アイルランド旅行記その18 ダブリン再訪
久しぶりに戻ったこの地は、さすがに一週間住んでいただけ
あって、なつかしさもひとしお。でも、3週間のうちに暑くなっ
たものです。観光客もどっと増え、(といっても知れていま
すが)夏休み気分が溢れ出しました。
今回はリフィー川よりずっと北の、庶民の住宅街の方にある
安宿に居を決めたのでしたが、ここがまたいろいろと問題の多
いところでした。かなりの人数が泊まっているのに一階にバス
ルームが一つしかないので、朝は殺人的である。そのすさまじ
さは詳しく思い出したくもないが、朝シャワーを使うタ$ ェ十人
入れ替わり立ち替わり、その間トイレにも行けないという・・
夜は隣の部屋のお姉さんたちが、真夜中までがんがん音楽を
かけ、大声でしゃべりまくる。ついにたまりかねて文句を言い
にいったら、「いやあー悪かったわねえーごめんごめん、言っ
てくれてよかったわあ、これからうるさかったらドア蹴って、
SHUT UP!!て言ってよねえー」とか調子はいいのだが、いぜん大
してボリュームが変わったとも思えない。しかもその草木も眠
りたい丑三つ時、廊下であったら「ねえあなたも一緒に踊りに
いかない?土曜の晩じゃないのさあ」ときた。元気なのね・・・。
ランブラーチケットもよく使ったが、ついに今日で期限切れと
なり、最後にダブリン郊外電車のダートに乗ってみることにしま
した。行き当たりばったりコノリー駅に行って、来た電車に乗っ
たらそれはたまたま都合よくHowth という海辺の保養地行きでし
た。ダブリン近くから、こぶのようにアイリッシュ・シーに突き
出した半島がHowthです。目的地の二つ手前ぐらいから、はっとす
るほど美しい海の風景が窓から見えます。今日は本当にいい天気
で、空も海も真っ青。少し離れた海上に小さな島が浮かび、その
名も「アイルランドの眼」というのですが、古い修道院の跡があ
るのがかすかに見えます。この島が見えたときは、あまりにもピ
クチャレスクな風景に(絵はがきみたい!)自分の目を疑ったほ
どでした。Sutton駅と Howth駅の間には美しい砂浜が広がってい
ます。Howth で降りるとここの波止場には豪勢なヨットクラブが
あり、白い帆がきらめく波の上ではためいています。いくつかの
突堤にはすでに日光浴、散歩の人たちが出ていて、わたしも東突
堤を歩いてみました。ところがです、先ほどの「アイルランドの
眼」がどこにもないのです。よく見ると、こんなにいい天気なの
に、海の上に霧が立ちこめていて全く島を隠してしまっているの
です。泳いで行けそうなくらい近くの、真っ青な海の上なのに。
霧の中から船がぼおっと浮かび上がって来るのをしばらく眺め
ていました。それから少し引き返し、今度は半島の中心部の丘に
の果ては小高い丘陵の斜面に建つホテルとゴルフ場。なるほどこ
こはブルジョアのリゾート地なのです。ホテルの裏からは細い道
が山へと続いています。松の木、しゃくなげ、シダといったどこ
か日本の山のような森の、岩のごつごつした道をのぼってゆくと
半島の頂上は、とても大きな一つの岩でした。土が積もり、ヒー
スが生えていて全体像はつかめないのですが、港にあった地図に
はこれはドルメンだと書いてありました。ここからは海の見晴ら
しが素晴らしく、霧に隠れていた「アイルランドの眼」もその全
貌を再びあらわしました。修道院の廃墟や塔をめぐり、「イタリ
アのお天気が間違えて上陸してしまったような」青い青い海を満
喫した一日で、そのあともダートであちこち行ってみてチケット
を使いきりました。
ダブリンシティーに戻って食べたオムレツはまずく、コーヒー
はネスカフェの一番安いやつだった。都会の食事はわびしい。
久しぶりの再登場です。最終回はもうすぐです。