特別寄稿
★認知運動療法とは?
イタリアの神経科医カルロ・ペルフェッティ教授が考案した最近の認知理論に基づいた新しいリハビリテーションです。認知運動療法については、書店でいくつか本が出されていますので、詳しく知りたい方はそちらを読まれることをお勧めしますが、なにせ専門職の人を対象に書かれたものがほとんどなので一般の方には難解で理解しにくいところもあると思います。なので、ここで一般の方にもわかりやすい内容で私なりの文章で説明していきたいと思います。
認知運動療法は、最近ではテレビや新聞などで紹介されることも多くなり、患者の脳を変える新しいリハビリテーションとして注目されつつあります。まだ全国の病院でも認知運動療法を行っているところは少ないのが現状ですが、少しずつ広まってきており、近い将来はもっと増えてくると思われます。
認知運動療法の特徴は、
@近年の様々な研究により、こどもの発達に対する考えや、人間の行動に対する考えは変わってきており、それに合うようにリハビリ方法も進化する必要がある。
Aリハビリが、今までできなかった(失われた)動作や行動を獲得させるものである限り、どんな病気や障害にも同じ考えで適応できるものであるべき⇒運動の学習
B認知運動療法は、今まで考えてこられなかった患者中心のリハビリ方法である
以上3つについて説明していきたいと思います。
@最近の考えに基づいたリハビリ:
最近の脳の研究や、人間の運動・行動についての研究は、常に進歩しており、いろいろなことがわかってきています。それによって今まで真実だと思われてきたことが、今では間違っているとされることもたくさん出てきています。そのひとつが、こどもの発達についてです。つい10年前くらいまでは、発達とは反射の統合であると考えられてきました。(現在でも医学の世界ではこの考えはなかなか変わりませんが・・)しかし、発達心理学などこどもの発達を研究する分野では、この考えは否定されつつあります。つまり、こどもは生まれたときは意志をもたない何もできない存在であり、生まれつき備わっている原始反射といういくつかの限られた運動しかできないとされてきました。原始反射というのは、外からある刺激があって反応し、はじめて動くことができるものです。よってそこに動く意志は存在しないものとされてきました。そしてそのような意志をもたない反応を繰り返すことにより、いろいろなことを学び、脳の発達によって徐々に自分の意志どおりに動くことができるようになっていくと考えられていました。
しかし、最近の研究によってこどもは、生まれたときから意志をもった存在であり、脳は未熟ながらも周りの環境をしっかりと把握し、動いていることがわかっています。少なからず生きていくために必要最低限の反射というのは存在するとは思いますが、発達は脳の発達によって原始反射が統合されていくという概念自体が否定されつつあるのです。そのような証拠(研究結果)はいくつも出されています。
それならば、こどもの発達障害の治療法も変わるべきなのではないでしょうか?今、世間で行われているリハビリ方法は、ほとんどがこの反射の統合理論が一般的であった時代に考えられた治療法です。科学が常に進歩している現在、治療法も進歩していくべきなのではないでしょうか?