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D. Luther氏によるアドバイス

recommendations by Mr. D. Luther

フクシアの交配から評価まで

「フクシアの交配について、興味を持っている栽培者はいるのだけれど、日本語で書かれた文献が見あたらないんです」
こんな話をしていると、「じゃあ、これは僕が書いたものだから遠慮なく使って」 とD. Luther 氏からファイルが送られてきました。

Luther 氏は私にとっていわばフクシアのお師匠さんです。以下、「読後の感想」の手前までが、受け取った文書の日本語訳です。長文です。
「交配」、「花粉の発芽」、「タネの発芽」、「実生苗の評価」 の各タイトルは、読みやすくするために管理人が付けたものです。

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交配

交配とは、新たな交配種の誕生を願いながら、ある株の花粉を別の株のメシベに付着させる作業です。
フクシアの優性因子について述べると、赤いガク片は白いガク片よりも優性であり、紫の花弁は白い花弁よりも優性です。また、樹高の高い方が低い方よりも優性です。
まず、咲きそうな花を選び、チューブ・ガーゼ (訳注:チューブ状をした指用ネット包帯のこと) を被せてから、蕾が出るまでガーゼをめくり上げます。
次に、蕾をつまんでポンと開いてオシベを取り除き、ガーゼを元どおりに降ろして、花が成熟するまで 2〜3日保護します。ガーゼを被せるのは、予定外の花粉が付着するのを防ぐためです。
2〜3日たてば、メシベの柱頭はネバネバして受粉準備が整っているはずです。

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受粉後は、ガーゼで花をふたたび覆うか、マッチを使ってあらかじめ形を作った銀紙を柱頭に被せて落ちないように軽く押さえます。またはストローで柱頭を覆ってもいいでしょう(写真を参照)。
こうした処置は、別の花粉が柱頭に付着するのを防ぐためです。

もしも花粉の相性が悪ければ、子房はしなびて落ちてしまいます。

花には、両親 (表記方法は母親 x 父親の順) などの必要情報を書いた札をつけてください。
母親と父親を逆にした交配も忘れずに行っておきましょう。
なお、熟した実に必ずしも発芽力のあるタネが入っているとは限りません。 1粒も入っていないことすらあります。

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花粉の発芽

柱頭に付着した花粉は発芽します。花粉が発芽するには、柱頭の十分が準備が整っていることと、気温がおよそ20℃であることが必要です。

タネの発芽

発芽までの所要日数は2、3日から数週間まで一定しません。
ほとんどあきらめかけた頃に発芽することもあります。

タネは、表面を軽く押さえて平らにしたソイルレスタイプの培養土(土を含まない培養土)の上にまいてください。その上を、十分に湿らせたバーミキュライトで用土の色がわからなくなる程度に薄く覆います。これでタネには十分な光があたり、水分も供給されます。

発芽するまで水やりをしてはいけません。温度は16〜19℃程度に保ってください。

その他の方法として、タネまきトレイの半分の深さまで培養土を入れてタネをまき、薄いポリエチレンフィルムでふたをするのも良いでしょう。
この場合、発芽後すぐにフィルムを取り外してはいけません。温室の環境に徐々に慣らしてください。
わたしはこの方法を用いていますが、まったく異なる方法で発芽させている人もいます。
あらゆる方法を試して、自分に適した方法を選びましょう。

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実生苗の評価

みなさんのなかには、BFS (イギリスフクシア協会) のサイトにアクセスしたことのある人もいるでしょう。

BFSでは、新たに、新作の実生に対する評価コーナーを設けています。わたしもやってみました(1〜10の評価をする)。
掲載されていた写真は20枚あまり。いずれも花だけを写したものでした。

ところが作業中にエラーが起き、サイトをいったん閉じてもういちど開こうとしている間に、はたと気付いたのです。良いフクシアに求められる条件のほんの一部だけを見て評価していたのではないかと。

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わたしにとってフクシアとは、地植えに耐えてよく成長し、丈夫な葉を持ち、株が多くの花で覆われる植物です。自宅では、八重の Annabel (アナベル) と Army Nurse (アーミー・ナース) を花壇に使い、一重の Display (ディスプレイ)、Leonora (レオノーラ)、および Pride of Bramsdene (プライド・オブ・ブラムスディーン) を見本木として植えています。

Pride of Bramsdene は自作品種で、5〜6年前にランダムに採取したタネから育成しました。その育成過程は次のとおり。まずタネから育てた苗を、育成1年後に庭に植え、生育状況が思わしくない株をすべて廃棄し、5株だけを残しました。
次にその5株から挿し穂を取り、親株は耐寒性をチェックするためにそのまま育てました。
最終的に3株を残し、Bramsdene (ブラムスディーン)、Bramsdene Girl (ブラムスディーン・ガール) (もっとも気に入った株)、Pride of Bramsdene (2番目に気に入った株) と命名したのです。

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どの品種も当地 (訳注:イギリス南部) では冬越しできて良く育ちます。中でも Pride of Bramsdene は、地植えですばらしい結果を出す品種だとわかりました。早咲きで上から下まで良く花をつける姿を見て、わたしの考えは変わりました。

花だけを基準に評価をすると、結果として地植えで真価を発揮するフクシアを廃棄してしまうのではないでしょうか。ペラルゴニウムその他同様の植物に対抗し得る花壇用植物としてのフクシアの将来は、その点にかかっていると思うのです。
花壇に使えれば、フクシアはガーデニング愛好家にとってもっと魅力的な植物となるでしょう。

もっとも活発なフクシア愛好家はコンテストへの参加者です。
そうした人たちは、コンテストに向いた品種、入賞が狙えるような品種を高く評価するものなのです。

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読後の感想

個人的にもっとも興味深いのは、「ガーデニング素材としてのフクシアのあり方」 についての部分です。

夏越しや冬越しに過度に気を遣わず、庭で他の植物といっしょに育つフクシア。コレクターのためのフクシアではなく、誰もが気軽に植えて楽しめる適応温度の広いフクシア …。
日本にそういうフクシアがあれば、がっかりする人が減って良いのにと思います。
(2009年8月11日)

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