認知運動療法開始
引越しして天井が高くなったなあ・・・
B病院での定期診察のときに、NICUでお世話になった理学療法士PT大ちゃん先生に出会い、C病院でのボ〇タ訓練以外にB病院で大ちゃん先生による認知運動療法を受けることになった(リハビリ開始参照)
初めて大ちゃん先生のリハビリを受けたとき、私は正直ビックリした。
大ちゃん先生のリハビリは、訓練ではなかったのだ。
大ちゃん先生は、一見、ひたすらゆーさくをだっこしてあやしているだけなのだ。
そしてその後のリハビリも何回かは、大ちゃん先生はゆーさくをあやすだけで、ゆーさくについてしいては赤ちゃんの発達について、時には全然関係ない雑談も交えながら、私と大ちゃん先生が話をするだけであった。
C病院では、具体的な体操("からだのここを押して”など)を指導してもらい私がちゃんとできているかを確認するのがリハビリだったのだが、大ちゃん先生のリハビリでは、具体的な体操云々以前に、親がどう脳性麻痺の子供を扱うかといった指導が中心だった。
始めに教わったことは、”脳性麻痺児はとにかく周りの環境に敏感。敏感で周りの世界が把握しづらく怖いから、体を突っ張らせ力を入れ緊張させる。その筋緊張が体に入ると、正常な動きが阻害されるから、筋緊張が入らないように扱わないといけない”というようなことであったと思う。
ゆーさくはそのころ、体を反り繰り返らせたりはしてなかったけど、確かに手足が堅かった。
お風呂で体を洗うときなど、とうちゃんとかあちゃんはゆーさくの脇や肘膝を洗うとき、関節が堅くて広げられなくて洗いにくくて苦労したものだ。
しかし、大ちゃん先生にそういわれるまで、そんな筋緊張を気にしたことはなかった。
C病院ではゆーさくのような子は体が堅くなることはいわれたけれど、お母さんがボ〇タ訓練頑張ってるからゆーさくはこれくらいの堅さですんでいるのよ、というようなことをいわれていたような気がする。
B病院の主治医は、確かに筋緊張を指摘していたが、あくまでも内科医なので筋緊張緩和の薬を処方してくれたけれど、大ちゃん先生ほど筋緊張は駄目だといわれてはいなかったような気がする。
だから、私はあまり気にしていなかったのだ。
大ちゃん先生のいうことは、わかりやすかったし、筋緊張が駄目だということがとても勉強になった。
さらに、大ちゃん先生はゆーさくがすぐ寝てしまうことを指摘する。
”脳性麻痺の赤ちゃんには多いんです。キィー!!!となって異常な程泣き喚き続ける赤ちゃんと、それとは反対にゆーさくの様にあまり泣かないけれどすぐ寝てしまい起こそうとしても全く起きなくなるあかちゃんと・・・。寝てしまう赤ちゃんは周りの環境についていけなかったり、嫌なことがあったりする時に、周りを遮断して自分の殻にこもって寝てしまうことで自己防衛に走り、現実を拒否しているのです。さらに、寝てしまったら中々起きないのは、自分自身のコントロールができていない証拠です。
だから、ゆーさくが周りの環境が受け入れられるように、ゆーさくをゆーさくのペースで扱わないといけないし、ゆーさく自身に自分自身のコントロールがつけられるようにしないといけない。それが出来ないうちは、いくらリハビリをして体を動かしてもゆーさく自身にはまったく身につきません。”
・・・確か、このような内容だったと思う。
目からうろこ状態であった。
このように大ちゃん先生のリハビリは、ただゆーさくの体を動かすという指導ではなかった。
確かに、人間は体を動かす機能があっても、周りの環境にあわせつつ自分の意思をもたないことには、体は動かない。
しかし、人間が周りの環境をどう理解し判断し意思をもつかは、人それぞれである。
よって、大ちゃん先生のリハビリは、みんな横習えで同じやり方する訓練ではなく、まず、ゆーさくの状態を先生が把握することから始まったのだ。
だから、始めの何回かは、大ちゃん先生はゆーさくをあやすだけのような感じのリハビリだったのだが、それはただあやすだけでなく、ゆーさくが寝てしまわないような扱い方を大ちゃん先生は見つけようとしていたようである。
C病院でのボ〇タ訓練のことが気になりつつも、大ちゃん先生のところに行って大正解だと思った。
何より、大ちゃん先生はよく喋る人で、私にも赤ちゃんの発達についてわかりやすく面白い話をしてくれる。
私も気軽に大ちゃん先生に質問が出来るので、私自身もどんどん勉強していける雰囲気があるのだ。
大ちゃん先生がやっているリハビリ方法について、聞いたことがあった。
名前は認知運動療法といい、イタリアの神経医が作ったものであるということ、日本には最近入ってきて大人のリハビリ方法としては全国的に普及しつつあるが、小児ではやっているところがほとんどなくまだまだ未開拓である、と大ちゃん先生は教えてくれた。
少し、びっくりした。
当時大ちゃん先生のところに通う子供は本当に少なかったこともあり、”ひょっとして、ゆーさくはすごい先生のところにかよっているじょではないか"という気がしてきた。
実際は、まだまだこれからの小児認知運動療法である。
大ちゃん先生の人柄が良く指導も私には十分納得がいくしとてもおもしろいもであるだけに、ゆーさくを大ちゃん先生にお任せしよう、認知運動療法なら、大ちゃん先生なら脳性四肢麻痺のゆーさくでもそれなりに発達するかもしれない、大ちゃん先生しいては小児認知運動療法の実績作りに協力しよう、私はそう思った。
リハビリを重ねる度とに、大ちゃん先生とは仲良くなっていき、本当に私はいろんなことを教わっている。
子供の発達だけでなく、障害児の親として大切なことも学んだ気がする。
一つは、”自分の子供のこと、ただ他人に言われるがままにするのではなく、もっと親自身が勉強し視野を広げ、信頼できる先生にも教えてもらいつつ、もっと子供の病気や障害に対する認識を深めなければいけない”ということ。
また、リハビリに対しての思いもかわった。
”ハイハイして歩けるようになれば、それでいいのか?毎日生きていく以上は今現在をもっと大切にしないといけない。今現在使える体の機能を使いこなし、快適な日常生活を送ることに目を向けないといけない。使える機能を使いこなせるようにし、さらに必要に応じて使える機能のバリエーションを広げていくのがリハビリだ。その結果がハイハイや歩行に繋がるということなのだろうけど・・・”
私なりの理解と持論であるのだが、大ちゃん先生や認知運動療法をしり、私の世界は広がった。
よって、大ちゃん先生のリハビリを重ねるごとに、C病院のボ〇タ訓練の回数は減ることになった。