「私は・・・・・・・、私は、救いの女神などではありません・・・・・・・」
「・・・・・・・何?」
「私には、奇跡を起こす力などありません・・・・・・・。」
信じられない。嘘に違いない。
は逃げ出したい一心で、嘘をついているに違いない。
「・・・・・・言い逃れのつもりなら無駄な事だぞ。」
「言い逃れではありません。貴方の師父様がまだ蘇らないのがその何よりの証、そう言えば信じて頂けますか・・・・・・?」
「・・・・・・・・・」
そう思い込みたかったが、サウザーには自分を欺き通す事は出来なかった。
死んだ人間が生き返る事などありはしない、神や奇跡などこの世に存在しない、そんな事は最初から分かっていた事だった。
そして事実、の言う通り、師・オウガイはまだ目覚めていない。
まだ?
いや、これからも。もう二度と。
オウガイの優しい温もりに再び包まれる事は決してないと、最初から分かっていた筈ではないか。
彼の命を、この手で絶ってしまった時から。
「・・・・・・・・ならば、お前は何者だ?」
「私は只の愚かな女です、女神でも聖人君子でもない。それが『ジプシー・クイーン』の正体です・・・・・・。」
「ジプシー・クイーンの噂は、全て事実無根のデマだと言うのか?」
ただ、微かな期待を抱いてしまった。
その微かな期待に、いつしか本気で縋り付きかけていた。
如何にまことしやかな噂だったとはいえ、馬鹿だった、甘かった、愚かだった。
民衆を恐怖に震わせる『聖帝』は、鋼の身体と心を持つ男。
聖帝は何事にも動じず、己以外の何も信じない。
その筈だったのに、そうでなければならないのに、『聖帝』の鋼の心の奥底で未だ密かに生き続けている一人の少年が、こんなお伽話以下の馬鹿げたデマを信じてしまった。
騙したが憎い。
しかしそれ以上に、まんまと騙された自分の愚かさが許せなかった。
こんな素性の知れない卑しい女に、うかつにも心の隙を見せてしまった事が、
ただひたすらに温もりを求めていた脆弱な幼い頃の自分を、他人に垣間見せてしまった事が、
その事実が、サウザーにとっては何より耐え難い屈辱だった。
「・・・・・俺はまんまとそのデマに踊らされ、何処の馬の骨とも知れぬ女を、7日間も客扱いしてもてなしてやっていたという訳か。」
許せない。
甘かった自分も。
そして、これ程の屈辱を味わう原因となったこのも。
「あっ・・・・・!」
サウザーは突如、の頬を張り飛ばした。
はそれをまともに受けて地面に倒れ込んだが、当然、サウザーの気がこれだけで済む筈はなかった。
「よくぞこの聖帝を謀ってくれた。虫も殺さぬような大人しい顔をして、とんだ女狐だ。」
「・・・・・・申し訳・・・・・ありませんでした・・・・・・・」
軽く罵ってやると、は一粒、涙を零した。
初めて見るの涙が自尊心を擽り、サウザーはほんの少しだけ冷静さを取り戻して、口元に冷ややかな笑みを湛えた。
「・・・・しおらしい顔で殊勝な台詞を散々吐いていたが、化けの皮が剥がれた今となっては、怖くて仕方がないだろう。だが、俺に泣き落としは通じんぞ。たとえどれだけ泣いて許しを乞うても、お前は今、これから死ぬ。お前の仲間達の誰よりも惨たらしく殺してくれるわ。」
がビクリと肩を震わせたのが分かった。
今、の心は、これまで感じた事のない程強い恐怖に呑まれている事だろう。
いつもおどおどと気弱なが、その恐怖に耐え切れるような神経を持ち合わせているとは、とても思えなかった。
さも命を捨てる覚悟があったかのような口ぶりだったが、いざとなれば死にたくないと泣いて縋りつくか、或いは発狂してしまうか。いずれにしても正気では居られまい。
サウザーはそう信じて疑っていなかった。
「さあ、どうした。もっと泣いてみろ。怯えろ。この聖帝に醜く切り刻まれる恐怖に狂え。そして絶望の中で、この俺の逆鱗に触れた己の愚かさを悔いて死ね。」
ところが。
「・・・・・・・」
は、サウザーの考えていたような反応を示さなかった。
その場に跪き、両手を組んで、瞳をそっと伏せたのだ。
まるで、進んで死を受け入れようとするかのように。
幾ら口先で高尚な台詞を吐いたところで、聖帝の恐怖と南斗鳳凰拳の絶大な力の前では、誰しもが恐怖心を剥き出しにして怯え、泣き叫び、己が命に醜く執着する。
生命の危機に晒された人間というのは、押し並べて酷く利己的なものだ。
ましてや、自らを救いの女神などと称して民衆を誑かしていたような性悪女なら尚の事、本性は醜く歪んでいる筈なのに。
― この女・・・・・・
ジプシー・クイーン。人々に奇跡をもたらすという救いの女神。
それが嘘で作り上げた偶像だと自ら白状しておきながら、何故はいつまでもそれを装おうとするのだろう。
幾ら逃げ切れる状況でないとはいえ、他の男達のように最期の最期まで生に執着するのではなく、何故こんなにも潔く、死を恐れずに迎えようとするのだろう。
只の女の癖に、それこそまるで聖人君子のように。
という女は結局、何者だったのだろうか?
「・・・・・・・・何故、殺さないのですか・・・・・・・?」
サウザーは、恐る恐る目を開けたの顔を、冷たく見下ろした。
「気に食わん女だ。お前は一々俺を苛立たせる。只の女の癖に、いつまで聖人ぶるつもりだ?」
「そんな・・・・・、そんなつもりは・・・・・・・」
真摯な瞳で否定するの白い肩からスリップの肩紐がずり落ちかけ、胸元が大きく開いている。
それに気付いたサウザーは、冷たい瞳での胸元を無遠慮に眺めた。
するとは、明らかに戸惑い警戒した様子で素早く肩紐を直し、手で胸元を覆い隠した。
「・・・・・・ほう、初めて生きた人間らしい表情になったな。そうしてみると、『女』に見えん事もない。」
いつも色気の欠片もない不恰好な黒いワンピースで肌を隈なく隠し、人形のように生気のない青白い顔を俯かせているには、欲情するどころか薄気味の悪ささえ感じていた。
しかし、今は違う。
白い肌と警戒心を露にしながらも、恐怖に縛られ身動きの取れない今のは、確かに生身の女の色香を醸し出していた。
「そうだ、女にはこの手が使えたのだったな。死にたがっている奇特な女ならば尚の事、一思いに殺されるより、蹂躙される苦痛を味わう方が余程辛いかも知れん。」
「っ・・・・・・・!」
「・・・・・図星、のようだな。」
「や、やめて下さい・・・・・・!」
恐怖に怯え、警戒し、そして何より、この期に及んでまだなお思う通りに屈服しない女。
目の前に迫った死を自ら進んで受け入れようとする、不届きで謎めいた女。
そんな女に耐え難い絶望と苦痛を与える最良の方法が、どうやら見つかったようだ。
「ククッ。何を今更。最初に抱いてくれと言い寄って来たのは何処の誰だ?」
今すぐ殺してやりたい程のこの屈辱と怒りで、の尊厳を突き破り、ズタズタに引き裂く。
命はその後だ。
「い、嫌・・・・・・・・、あぁっ・・・・・・・・!」
サウザーは何の躊躇いも無く、をその場に押し倒した。
「あっ、やめっ・・・・・、嫌っ・・・・・・・!」
スリップの胸元から強引に手を差し込み、サウザーはの乳房を弄った。
嫌がって身を捩るの抵抗をものともせずに、粗末なスリップの薄い生地が裂けてしまうのも構わずに。
「あぅっ・・・・・!」
先端の突起を指で摘むと、は小さいながらも鋭い嬌声を上げた。
その事が、サウザーに優越感を与えた。
今のの顔からは、もうあの小賢しい聖人ぶった表情は完全に消えている。
ここに居るのは只の女。
犯される恐怖に怯えながらも、与えられる刺激に胸の頂を固く尖らせている、只の淫らな女だ。
「聖女と言えば普通は純潔の処女と考えるところだが・・・・・、お前はどうだ?」
耳元にそう吹き込んでやりながら、サウザーはスリップの裾をもたくし上げ、ショーツの隙間から捻じ込んだ指での秘部を無遠慮に犯し始めた。
「あっ・・・・・は・・・・・・!い・・・や・・・・・・」
花芽を擦り、秘裂を割り開いて強引に中指を挿入し、中を掻き回す。
すると、がビクビクと身を震わせる。
まだ蜜の量は十分でないが、サウザーにしてみれば、自身が苦痛を感じない程度に潤ってさえいればそれで良かった。
「フン、まあ良い。試せばすぐに分かる事だ。」
「あっ!?」
サウザーはのショーツを難なく引き千切ると、両脚を抱えて大きく開き、青白い月光の下にの秘部を曝け出した。
「この身体が、女神の名を騙るに相応しい聖女のそれなのか・・・・・」
「やめ・・・・て・・・・・」
楚々とした茂みに覆われた其処が、月の清廉な光を浴びて艶かしく光っている。
「それとも、女狐らしい下衆な淫婦の身体なのか・・・・・」
「やめて下さい・・・・・・!」
は恥辱の涙と共に、恥ずかしげもなく剥き出しにされた花弁から蜜を零す。
その様子は、サウザーの劣情を煽り、征服欲を掻き立てるのに十分だった。
「試せば分かる・・・・・・、すぐにな。」
「あ・・・・・、あぁッ・・・・・・!」
サウザーは何ら躊躇う事なく、怒張した己の分身でを貫いた。
「うぅっ・・・・・、ああっ・・・・・・!」
「っ・・・・・!」
サウザーを包み込むの肉体は、成熟した女のものだった。
熱く滑った内壁は柔らかく、それでいて一分の隙もなく楔に纏わりつき、絶妙な力加減で締め付け、奥へ奥へと誘う。
サウザーはそれに確かな快感を覚えていた。
「あっ、は・・・・ぁぅっ・・・・・!」
「クク・・・・・、これは予想以上だ・・・・・」
「あ・・・ぅ・・・・・、んんっ・・・・・!」
「男を引き摺り込むようなこの魔性の身で、恥ずかしげもなく聖人君子を騙っていたとはな・・・・・!」
「あぅぅっ!!」
身じろぐの肩を押さえ込んで強く腰を打ち付けると、自身の先があっけなく最奥に到達したのが分かった。
サウザーは涙の浮かぶの瞳を覗き込みながら、冷ややかな笑みを浮かべて囁いた。
「何が奇跡だ、何が救いだ、笑わせる。」
「あぁ・・・・・・・、お許し・・・・・下さい・・・・・・・!」
はサウザーの視線から逃れるように顔を背け、声を震わせた。
しかしそれは、サウザーの良心に揺さぶりを掛けるどころか、益々加虐心を煽るだけに過ぎなかった。
「何を今更恥じて泣く事がある。開き直って淫売らしく奔放に乱れてみせろ。」
「そんな・・・・事・・・・・っ・・・・・!」
「フン、強情だな。しかし、すぐに嫌でもそうなる。頭で幾ら理性を保とうとしても、お前のこの淫乱な身体がそうさせる。」
「あっ・・・・・!?あぁっ・・・・・・!」
サウザーはの身体を抱え直し、激しい律動を始めた。
力強く体内を貫かれた衝撃に、は一瞬だけ鋭い声を上げたが、すぐに声を殺そうと固く唇を噛み締めた。
「んっ・・・・・・・!」
「声を抑えても無駄だ。」
「んぅっ・・・・・!」
「お前の此処は、『もっと強く抉って欲しい』と涎を垂らしてせがんでいるぞ?」
「はぁぅっ・・・・・!」
結合部からしとどに溢れている熱い蜜を掬い取り、それを塗すようにして花芽を擦ると、の中はより一層きつく締まった。
「今、期待に応えてやろう。そら・・・・・!」
「あぁぁっ!!」
最奥をも突き破らんばかりの勢いで突き上げると、とうとうは堪えきれずに高らかな悲鳴を上げた。
それは、が陥落した瞬間だった。
「あっ、あぁっ!う・・ぐ・・・、ひ・・・ああっ!!」
サウザーは休む事なくの内部を貫き、掻き回し続けた。
はもう声を抑える事さえ出来ず、あられもない嬌声を上げて悶え続けた。
内壁は益々熱く滑り、まるで意思を持つ生き物のようにヒクヒクと蠢き、サウザーを刺激する。
「っ・・・・・・!」
次第にその刺激に追い詰められ、余裕を失くし始めたサウザーは、苦しげに眉を寄せてひたすらにの身体を貪った。
間もなく訪れる絶頂の波に乗る事だけを考えて、ただひたすらに、利己的に。
「あぁぁっ!!ふ・・・あぅぅ・・・・・!」
「ふぅッ・・・・!」
「ああっ・・・、も・・・・、許・・・し・・・、あっ、あっ、あ・・・・っ・・・・!!」
「くっ・・・・・・・!」
そして。
「ああぁぁーーーッ・・・・・・・・!!」
ビクビクと痙攣するの身体の奥深くに、容赦なく征服の証を解き放った。
衣服を整えると、サウザーはまだ起き上がらないを冷ややかに一瞥した。
「フン、気を失ったか。」
爪先で軽く背中を蹴ってみても、は閉じた瞼を開こうとはしない。
陵辱の痕が残る肌を月光に青く染め、ぐったりと眠っているだけだ。
サウザーは、無防備に気絶しているの姿をじっと見つめた。
「・・・・・・・」
仲間は全員殺し、身体もこうして容赦なく汚してやった。
あとはこの身を引き裂いて獣の餌にしてやれば、それで全て無かった事になる。
全てを最初から無かった事にすれば、すぐに何もかも忘れる事が出来るだろう。
不覚にも馬鹿げた噂を血迷って信じてしまった事も、この忌々しい女の事も。
「・・・・・今、仲間のところへ送ってやる。」
サウザーは低く呟くと、構えた拳をに向かって振り下ろした・・・・・・。