発作が起こると・・・

 喘息の大発作を繰り返し、全身性のステロイド注射を打ち続けた。
 3月中頃に発作が収束し、ステロイド注射も離脱することが出来て、ほっとする。
 「これで一安心・・・」
 そうではなかった。
 
 ゆーさくが大発作で受けたダメージはとても大きかった。
 完全にもとの状態に戻るには時間を要することになる。

 ・消化器系。
 発作はとにかく咳き続ける。
 本人が咳を止めようにも止まらないのである。
 よって、2歳のゆーさくのお腹は、ボディービルダーのように腹筋で6つに割れている。
 それだけ腹筋を使い咳き続けるということである。

 また、ゆーさくは生まれつきの経管栄養。
 長年の経管栄養に頼っている人によっては、胃酸過多などの関係で、吐きやすくなる(胃食道逆流症)。
 ゆーさくも、胃食道逆流症の気はあり、早い段階で胃酸を押さえる胃薬は飲み続けている。
 また、流動食注入もゆっくり時間をかけなければいけない。

 そこへ、喘息発作の咳による腹圧や体の異常を訴える筋緊張がゆーさくの胃を圧迫する。
 喘息の発作の繰り返し、さらにはステロイド注射後の回復期(後述)において、ゆーさくはいつも大量に流動食を
吐きまくっていた。
 元々超低出生体重時で生まれた子供は小さく育つらしいのだけど、ゆーさくは育つも何も体重が一向に増えなかった。
 
 また、嘔吐したものを誤嚥してしまう。
 誤嚥したものは気管切開の部分からすぐに吸引することができるので、急性の誤嚥性肺炎を起こすようなことはなかった。
 しかし誤嚥がさらなる咳を誘発する。
 発作→嘔吐→体力低下&誤嚥→新たな発作という悪循環にはまっていた。


 ・筋緊張
 ステロイド注射を終えるくらいに、いつも起こる現象。
 ゆーさくの筋緊張がとにかく強くなる。
 ステロイドは副作用で性格が荒っぽくなってしまう傾向があると主治医は言う。
 ゆーさくの性格の荒っぽさは、筋緊張になって現れるようである。

 寝てるときはそうでもないのだが、起きてしまうと筋緊張。
 伸展型の筋緊張で、背中を弓なりにして体をそらす。
 背中の腰の辺りを支点に、片手でゆーさくの体を持ち上げると、やじろべぇのように持ち上がりそうだった。
 そしてゆーさくは頻脈で大汗をかく。
 激しいときは、目も上転し、白目をむいている。
 その状態が一日、2週間くらい続くのである。
 
 リハビリで注視や追視ができるようになり、首がしっかりしてきた・・・そんなことはあっという間にできなくなる。
 筋緊張のコントロールはリハビリの基本中の基本であった。
 それすらできなくなり、ものすごい筋緊張。
 今までリハビリで積み重ねてきたものが一気に崩れてしまったよう・・・。
 命は問題なかったとはいえ、これからまた一からやりなおしか・・・絶望感を感じた。

 さらに、小児科の先生によっては、極度の筋緊張で体をワナワナ震わせてる様子を「痙攣かもしれない」という先生もいた。
 ゆーさくにはてんかんの疑いがあり、目の上転があって白目を向けばなおさらかもしれない。
 しかも、てんかんがどうかを判断する脳波検査が、ゆーさくはアテにならなくて、てんかんがあるのかないのか、あった場合どんなてんかんをもっているのか、判別できない状態である。
 
 ゆーさくの脳波の検査はいつもてんかん特有の所見は見つからない。
 しかし、脳波が全般的に正常な人とは違い、波が揺れがなくなだらかなのだそうだ。
 それが何を意味するのかは、なんともいえないが、異常といえば異常です、とのこと。。
 よって、検査に出ないだけでてんかんはありうる・・・よって、てんかんの薬は飲んでいるのである。
 (明らかなてんかん発作はないので、たいしたことではないけれど)
 ゆーさくのてんかんに対しては、発作を見て、対処するというスタンスをとっている。
 
 よって、酷い筋緊張とてんかん発作との判別が難しく、小児科医の中でも意見が分かれる事態を招くのであった。
 私的には、主治医の判断に任せたいのだけど、主治医はそんな酷いてんかんではない、という雰囲気。
 主治医がそうなので、私もなるべく筋緊張と見てるようにはしていた。
 結局、ステロイド注射後の異常が収束するころ、てんかん騒動も収束したのであった。

  
 ・呼吸系。
 喘息の発作は、気管支の炎症が絡んでくる。
 喘息発作が収まると、気管支の炎症が治まる、というわけではないとのこと。
 一度喘息発作を起こすと気管支の炎症が酷くなり、発作は収まったとしても、新たな喘息発作を起こす因子が増えることになる。
 
 ゆーさくの喘息の大発作の繰り返し。
 元々ゆーさくは未熟児慢性肺疾患で(病気・未熟児に関すること参照未熟児慢性肺疾患)により、気管支の先の方はもともと慢性的に炎症を抱えている。
 そもそもその未熟児慢性肺疾患が、ゆーさくの喘息の原因となっている。
 そして喘息の大発作を繰り返すことにより、気管支の炎症はさらに酷くなる。

 結果、ステロイド注射治療により発作は収まっても、ゆーさくの気管支の炎症は続いている。
 その結果、痰が増える。

 ゆーさくは気管切開直後から、痰が多い子といわれてきた。
 未熟児慢性肺疾患が原因であると思っている。
 しかし、喘息大発作の繰り返しの後、さらに痰は増える。
 
 痰が増えることにより、痰の吸引の回数が増え、それにより注入中の2時間を中心にそばに誰かが付いていないといけなくなる。
 また、吸引をこまめにしているにもかかわらず、ゆーさくは咳き込みが強く、痰があふれ出る。
 よって気管切開部分のフィルターの蓋(人工鼻))がすぐ痰でつぶれてしまう。
 人工鼻は、酸素療法である医療用酸素をつなげる役目もあり、ゆーさくには必需品であった。
 医療制度による人工鼻の補助は日に1個で、人工鼻は1個当たり500円くらいの
 しかし、毎日5個はつぶれる。
 さらに、ゆーさく自身が吸引による刺激による咳込み、逆に吸引をしなかったらしなかったで痰がうまく出せなくて咳き込む。

 人為的負担、経済的負担、ゆーさく自身への負担。
 痰の多さが日常生活に強い影響を与える。
 
 主治医はいろんな手をうってくれた。
 しかし、はっきりとした手立てが見つからなかった。