取っ組み合いもいい加減疲れてよぼよぼと茶を飲んでいると、車の止まる音が聞こえた。
「帰って来たダニ!」
「ワンワンワンワン!!!」
途端に玄関へすっ飛んで行く猫田と犬達。
「元気なジジイじゃのう。」
「頭は随分モウロクしとるみたいじゃがの。」
鴨川と浜は、そんな猫田を呆れた顔で見送る。
「ただいま戻りましたー。」
「おかえりダニよ〜!!お疲れさんダニ!」
「ワフッ!ワンワンワン!!」
沢山の荷物を抱えて戻って来たを、これでもかというほどの笑顔で迎える猫田。
犬達はの足元に纏わりついて離れない。
「ワシも荷物持つダニ。」
「じゃあ車にまだあるんで、それをお願いできますか?」
「任すダニ!!」
猫田は車に残っていた荷物全部を一度に運び込み、台所で買い出してきた物を整理しているに、にこにこと話しかける。
茶もなくなり、ヒマこいてた残り二人もふらふらと台所へ入って来た。
「随分買い込んだダニね〜。」
「今日は猫田さんの大事なお友達がいらしてるから、腕によりをかけようと思って。」
「お友達かどうかは別にして、それは楽しみじゃのう。」
「そうじゃな。日本の料理は久しぶりだ。」
「本当ですか?じゃあ張り切って作りますね!」
「ちゃん、これは?」
猫田が見つけたものは、ピンクのチューリップの花束だった。
「お花屋さんで見つけたんです。春らしくて可愛いし、居間とお客様のお部屋に飾ろうと思って。」
「それはいい考えダニ!流石女の子はいい事思いつくダニ〜。」
「「ワシらの部屋に!?」」
あまりにもラブリーなチューリップの束に、思わずうろたえる鴨川と浜。
只でさえ眼光の鋭い強面が、更に厳しさを増す。
「済みません、嫌ですよ・・・・ね?私ったら自分の好みで勝手に・・・・・」
嫌がられたと思い、しょんぼりと肩を落とす。
「ちゃん、泣くなダニ!ちゃんは悪くないダニよ!源ちゃん浜ちゃん!!ちゃんに謝るダニ!!」
「べ、別に嫌がっとるわけではないぞ!」
「そ、そうじゃ!」
「・・・・本当ですか?お嫌じゃないですか?」
「本当じゃ!チューリップ大いに結構!!」
「その通りじゃ!春らしくて良いではないか!!」
「良かった!」
花が咲いたような笑顔を向ける。
鴨川と浜は、複雑な気持ちながらもチューリップを可愛い可愛いと褒める。
どうやら徐々に『孫マジック』にかかってきているらしい。
「良かったダニな二人とも。ピンクのチューリップ、よく似合ってるダニよ、プププ。」
「「やっかましい!」」
からかう猫田に真っ赤な顔で怒鳴り散らす二人。
「私もう一度出掛けてきますね。」
「どこさ行くダニ?」
「山菜を採りに。山の幸を皆さんに味わっていただきたいので。」
「ほう、山の幸か。ええのう。」
「あれは美味いな。」
「一人で行くのは危険ダニ。もしかしたら冬眠から覚めた熊さウロウロしてるかも知らんダニ。皆で一緒に行くダニよ。」
「そうじゃな、行くとするか。」
「山の空気も味わいたいしの。」
「じゃあ皆で一緒に行きましょう!」
「ワンワンワンワン!!!!」
かくして、老人3人にとハチ、というパーティーが結成され、山へと繰り出すことになった。
「皆、鈴は装着したダニか?それでは行くダニ!」
「猫、これは食べられるやつか?」
「大丈夫ダニ。」
「さん、これは何じゃ?」
「それはフキノトウですね。おいしいですよー。」
「そうか。ならもう少し採るとするかの。」
山の斜面を這いつくばるようにのろのろと歩く。
全員山菜採集にすっかり夢中になっている。
ハチはそこら中の匂いを嗅ぎ、前足で土を掘って遊んでいる。
「なかなか楽しいもんじゃの。」
「ふむ。なかなかオツじゃな。」
「実はこれ、結構人気あるんです。自分で採った山菜を食べたりお土産に持って帰りたいというお客様が結構いらっしゃるんです。」
「そうじゃったのか。まあ気持ちは分かるがな。」
「ここら一帯は山の幸の宝庫ダニ。うちさ泊りに来る客にオプションで案内しとるダニよ。」
「イッチョ前に横文字使いおって。意味分かっとるんか?」
「なんか言ったダニか浜ちゃん?」
「い、いいや、何も言っとらん。」
ワイワイと賑やかな一行。
いい加減目も腰も痛くなってきたところで、山菜ツアーは終了となった。
道中熊も出ず、一行は無事にペンションへと戻って来た。
その夜の夕食は大変美味だった。
先程採った山菜が、天ぷらやおひたし、煮物や汁物に変身し、老人3人を唸らせた。
「うぅむ、これは美味い!」
「ふむ、これはどこででも食えるもんじゃないぞ。」
「ちゃんの料理はやっぱり最高ダニ!」
「そうですか?ありがとうございますー!でもおいしいのは食材がいいからですよ!!」
「確かに食材もええが、お前さんの腕あってのもんじゃろ。」
「うむ。若い娘にしてはええ腕前じゃ。」
「お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいです!」
「お世辞じゃないダニよ、本当のことダニ。」
従業員だからと遠慮するを半ば無理矢理同席させて、4人で食卓を囲む。
食事が済んだ後も、楽しく和やかな雰囲気にその場を離れがたく、4人はずっと居間に居た。
3人の昔話に花が咲き、何本もの徳利が空いた。
賑やかなプチ宴会が幕を閉じたのは、夜も随分更けてからだった。
まだ続くぞ。