Just Fuchsias by YoYo

HOME > 百科繚乱 Top > 栽培品種の私的分類考

>> 百科繚乱

栽培品種の私的分類

grouping of cultivars

一般的な分け方

フクシアを分類するとき、一般的なのは 「マゲラニカ・タイプ」、「トリフィラ・タイプ」、「エンクリアンドラ・タイプ」、「原種」、「その他」 という分類でしょう。

このうち認知度・流通度がもっとも高いのは 「マゲラニカ・タイプ」 です。
その次に高いのは 「トリフィラ・タイプ」 ですが、認知度・流通度はマゲラニカ・タイプよりもグンと下がり、それ以外になるとさらに下がります。

マゲラニカ・タイプ

日本でフクシアと言えばまず連想されるのはこのタイプです。
しかしこの花形がフクシア属の典型とは思いません。
フクシア属には12の節 (Section) に分かれた100以上の種 (Species) があります 1)。それらの写真を見ると、このような花形は Quelusia (ケルシア) 節の特徴的な花形で、フクシア属全体としてはむしろ少数派に見えます。
右は F. magellanica ‘Riccartonii’ (リカルトニイ)
 

フクシアと呼ばれる植物は:
アカバナ科 (Onagraceae)
フクシア属 (Fuchsia) の植物を指します。
Quelusia 節 には F. magellanicaF. coccineaF. regia など9種が属しています。
これら3種は、BFSの ALL ABOUT FUCHSIAS によると、「現代のフクシアの交配親として広く用いられた」 とのこと 2)。いずれも現代のマゲラニカ・タイプを思わせる長く伸びたガク片と比較的短いガク筒を持っています。

Edwin Goulding FUCHSIAS The Complete Guide によると、「初めてイギリスに導入されたフクシアはおそらくは F. magellanica であろうが、初期には F. coccinea と混同されることが多く、したがって初期の記録の解釈は困難である」とのこと 3)
もしかするとマゲラニカ・タイプの花形を F. magellanica 以外の種から受け継いだ交配種があるかもしれません。

管理人は F. magellanica 以外からでもマゲラニカ・タイプの花形は作れるはずだと思います。

Goulding の同著によると、 F. coccinea には葉柄がないのでF. magellanica とは容易に識別できるとのこと。

ページトップへ

トリフィラ・タイプ

「トリフィラ・タイプは、F. triphylla を元に育種された品種」 との表記 (あるいはこれに類する表記) をしばしば見かけます。

しかし現状はちょっと違うと思います。
詳細については 「育て方」 - 「Triphylla Hybrids」 - 「トリフィラ・タイプの定義」 をご覧ください。

右は Gartenmeister Bonstedt
トリフィラ・タイプにもいろいろありますが、マゲラニカ・タイプが 「可愛い」 ならトリフィラ・タイプはさしずめ 「カッコイイ〜」 といったところでしょうか。
品種の選択肢が国内では限られているのは残念です。

近所に見事なトリフィラ・タイプを植えている人がいて 「このフクシアすてきですね♪」 と言ったら、「これはフクシアじゃないですよ」 と返事が返ってきました。
これはある意味喜ばしいことです。フクシアだから植えているのではなくて、この植物が気に入ったから植えているということですから。

ページトップへ

エンクリアンドラ・タイプ

このタイプのフクシアを見かけることは少ないでしょう。
私自身は京都のタキイ種苗直営店で1回見かけただけです。

BFSの ALL ABOUT FUCHSIAS によると、「現在流通しているエンクリアンドラ・タイプは F. microphylla F. tymifolia の交配がほとんど」 とのことです 4)。どちらも Encliandra 節に属します。

写真提供:Mr R. Payne 氏
花の小ささやオーバーポットを嫌う性質は盆栽向きですね。

しかし自身はエンクリアンドラ・タイプの栽培経験はありません。

ALL ABOUT FUCHSIAS によると、「高温を嫌い、ソイルベースの用土を好み、十分な光量を確保して霜に当てなければ通年開花する」 とのことです 5)
また一部の品種には香りがあるとのことです (実際に嗅いだことはありません)。

ページトップへ

原種

フクシア属のうち最大の節は Fuchsia 節で、60種以上があります。
おなじみのF. bolivianaF. triphyllaF. denticulata はこの節です。
他に耳慣れた種としては、 F. splendensF. fulgens (写真) -- いずれも Elobium (エロビウム) 節 -- があります。

Fuchsia 節や Elobium 節に属する種は Quelusia 節と比較すると総じてガク筒が細長くガクが短い花形をしています。
原種の到花日数は長いとされ、ALL ABOUT FUCHSIAS によるとピンチ後 12〜14週間です 6)。たとえば F. fulgens は、拙宅では7月に入ってからの開花となります。
こうした遅咲きの種は、酷暑地のガーデニングに使いづらいと言えましょう (いえ、酷暑地に限らず、適温期間が短いすべての地域で使いづらいと言ったほうが良いかも)。

ただし F. procumbens F. magellanica は早咲きです (少なくとも拙バルコニーでは)。ですから他にも早咲きの原種があるかもしれませんね。

ページトップへ

その他

その他とは上記のカテゴリーに入らない交配種です。
種間雑種の一代目などがこれに当たります。
ナーサリーでは 「Collecter's corner (コレクター向き)」 とか 「Unusual varieties」 (ちょっと個性的な品種)」のリストにまとめられていることもあります。

写真は F. obconica X F. splendens の Rijs 2001
続けて F. magdalenae X F. paniculata の Northumbrian Pipes (ノーサンブリアン・パイプス)

こうした個性的な品種をどのようなカテゴリーとして販売するかはナーサリー次第です。

(交配データは MöhltiMedia publishing のFuchsia CD-ROMより)

ページトップへ

マグダレナエ系

さて、私が勝手に名付けている1つがこのマグダレナエ系です。
写真は、Strümper による Cap Arcona (カップ・アルコナ) という品種で、手持ちのFuchsia CD-ROM では種子親が Fuchsia 節の F. magdalenae で、花粉親がマゲラニカ・タイプの交配種です。

何代目にこの種が入っているかや交配相手にもよりますが、花のプロポーションがちょっと面白い品種があるように思います。
F. magdalenae を使った交配種は、WALZ シリーズで有名な Waldenmaier が多く手がけています。同氏による WALZ Hoorn や WALZ Harp は2代母 (母方の祖母) が F. magdalenae です 7)

ページトップへ

デカ葉オレンジ系

こんな勝手な命名ができるのは、素人の特権でしょう。

Clair de Lune (クレール・ド・リューヌ、写真) と Machu Picchu (マチュ・ピチュ) はいずれも葉が大きくてオレンジ系です。そしてどちらも暑さに強い。

以来私の頭には 「デカ葉のオレンジ系は試すべし」 という金科玉条が埋め込まれています。
 
以上、一般的と思われる分類 +私家的分類 (最後の2つ) を紹介してみました。
管理人は苗を購入するときに、その品種の交配を調べたり、苗の外観から性質を推し測ったりして、拙バルコニーで栽培できそうかを検討します。
こうしたことの繰り返しが、育てやすい品種を見つけることにつながります。

交配親は書籍等で調べますが、それらが手元にない場合はネットで閲覧できる AFS (アメリカフクシア協会) の登録データベースを使うのがもっとも手軽でしょう。
品種名を入力して検索すると品種登録時に記載した交配親が出てくるようになっています。

しかしながら、AFS に登録されていない品種も数多くあります。
管理人の推測ですが、世の中の半分のフクシアはここに登録されていないでしょう(2009年7月31日の時点)。
品種の交配親を調べるには、やはり書籍などにいささかなりとも投資をする必要がありそうです。

(2010年1月4日)

ページトップへ

参考 (数字をクリックするとページ内のリンク先へジャンプします):
  • 1) Euro-Fuchsia Species (2009年7月4日参照)
  • 2) ALL ABOUT FUCHSIAS、The British Fuchsia Society (2000)、p.46
  • 3) GOULDING, E.、FUCHSIAS The Complete Guide、TIMBER PRESS Inc. (2002)、p.10
  • 4) ALL ABOUT FUCHSIAS、The British Fuchsia Society (2000)、pp.52-3
  • 5) ALL ABOUT FUCHSIAS、The British Fuchsia Society (2000)、pp.52-3
  • 6) ALL ABOUT FUCHSIAS、The British Fuchsia Society (2000)、p.21
  • 7) Henk Waldenmaier (2010年1月4日参照)

ページトップへ

HOME > 百科繚乱 Top > 栽培品種の私的分類考
Copyright (C) Just Fuchsias by YoYo. All right reserved