About Chibi〜発病その2〜 ちび がんばれ!!
 


2002年に変わり、お正月が過ぎてもちびはもとの元気なちびに戻らなかった。
といっても、決して一目で具合が悪そうでもなく、ごはんも少しずつではあるが自分で食べている。
放鳥は控えていたけれど、ケージの中でさえも遊ぶ姿が見られなくなった。いつもブランコの上で羽繕いばかりしている。
何かおかしい・・・。
また病院へ連れて行く。

「先生、なんだか元気がないんですけど・・・。それに以前ほどごはんも食べていないようです。」
「・・・そう・・・、一度入院してもらって強制給餌をしてみますか?そうしたら元気になってくれると思うんだけど・・・」

どうしよう・・・。でも元気になってくれるんなら少しくらいの我慢させても入院させてみようかな・・・。
結局私はちびを病院へ再び預けることにした。
朝一番にちびを病院へ入院させて、そのまま仕事へ。
何かあったときの連絡先として病院へ番号を伝えてあった携帯電話を気にしながら仕事をし、やっと定時近くになった。
すると勢いよく私の携帯電話が鳴る。 なに・・・?
でてみるとやはり先生から。
「今朝から強制給餌を始めて、最初は調子よくいっていたんですが、先ほどから急に大量に下血し始めました。止血剤の注射をうって緊急処置をしています。が状態は極めて危険です。ごめんなさい。」
「これからちびに逢いに伺ってもいいですか?」
「どうぞ、何時でもいいですから来てあげてください。」

頭の中が真っ白になった。どうしよう・・・どうしよう・・・ちびが死んじゃう・・・。
私は半べそをかきながら、慌てていったん家に戻り、家にいる子たちの世話を簡単に済ませて病院へ駆けつけた。
待合室で待っている間、入院している他の子たちのさえずりが聞こえてくる。あの声がちびだったらいいのに・・・。
しばらくして診察室へ呼ばれた。おそるおそる入ってみるとプラケースの中に下半身が血まみれになったちびが弱々しく動いていた。そんな状態なのにプラケースに備え付けられているペットヒーターをよじ登り「出して、出して」と訴えている。

「先ほどお電話したときは正直いってかなりの出血があったので危なかったんですが、今は少し落ち着いてきました。まだ安定しているわけではないのでこのまま入院してもらいます。」
「先生、何がどうなったんでしょうか。」
「実はまた総排泄腔内の近くに水腫ができています。強制給餌をしてたくさん糞を出すときにその水腫から出血したんだと思います。ですから、もう強制給餌は中止しましょう。今夜は点滴だけはさせてもらいますね。」

命は助かったものの最終的に強制給餌をしていただく判断を下した私は心の中でちびに謝り続けた。
ごめんね、ちび。恐くて辛い思いをさせたね・・・。

それから毎日ちびの面会に病院へ通った。日に日にちびは動きが活発になっていった。
4〜5日経った頃ようやく先生がおっしゃった。
「もう明日くらいには退院できますよ。」
そして次のようなことも付け加えられた。
「ちびちゃんね、近くに人がいると割りとおとなしくしてくれてるんだけど、誰もいなくなっちゃうと不安になるのかなぁ、ケースの中で大暴れしてるみたいで、朝に様子を見る頃にはもうご飯入れもひっくりかえってるし、下に敷いてるシートもはがしちゃって・・・。これくらい元気があれば・・・ネ。」と・・・。
何はともあれ、よかったー。やっと家に連れて帰れる。ちびよくがんばってくれたね。
翌朝ちびを迎え入れるためにハンドメイドで“ペットヒーター付プラケース”を製作した。といっても普通のプラケースの上部側面にペットヒーターのコードが通るくらいの穴を半田ゴテで開け、ヒーターを内部に設置してもきっちりケースの蓋ができるようにしただけのもの。プラケース嫌いのちびにはストレスをかけさせることになるだろうけれど今は真冬。慣れてもらわなくちゃ。
そしてちびが帰ってきた。
やはりプラケースには抵抗したが心を鬼にして冬を過ごしてもらうことにした。

その日から毎週土曜日はちびの通院日となった。
糞にはときどき出血がみられるし、決して食欲も旺盛ではない。
先生に1週間のちびの様子をお話し、必要なときには点滴をしていただいたりした。点滴とは栄養液(と思う)が入っている注射を両方の太ももにするのだ。私は一度そのちびへの点滴のお手伝いをしたことがあった。先生がしっかりとちびを保定し、足を少しひっぱり気味にのばして太ももへ注入。その足を少しひっぱる工程を私がお手伝いした。注射器の針が太ももに刺さったとたん、ちびは大きく鳴いた。悲鳴に近いような、今まで私が聞いたこともないような絶叫。
ちび、痛いんだね・・・。ごめんね・・・。でもちびが今食べているご飯の量じゃ栄養がたりないんだよ・・・。ごめんね・・・。
そして家では朝に晩に私が“フォーミュラーAA・ビタミンK(止血作用があるため)・食欲増進剤”をお湯でペースト状に混ぜて注射器のポンプで嘴からの強制給餌。
嫌がるのを無理矢理に口のなかに混合フォーミュラーAAをふくませる。でもすぐに吐き出してしまってどれだけ喉を通っていたんだか・・・。私もちびもフォーミュラーまみれになりながら・・・。
そんな日々が春先まで続いた。正直なところ私はちびとは春頃にはお別れしなければいけないんじゃないか、と覚悟を決めていたところもあった。しかし、嬉しいことにそんな予想をちびは危なかしげながらも見事に裏切ってくれた。

・・・なのにまだ神様は許してくれなかった。
春になった頃、ちびの糞が多尿便になった。それもかなりの水分量なのでプラケースに敷いてある新聞紙が5〜6時間もすると全体がぐっしょりと濡れてしまい衛生的にもかなり悪いし、ちびも居心地が悪そう。何か方法はないものかとネットのペットシーツ専門店でインコにもつかえるものがないかと探し、薄手で小さめのシーツを購入した。まとめ買いをしたので、ちびがいなくなった今でも200枚以上は残っている。
病院で検査をしていただくと、
「腎臓が悪いです。尿の中に円柱という結晶が下りてます。今まで給餌していたフォーミュラーAAは腎臓病食としては適さないので何か他のものを・・・。確かちびちゃんはシードしか食べない子だったんだよね。じゃ、ペレットの腎臓病食用もダメかぁ・・・。何か方法がないか調べてくるわ。」
と席を立たれ、すぐさま獣医学書のような難しい本をもってこられその場で調べてくださった。
「ちびちゃん蒸したサツマイモとかは食べてくれないかしら?もし自分で食べてくれるようであればシードの補助食のような形ででも補給してあげてください。だめなようならフォーミュラーに変わって蒸したサツマイモを今までのようにペースト状にして給餌してあげて・・・。」
と先生はその記述が書かれてある難しい獣医学書のコピーまでくださった。

また新たな試練が始まろうとしていた。


                                                                  

 
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