翌朝、レイとはハントに見送られてひっそりと村を去った。
「3日かぁ。結構かかるわね。」
「そうだな。野盗でも現れてくれれば足が手に入るのだが。」
「そうね。」
今日は風が強く、砂煙がもうもうと立ち込めている。
二人はその中をただひたすら東に向かって歩いた。
天候は最悪だが、人災は最良のようだ。
太陽が真上に来ても、西へ傾いても、一向に誰とも出くわさない。
野盗などいないに越した事はないのだが、今日に限っては本当に現れない。
不謹慎と思いながらもややがっかりしながら、は疲れた足を引き摺って歩いた。
「どうした?疲れたか?」
「大した事ないわ。」
「もう少し我慢しろ。次に岩場か何かを見つけたらそこで休もう。」
「でも、ちょっとでも早く進んだ方が・・・・」
「どうせ3日はかかる旅だ。それに夜も近い。早めに休んで明日早く発つ方が得策だ。」
そう言って、レイはちらりとの足元を見た。
寝不足気味のところに殆ど休みなしの長距離移動が重なって、いい加減かなり疲労が蓄積している事を悟られているらしい。
は決まり悪そうに小さく頷いた。
それから更に進み、日もすっかり落ちた頃。
はレイに向かって歓喜の声を上げた。
「見てレイ!オアシスよ!」
「よし。今夜はここで休もう。」
レイはの後を追い、オアシスのほとりに腰を下ろした。
簡単な食事を済ませた後も、二人は未だ眠らずにいた。
あと僅かでアイリに手が届く。
そう思うと、気が昂って眠れない。
そんなレイの気持ちを察してか、が僅かに微笑んで呟いた。
「もう少しね。」
焚火が頬を薔薇色に染めている。
レイはのその横顔を見つめて言った。
「お前が上手く聞き出してくれたお陰で良い情報が手に入った。」
「よしてよ。たまたま上手くいっただけだわ。」
は横顔だけで照れ笑いした。
「あの人が内心自分を悔いていたから聞き出せたのよ。そうでなかったら無理だったわ。」
「フン、その時は俺が力ずくでも吐かせていたがな。あの男は命拾いをした。」
「本当。実は私、あなたが彼を殺すんじゃないかって内心ヒヤヒヤしてたのよ。」
は軽い口調で茶化した。
しかし次の瞬間、その表情に少し翳りが出る。
「・・・・本当に、死なずに済んで良かった。だって、絶望したまま死ぬなんてあまりにも報われないじゃない。」
「・・・」
「力がないのは哀しいわ。」
は寂しげな声で呟いた。
不本意な環境を甘んじて受け入れ、生き延びてきた事に共通項を見出しているのだろうか。
レイは出会った頃のを思い出していた。
「レイ?どうしたの?」
の声でレイは我に返り、慌てて話を逸らした。
「何にせよ、まだアイリの居場所がはっきりと分かった訳じゃない。ギルドの本部へ乗り込まん事にはな。」
「そうね。でももうすぐよ。私達は確実にアイリさんに近付いてる。」
はまるで励ますようにそう言って、レイの肩を軽く叩いた。
「折角だから、水でも浴びてくるわ。」
「ああ。」
レイはの後姿を見送って溜息をついた。
そしてそのまましばし何事かを考えると、の後を追った。
冷たい水に身体を浸していると、背後で水音が聞こえた。
「あら、レイも浴びるの?」
「折角だからな。」
そう言って、レイはの側までやって来た。
「冷たくて気持ち良いでしょ?」
「ああ。」
レイはの身体を引き寄せた。
肌に張り付く濡れ髪を掻き分けてやると、夜風が直に当たって肌寒いのか、が少しだけ肩を震わせた。
レイはの顎をもたげて、その唇に口付けを落とした。
唇を離すと、快活な瞳はレイをまっすぐに射抜く。
口元に誘うような笑みを浮かべて、月の光で蒼く染まるまばゆい半裸を惜しげもなく晒している。
そう。
最初はこの魅力的な身体と、死んでいない瞳が気に入っただけだった。
男の性に理解のある態度も好ましかった。
アイリを捜す手伝いを望むよりも、その身体を愉しみたい気持ちの方が大きかった。
しかし今は・・・・
レイは再びの唇を捕らえた。
今度は深く強く吸い付いて離さない。
「んっ・・・ふ・・・」
苦しげな吐息が漏れ始めたところで、レイは唇をの胸元に滑らせた。
愛撫を受け入れて仰け反る胸が、月の光で蒼く染められる。
レイはの背に腕を回して支えると、胸の頂を口に含んだ。
「はっ・・・あ・・・」
先端を舌で転がされ、甘噛みされ、次第に身体の奥に火が灯り始める。
は水の中に倒れこまないように、レイの身体にしっかりとしがみついた。
熱くて逞しいこの腕に抱かれるのは心地良い。
今まで星の数程の男に抱かれたが、快感を感じたのはレイだけだ。
男に抱かれる女の悦びを初めて知った気がする。
レイの手がの内股を弄り始めた。
茂みを掻き分け、その奥でひっそりと息づく芽を揉み解す。
「はぅっ・・・ん・・・あっ・・・」
の声が次第に甘くなり、震える腰はレイの手の動きに合わせて軽く揺れる。
レイは更に手を伸ばし、花弁の中心を弄った。
冷涼な水の感触とは別の、とろりとした熱い液体を指先に感じ、レイはその中に指を差し入れた。
「んっ!」
途端にの肩がびくりと震える。
拒む素振りは全くなく、逆に指がより奥まで届くよう、両脚を開いて迎え入れている。
身を任せて腕の中で喘ぐの顔を、レイはじっと見つめた。
自分の旅は、アイリを取り戻せば終わる。
しかしその時、はどうするのだろう?
全てを奪われたには何もない。
待つ者も、帰る場所も、何も。
は芯のしっかりした女だ。
きっと一人でも生きていける。
しかし、またゲインのような下衆な男に玩具にされるかもしれないと思うと、訳の分からない怒りがこみ上げてくる。
レイは心の何処かで、を手放したくない気持ちが芽生えている事に気付いていた。
― 惚れたのか?
そう心の中で自問自答する。
しかし、今はまだ何の結論も出せない。
レイはもやもやとする気持ちを忘れてしまおうと、の身体に夢中になっていった。
「あぁっ・・・!」
が胸の中で切ない声を上げた。
熱い花弁は、猛ったレイの分身を根元まで咥え込んでいる。
抱きかかえられているだけでは心許ないのか、その両脚はレイの腰にしっかりと絡みついている。
レイはそのままの状態で水の中を歩き、オアシスのほとりまで移動した。
柔らかい草が生える地面にの上半身を預けると、絡み付いていた両脚を押し広げて、ひくひくと蠢く花弁を力強く突き上げた。
「あぁぁっ!!」
は地面の草を握り締めて、強い快感に耐えた。
レイは何かに追い立てられるように、性急に自分を貫いている。
久しぶりの情交に夢中になっているのだろうか。
激しい快感に呑まれながらも、は自分を貪るレイの姿を見つめた。
もうすぐアイリは見つかるだろう。
最悪の事態も有り得るが、そんな事はあって欲しくない。
無事にレイの元に戻って欲しい。
しかしそうなった時、自分はどうすれば良いのだろう?
自分とレイを繋ぐものは、行方知れずのアイリだけだ。
彼女が見つかれば、レイとの繋がりは消えてしまう。
彼女を取り戻した後、レイは自分に手を差し伸べるだろうか?
それとも・・・・。
いや、今は何も考えるまい。
今レイは自分の中にいる。それだけを感じよう。
は固く瞳を閉じて、レイの作り出す快感に身を委ねた。
脳裏をよぎる一抹の不安を忘れる為、自らも腰を振ってより強い衝撃を受ける。
甘い悲鳴がレイを擽り、更に突き上げを激しくさせる。
「んあっ、はっ、あぅっ!」
「ふっ・・・、くっ・・・・!」
「ひッ、あ、あぁぁーーーッ!!」
子宮を突き破られそうな程一際激しく貫かれた後、レイがの胸に身体を沈めた。
熱い迸りが流れ込んでくるのを感じながら、の腕は無意識のうちにレイの身体を抱き締めていた。
まるで秘めた心の内を代弁するように。