼とは関係無い。実の親子であっても、別々の人間なのだから。
真島と同じくも、勝矢の父親が近江連合の直参組長だからといって、勝矢と縁を切ろうとは思わなかった。
それはきっと美麗も同じ、いや、真島よりもよりも、美麗が一番強くそう思っている筈だった。


「勝っちゃん、お父さんの事きっと凄く嫌ってるんだろうね。口に出すのも嫌な位にさ。だからあたし達にも言いたくなかったんだろうね。」
「そうやな・・・・・」

が相槌を打つと、美麗はふと不安げな顔になってを見た。


「でも勝っちゃんの言う通り、関係無いよね?だって勝っちゃんは俳優なんだから。
吾朗さんの敵なんかじゃないよね?こんな事で、二人が絶交になったりなんかしないよね?」

極道の世界には、堅気の人間には理解出来ない非情な面が多々ある。
縋り付くようにそう念を押す美麗の気持ちは、にもよく分かった。
その不安を取り除いてやりたくて、は明るく笑って頷いた。


「ならへんならへん、大丈夫やって!吾朗本人もああ言うてたやろ?絶交なんかする訳ないやん!
あの人勝っちゃんの事大好きやねんから、こんな事で友達やめたりとかせぇへんって!むしろやめろって言われてもやめへんと思うで、あははっ!」
「ふふふっ・・・、だよね・・・・・!」

美麗は安心したように笑うと、溜息混じりに『あ〜あ!』と大きな声を出した。


「だけど良いよねぇ勝っちゃんは。運が向いてきてさ。ドラマの主演かぁ、益々差が開いちゃうなぁ・・・・」

寂しそうに微笑む美麗に何と返すべきか、は暫し心の中で迷った。
が知っている限り、美麗の方は全く進展が無いままだった。
知り合った時に受けると聞いていたオーディションも敢え無く落選してしまったし、その後も何のチャンスも掴めないまま、ただ歌とダンスの練習を黙々と積み重ねているだけの日々を送っているようだった。


「美麗ちゃんの方は?最近どないなん?」

考えた挙句、下手に気を遣って何も訊かずにいるよりは良いと思ってストレートに訊いてみると、美麗は笑って一言、さっぱり、と即答した。


「もうやんなっちゃう!それでも諦められないから、益々やんなっちゃう!
おまけに例の家主の友達も相変わらず男引っ張り込んでイチャついてばかりで、居辛さも増す一方でさぁ!もう最悪!」

お菓子を食べながらわざとらしい苦笑いをしてみせる美麗は、の目には無理をしているように見えた。
美麗は別に勝矢を妬んでいる訳ではない。ただ、思うようにいかない自分の境遇に焦り、苛立っているのだ。彼氏を作ってデートしたり友達と遊ぶのが何よりも楽しい年頃に、ひたすら生活の為のバイトと練習に明け暮れているというのに、その努力が実る兆しが全く見えてこないのだから。
それに、共同生活をしている女友達に対する愚痴も、美麗は度々手紙の中で吐露していた。里親の元に帰る気は相変わらず全く無いようだが、彼女との生活も、それはそれで日増しにストレスが溜まっていく一方で辛いようだった。
邪険にされ、面倒な家事は押し付けられ・・・と、都合良く扱われている美麗は可哀想だが、しかしそれは大人の目から見れば致し方のない事でもあった。
幾ら家賃と光熱費を半額払って家事を殆ど担っているとはいえ、本当に一人で暮らそうと思ったら、それだけでは到底足りない。そもそも、今の美麗では部屋を借りる事すら出来ない。
美麗の今の暮らしはその友達がいて初めて成り立つもの、つまり、彼女と美麗は対等ではないのだ。そしてそれは、もはや『友達』と呼べる関係ではない。
美麗もその友達も、そこに気付かず安易に共同生活を始めてしまったのだろう。若さ故の失敗というやつだ。
ともかく、今の生活を続けていても、美麗にとって良い事は何一つ無いと、は常々思っていた。


「・・・なぁ、うちのお客さんにな、TV局のプロデューサーの人がおんねんやんか。関西ローカルの局やけど、良かったら美麗ちゃんの事頼んでみよか?
絶対って約束出来る訳やないけど、何かの番組のアシスタントとかで、タレントとしてデビューさせて貰えるかもしらん。私の知ってる店でホステスやってた娘が、実際にそないしてタレントになりやってん。」
「ホント・・・・・!?」
「それでもしタレントになれたら、その友達のとこ出て、里親の伯父さん夫婦にも堂々と胸張って、晴れて独り立ち出来るやろ?
そら慣れへん土地で心細いやろうし、軌道に乗るまでは生活の面でも色々大変やと思うけど、私も出来るだけ力になるし。どう?」

の打診に、美麗は少しの間顔を輝かせていたが、やがて申し訳なさそうな顔になってはにかんだ。


「・・・ありがとう。でもやっぱりだめ。そう言ってくれるのは凄く嬉しいけど。
私はどうしてもアイドルになりたいの。日本全国、誰もが知ってるトップアイドルに。その為には、やっぱり東京じゃないとだめなんだ。」
「そっか・・・・・。」
「ごめんね。折角親切で言ってくれてるのに。」
「ううん、ええねん。私が勝手に思っただけの事やから、気にせんといて。」
「・・・さんは優しいね。」

突然真面目にそんな事を言われて気恥ずかしくなり、はぎこちなく笑った。


「え・・、えぇ?そうかぁ〜?あははっ。」
「うん、本当に。お店やってて凄く忙しいのに、いつもあたしの手紙に返事くれて、あたしの話ちゃんと聞いてくれて、こんな風に気に掛けてくれて。
こんな事してくれるの、さんだけだよ。友達なんて結局上っ面だけだったし、里親はあたしを成り行きで渋々引き取っただけで、面倒かけるな、恥かかせるな、育ててやった恩を返せって、そればっかり。」
「そんな・・・・・。でも、実のお母さんのお兄さん夫婦なんやろ?」
「あの人達があたしを引き取ったのは、自分達の体裁を気にしての事よ。身内の子供を見捨てた人でなしって周りに思われるのが嫌だっただけ。
高校受験させたのもそう。元々左利きだったあたしを無理やり右利きに矯正したのもそう。朴さんちは今時子供を高校へ行かせるお金も無いんだって馬鹿にされる、朴さんちの子は勉強出来ない馬鹿なんだって笑われる、左利きなんて恥ずかしくてみっともない、理由なんて全部そんな事ばっかりだった。
あの人達が可愛がるのは自分の娘達だけで、あたしはいつだって邪魔者扱い。
服も持ち物も何から何まで全部ボロボロのお下がりばかりで、偶の外食やお出かけも、あたしだけいつも置いて行かれてた。
楽しい事や嬉しい事は何もして貰えなくて、家の用事ばかりさせられて、何かにつけて厳しくされてばっかりで、只の一度だって可愛がって貰えた事は無かった。」

美麗の身の上話は、詳しく聞くと、以前に聞いた時よりももっと深刻な印象を受けた。
誰にでもある反抗期の反発心が生んだ軋轢というだけではない、もっと深い亀裂が、美麗と里親との間を完全に断絶してしまっているようだった。


「実の親に至っては、産むだけ産んであたしの事ゴミみたいに捨てて行ってさ。っていうか、あたし本当にゴミの中に捨てられてたんだって。」
「え・・・・!?ど、どういう事・・・・!?」
「ボロアパートのゴミっ溜めの部屋の中に、独りで置き去りにされてたんだって。汚くて臭くて、お前もゴミにしか見えなかったわって、里親に何度も聞かされた。」

あまりの酷さに、言葉も出なかった。
そんな状態にして捨てていった実の親も、その惨い様を嘲るように繰り返し聞かせてきた里親も、どちらも人としてあまりにも酷かった。


「その頃の事は、殆ど何にも覚えてないの。実の母親の事で少しだけ覚えてる事と言ったら、着飾って化粧して出掛けて行く後ろ姿だけ。他は何にも覚えてない。顔さえもね。
あたしの事なんて、だーれも愛してくれない。あたしみたいなのにこんなに親身になって優しくしてくれるの、さんだけだよ。
あたしにもさんみたいなお姉ちゃんがいたら良かったな。里親のとこには、あたしより年上の娘が2人いるんだけど、アイツらの事をお姉ちゃんだと思った事なんか一度も無い。
ブスだの何だの悪口言われて、何かと用事を言い付けられて、八つ当たりされて、殴られて蹴られて。2人共ホント性格悪いドブスで大っ嫌い。
さんがお姉ちゃんだったら良かったのにな。綺麗で、優しくて、温かくてさ。さんの妹が本当に羨ましい。」
「美麗ちゃん・・・・・」

勝気な美麗の寂しそうな微笑みに、思わず胸が締め付けられた。
褒めそやされる気恥ずかしさよりも、その苦しさの方が上回っていた。
も貧しくて揉め事の絶えない荒んだ家庭で育ったが、美麗の生まれ育った環境はそれより更に凄絶で、孤独だった。
けれども、それに同情したところで、それが美麗にとって一体何の役に立つだろうか?
に出来る事は、美麗が自ら気付いてくれるよう、寄り添って声を掛け続ける事だけだった。今のあなたは決して独りじゃない、と。


「・・・そんな事ない。そんな事言うたら吾朗が怒るで?『はぁ〜!?何でやねーん!俺がいっちゃん優しいやろうがー!』って。ふふふっ!」

は笑って真島の口調を真似てみせた。
すると、美麗は少し気を取り直したように、寂しそうだった顔を楽しげに笑わせた。


「ふふふっ・・・・、ホントだ。それ言いそう。」
「そやろ?それに何より、勝っちゃんが傷付く。同じ夢見て一緒に頑張ってる『盟友』やろ?勝っちゃんが一番美麗ちゃんの事気に掛けてる筈やで?」
「・・・うん。」

それもきっと、美麗が一番良く分かっている筈だった。
うまくいかない時は、誰でも落ち込んでナーバスになってしまう。只それだけの話だ。事実、頷いた美麗の表情は、もうスッキリとして落ち着いていた。


「ごめん。さんが優しいから、ちょっと甘え過ぎた。」
「そんな事ないって。でも、いっこ訊いても良い?」
「何?」
「何でそんなにアイドルに拘んの?」

そんな夢を抱いた経験が自分に無いからかも知れないが、には美麗がそこまでアイドルに拘る理由が分からなかった。
何も芸能人=アイドルという訳ではない。タレントでも歌手でも女優でも、有名な芸能人は沢山いる。
むしろ、絶対的な前提条件として若さが必要なアイドルよりも、年齢に左右されないジャンルを目指す方が、長い目で見ると良いのではないかとさえ思っている位だった。
美麗がもう少し見方を変えて視野を広げさえすれば、今の辛い状況を少しでも早く脱して夢に近付く事が出来るのではないか、と。


「・・・・・眩しかったの・・・・・」

だが美麗は、その微笑みにまた寂しそうな陰を纏わせて、そう呟いた。


「え・・・・?」
「あたしずっと独りぼっちだったんだ。里親家族には厄介がられて、友達もいなくてさ。だから、楽しみと言ったらTVぐらいしかなかったの。
って言ってもあたしにチャンネル権なんか無いから、里親家族が茶の間で観ているのを、陰からこっそり観るだけなんだけどね。
そしたらさ、歌番組とかにアイドルの女の子が出るじゃない?可愛い衣装着てさ、皆にチヤホヤされて、キラキラ眩しい顔で笑って。
あの子達が羨ましかった。だってあたしとは真逆だったもん。
あたしはボロボロのお下がりを着て、皆に嫌われているのに、あの子達は素敵な衣装を毎日とっかえひっかえして、皆に可愛い可愛いって言われて。
あたしもああなりたい、あんな風に雲の上に立って、皆みんな見返してやりたいって、TV観ながらずっと思ってたの。」

淡々と話す美麗の瞳には、思い詰めたような切迫感が宿っていた。
夜の世界の女の子達の中にも、芸能界に憧れてそこを目指している娘は何人もいるが、美麗のような目をしている娘は見た事が無かった。
その強すぎる眼差しに戸惑って黙っていると、美麗は我に返ったように笑顔を浮かべて、さんは?と訊いた。


さんには夢は無いの?」
「私?」

一瞬面食らってから、は吹き出した。
は26歳、世間では売れ残りのクリスマスケーキに喩えられる歳である。
生きている限り人は誰しも歳を取っていくのだから、決して馬鹿にされたり引け目に思うような事ではないのだが、そうかと言って、16歳の美麗と同じ目線で夢を見られる訳でもない。
は笑いながら、無い無いと手を振った。


「私はもうそんな夢見れるような歳とちゃうから〜。」
「何でよ〜!そんなの関係無いのに!あ、もう叶ったからとか?自分のお店持つのが夢だったとか、そんな感じ?」

美麗の無邪気な質問に、は思わず答えに詰まった。


「・・・うん、まぁ・・・・、そういう訳では、なかったんやけどな・・・・・」
「え、違うの?じゃああのお店は?親の後を継いだとか?」
「それともちゃうねんけど・・・・」
「じゃあ何?」

5年前の事を思い出し、は暫し考えた。


「・・・・まぁ言うたら、単なる私の我儘、かな?」
「我儘って、そんなんでお店なんてやれないでしょ?お店するのって凄くお金かかるし。
私の里親、夫婦で小っちゃい食料品店やってんだけど、これが古くてボロボロのきったない店でさぁ。でもそんなのでも何かとお金がかかるみたいで、あの人達年がら年中お金お金ってブツブツ言ってるよ。
さんとこみたいに綺麗で何人も人を雇ってるお店だったら、うちなんかとは比べものにならない位もっともっとかかるでしょ?」

美麗の言う通りだった。
それを特に理由を問い質しもせずに、右から左にポンと用立ててくれた人の顔が、の脳裏に蘇ってきた。
佐川司、あんなにも恨んだ人は他にいない。けれども、あの人がいたから今がある。
人に詳しく話せるような関係ではなかったけれども、あの当時佐川から受けた大きな恩恵を隠して自分の手柄のように語る事は、には出来なかった。


「・・・・昔、パトロンがおったんよ。あの店はその人が持たせてくれてん。」
「ああ〜・・・・・」

それで意味は十分に通じたようだった。
美麗は戸惑うように暫く黙り込んでから、またおずおずと口を開いた。


「・・・・それって、吾朗さん、じゃ、ない・・・・って事だよね?」
「うん、違う人。」
「その事、吾朗さんは知ってるの?」
「うん、知ってる。そもそも私と吾朗は、その人を通じて知り合ってん。」
「そうなんだ・・・・・。その人とは、今も・・・・・?」
「ううん、もう亡くなったわ。」
「そっか・・・・・」

美麗は遠慮がちな上目遣いでをチラリと見て、また黙った。
更に根掘り葉掘り訊かれるかと思って暫く待ってみたが、美麗はそれ以上質問を重ねようとはしなかった。


「・・・・・何か・・・・・、凄いね。」
「何が?」
さんと吾朗さん。だって、そういう事も全部含めて今のこの関係って事でしょ?凄く信頼されて、愛されてるんだね。
良いな。さんが羨ましい。あたしにはそんな風に愛してくれる人なんていないから。」

さっきも同じ事を言っていたが、今度はニュアンスが違っていた。
明らかに冷やかしているニヤニヤした表情に安心しながら、も仕返しに同じような笑みを浮かべてみせた。


「え〜?そ〜お?勝っちゃんは〜?」
「か、勝っちゃんとはそんなんじゃないよー!前にも言ったじゃーん!」

16の女の子が25過ぎた夜の女をからかうなんて、10年早い。
返り討ちにしてやろうとからかい返すと、の目論見通り、美麗はうろたえて恥じらうように笑った。


「それは美麗ちゃんがそう思ってるだけとちゃう?美麗ちゃんを見る勝っちゃんの目ェは、ちょっと羨ましくなる位優しいけどなぁ?」
「そっ、そんな事ないって・・・・!」
「でも相変わらずちょいちょい泊めて貰ってんねやろ?ほんで、相変わらずなんやろ?」
「う・・・ん・・・、それはまあ・・・・」
「そんな自制出来る男の人、そうそうおらんでぇ?勝っちゃんは美麗ちゃんの事をホンマに大切に思てるわ。そやなかったら、とっくに襲われてんで?」
「そ・・・かな・・・・・?」

動揺している美麗の顔には、年相応の可愛らしい魅力があった。
ついつい眺めてしまっていると、やがて美麗はいつもの調子を取り戻したように澄ました顔になった。


「でもやっぱり、愛とか恋とかじゃないと思う。
『盟友』ってのは、ただ馴れ合うだけじゃなくて、ライバルでもあるんだ。競い合ってお互いを高めていける、とっても大切な存在。
そんな人、そうそう代わりはいないよ。勝っちゃんも多分、あたしの事をそう思ってくれてるんだと思う。」

大人ぶって背伸びしがちな子で、実際、同年代の子よりはずっと大人びてしっかりしているけれども、でもやっぱり、美麗はまだ16の女の子だった。


「・・・ん〜、まぁそう言うならそういう事にしといたってもええけどぉ。
でも、勝っちゃんやからええけど、他の男の人には気ィつけや?」
「分かってるー。あ、あと吾朗さんも大丈夫だよ。吾朗さんはさん一筋だから。
もし浮気してたらあたしがぶっ潰してやろうと思って時々探り入れてるんだけど、ホント吃驚する位そういう事無いんだねーあの人!ふふふっ!」
「その代わり男癖・・・、じゃなくて喧嘩癖はめっちゃ悪いねんけどなぁ〜!あはははっ!」

不安定で危うい日々を必死に生き抜きながら、ひたむきに夢を追いかけている彼女の努力が、一日も早く報われるように。
他愛もない話で美麗と笑い合いながら、は心の中でそう祈った。




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後書き

24時間シンデレラ、ずっと真マコソングと思って聴いていたのですが、ちょっと朴社長の事も入ってるような気がしました。
またいつもの如く、こじつけすぎといえばそうなのですが(笑)。
何となくそう思った事もあって、私は朴社長をシンデレラのイメージで書いています。
但し、シンデレラはシンデレラでも、ブラックシンデレラですが。(←何ソレ)
健気に不遇を耐え忍ぶ清らかで無力なお姫様ではなく、野心のままにエゴイスティックに城を目指す貪欲で罪深いお姫様。でもその罪深さも含めて、哀しい女の子。そんなイメージで書いております。
そして真島の兄さんは、王子様にも魔法使いにもなれなかった、哀しい男。
・・・って、夢もへったくれもないイメージですな(笑)。