「んっ・・・・・!」
「ああ、・・・・・・・」
割り開いた太腿の内側に口付けて、ユダは恍惚とした眼差しでの秘所を見つめた。
柔らかそうな茂みの奥に、紅く色付いた花弁が見える。
それはまるで広大で果てしない砂漠に咲く一輪の花、その中心から薄らと湧き出ている蜜は、飢え乾いた旅人を癒す生命の水のようで、ユダを惹き付けてやまなかった。
「あっ、あぁん・・・・・・・!」
恭しく口付けてそれを啜れば、猛烈な渇きで焼けるようだった喉が、たちまち潤っていく。
女の蜜とは何と甘く、そして芳しいものだろうか。
ユダは初めて味わうそれを、夢中で何度も啜った。
「はっ・・・、あんッ!あぁ・・・・・、駄目・・・・・・!」
「・・・・・・!」
「きゃあぅッ!!」
身を捩るの姿に堪らなくなって、ふと目についた紅い突起を舐め上げた時だった。
の声が明らかに変わった。
ビクンと身体を震わせて、綺麗に舐め取った筈の蜜をまた滴らせて。
「此処か・・・・・?」
「あっ、あぁっ、やぁッ・・・・!」
反射的に拒もうとするの手を押し退けて、ユダは其処を執拗に攻め立てた。
舌先で転がしていくにつれて、その小さな突起は、次第に弾けそうに膨れ上がっていく。
「ひっ、あぁぁッッ・・・・・・!!!」
やがては小刻みに身体を震わせ、張り詰めていた四肢をぐったりと脱力させた。
「・・・・・・・?」
「ん・・・・・・ぅ・・・・・・」
名前を呼んでも返事をしないの様子を、ユダは暫し心配そうに伺った。
瞼を閉じたまま、ぐったりと動かないを見ていると、何か不手際をしてしまったのだろうか、苦痛を与えてしまったのだろうか、そんな心配ばかりが頭をよぎる。
だが、それは無知故の杞憂であった。
「・・・・・・・ユ・・・・・ダ・・・・・・・」
不意にゆっくりと目を開いたの表情は、およそ苦悶の色など浮かべてはいなかったからだ。
潤んだ瞳をうっとりと瞬かせ、扇情的に小さく開かれた唇から、甘い吐息を洩らしている。
そこでようやく、ユダは悟った。
男として、に与える事が出来たのだ、と。
愛される悦びを、快楽を、その身に刻む事が出来たのだ、と。
「ああ・・・・・・、・・・・・!」
男としての自信と本能、そしてへの激しい愛が、身体中で騒いでいる。
が欲しい、と。
ユダはもうこれ以上、一分一秒たりとも待てなかった。
力の抜けたに覆い被さり、その両脚の間に身体を割り込ませながら、ユダは己でも信じられない程の興奮を感じていた。
待ちに待った瞬間が、今訪れようとしているのだ。無理はない。
「・・・・、・・・・・・・」
「ああ・・・・、ユダ・・・・・・・」
早々と先走った欲望に濡れた己の先端を、迎え入れる体勢を整えた花弁に押し当てると、はこれから起こる事を察して、切なげな声を上げた。
もうそれだけで達してしまいそうになる。
こみ上げてくる吐精感を必死で堪えて、ユダは腰を沈めた。
「貴女はこれで・・・・・・、俺のものになる・・・・・・・・・・!」
「あっ、あぁぁッッ・・・・・!!!」
女の身体というのは、何と温かいのだろう。何と心地良い場所なのだろう。
の嬌声に聞き惚れながら、ユダはそう感じていた。
包み込まれた楔から、その熱があっという間に体中に回ってしまいそうだ。
これが、夢にまで見た瞬間だった。
あの日の無邪気な二人に別れを告げる瞬間。
そして、己の愛の成就の瞬間だった。
「はッ、はッ、はッ・・・・・!」
「あっ、あぁッ!んっ・・・・、はぁッん・・・・!」
身体を揺さぶるユダの、何と逞しい事か。
理性が吹き飛ぶ程の力で翻弄されながら、は今、確かにその快楽に酔っていた。
優しい愛撫も、蕩けるような接吻もない、どちらかというと力任せの激しい交合だったが、
それが却って良かった。何も考えないで済むのだから。
それに、そんな性技がある事自体、は知らなかったのだ。
夫以外の男性を知らず、かつその夫との閨事すら義務的なもの、およそ愛など感じられるようなものでは無かったのだから。
「、・・・・・!」
「あ、ふッ・・・・、う、んッ・・・!!」
噛み付くようなユダの口付けに応えながら、は涙を流した。
歓喜の涙かも知れなかったし、後悔の涙かも知れなかった。
ただ、誰かに許して欲しかった。
女としての幸福を求めてしまった己を。
「ああッ!ユダ・・・・、ユダ・・・・・!お願い・・・・・!」
涙を流して懇願するは、とても美しかった。
一体何を願っているのか、そんな事を考える余裕は無かった。
ユダはただその美しさに見惚れ、身体を駆け巡る熱いざわめきに突き動かされるようにして、より一層深くを貫いた。
「んぁぁッッ!!」
白い喉を曝け出して喘ぐの両脚を肩に掛け、ユダは全身全霊の力と想いを込めて、その体内に己を深く穿った。
何度も、何度も。
「ひっ、あぁッ・・・・、駄・・・・目・・・ああッ!!」
卑猥な音との嬌声が、尽きる事など無いかのような底知れぬ力を与えてくれる。
己の体内だけでは消化しきれず、もう爆発してしまいそうだ。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
そうだ、今更何を願われるまでもない。
の望むものなら何でも与えてやると、最初からそのつもりだったのだ。
ドレスも宝石も、この心も身体も命さえも。
「・・・・・・、貴女は・・・・・」
「あぁッ・・・・、ユダ・・・・ぁ・・・・!」
「貴女は・・・・・・・!」
「あぐっ!うぅッ!!」
だからも、全てを与えて欲しい。
その優しい微笑みも、気高い心も、美しい身体も。
自身を全て。
「貴女は俺のものだ・・・・・・・・!!!」
「あああーーーッッ!!!」
吠えるようにそう叫ぶと、ユダはもう限界にまで昂っていた欲望を、の中で爆発させた。
止めてしまうのが惜しくて、なおも律動を続けながら。
目も眩むような快感と興奮の中で、ユダは確信していた。
これが真の始まりなのだ、己との真の歴史が、今これから始まるのだ、と。
全身を、今まで感じた事のない疲労感が包んでいる。
起き上がって身を清めにいく事すらも面倒だ。
だが、それは決して不快なものではなく、むしろ心地良いとさえ感じるものだった。
「・・・・・・・・、貴女はとても素晴らしかった。」
己の腕の中のに、ユダは艶然と微笑みかけた。
「・・・・・嫌だわ、恥ずかしい・・・・・・。」
「そんな事。今更何を恥ずかしがる必要がある?それに俺は、本当の事を言っただけだ。」
恥ずかしそうに顔を伏せるは、まるで少女のようだった。
幼い頃は、六歳という年の差を随分恨みもしたが、今となってはこの通り、取るに足りない問題だ。
追い越せなかった背丈は、とうにを遥か下に見下ろせる程に伸び、その身体を征服出来る程力もつけた。
そう、もうは姉ではない。これでようやく、姉ではなくなったのだ。
「、明日からは俺の部屋で暮らして欲しい。」
「え?」
「勿論、この部屋はこのまま貴女の部屋にしておく。好きに使ってくれて構わない。だが・・・・、眠る時は俺の部屋で。貴女の居ない夜など、耐えられそうもない。」
「まあ・・・・・・・」
はにかんだ笑顔を浮かべるにそっと口付けて、ユダは満足げに微笑んだ。
晴れて身も心も結ばれた今、距離を置く事に意味などないではないか。
これからは朝も昼も夜も、いついつまでも共に。
それこそが、愛し合うという事なのだから。
「それに、夫婦が同じベッドで眠るのは当然の事だろう?」
「ユダ・・・・・・・、それは・・・・・・」
「・・・・・どうした?何か問題でもあるのか?」
だが、『夫婦』という単語を出した途端、は困惑したような表情を浮かべた。
まさか、この期に及んで結婚を嫌だと思っているのではないだろうか。
天にも昇る夢心地に水を差された気がして、ユダは些か憮然とそう訊き返した。
「違うの・・・・・、ただ・・・・・・」
「ただ?」
「ただ・・・・・、何だか不安で・・・・・・。」
「何故?俺はそんなに頼りなく見えるか?」
「そんな事は無いわ!そうじゃなくて、私の気持ちがまだついていけていないの・・・・、まだそんなに急には・・・・・・」
の案じている事を何となく悟ったユダは、安堵して笑った。
「ああ、それなら心配は要らない。何も、今日明日中に式を挙げようというのではないのだ。
もう少し、ここの暮らしと俺に慣れる事が先決だ。それに俺は、貴女の気持ちを最大限に尊重する。」
「・・・・・・・有難う。でも・・・・・、何だか変ね。」
「何が?」
「だって、私は小さい頃の貴方を知っているのに、『慣れる』なんて変な言い回しだと思って。」
「フッ、そうかも知れん。だが、こうして身体を重ねたのは、今夜が初めてだ。貴女が俺を『男』として見てくれたのも。」
「あ・・・・・・」
今更ながらに置かれている状況を思い出して、微かに頬を染めるの仕草が、胸締め付けられる程愛しかった。
一体どうすれば、このもどかしい程の想いをコントロールする事が出来るのだろう。
ユダは欲望に濡れた瞳でを見つめると、低く囁いた。
「・・・・・・だが、俺と貴女はもう結ばれた。もう決して、二度と離れる事はない。」
「ユ・・・・ダ・・・・・・」
「正式な婚儀を結んでいなくとも、貴女は俺の妻だ。俺はそう思っている・・・・・・」
「あ・・・・・・・・・」
「愛している、・・・・・・・・」
先程果てたばかりだというのに、早くも再び力を漲らせた己自身が、を欲して昂っている。
それに逆らう気など毛頭無い。それ程に、との情交は素晴らしいものだった。
ユダは今、男が何故女を求めるのか、ようやく分かった気がしていた。
だがユダは、女ならば誰でも良いというような、飢えに支配された愚かな男ではなかった。
飢えているのはただ一つ、だけだ。
ユダの渇きを癒せるのは、の心と身体だけだった。
己の欲望と心に忠実に動いたユダは、再びを組み敷くと、またあの目も眩むような一時を求めて、ベッドに沈んでいった。
この最高の夜が明けない事を願いながら。