アイルランド旅行記その6 ギル湖(続き)


 

 ちっとも先へ進まなくて、ギル湖サイクリングから帰れないまま
ですが、これで終わりです。
 イニスフリー島の島影を拝んで帰る段になって、方向感覚というのが
当てにならぬものだと実感しました。立て札にスライゴータウンこちら
という矢印が、来た道と明らかに違う道で、違う方角を指しており、私
はバカなことに忠実に来た道を戻ろうとして、矢印を無視したのでした。
ところがかなり道を行くうちに、道路の舗装のテキスチャーが明らかに
見慣れぬものであることに気づく。(この辺しんどかったのであんまりま
わりを見ないで、下ばっかり見てたのです)道端に自転車を止めて談笑し
ている二人のアイリッシュのおじいちゃんの横を滑るように通り過ぎてか
ら、しまった、道を聞くんだったと後悔したが、もう遅い。前方に見慣れ
ぬ橋が見えて、また道を間違えたことは明らかとなりました。あたりには
人家もちらほらありますが、道からはかなり離れていて、牧場の向こうに
あるという感じ。ほんとのところ、こんなとこに住んでて、新聞や郵便は
どうなってるんでしょう。街までは車で行くんでしょうが、冬なんか日が
暮れたら真の闇だろうに。
 幸い、家の前で庭仕事をしてるおばさんがおり、大声で呼んで道までこ
させてしまいました。道を聞いたところ、やはりあの立て札のところまで
引き返せという・・・。その道のりを考えてげっそりしてしまった私を見
て、おばさんは優しく、「大丈夫?お茶飲んでいかない?」と言ってくれ
ました。その親切は有り難かったのですが、先を急ぐので、再出発です。
重ねて「迷ったらすぐ人に道を聞かないと駄目よ、気をつけてね。」と言
葉をかけてくれたおばさんにお礼を言って、引き返すのは辛かったけど、
人の優しさが身にしみました。先ほどのおじいさん二人の前をまた通ること
になりいまいち恥ずかしいものがありましたが、彼らの方から「どーした、
どこ行くんだ?」と声をかけてくれる。懲りたのでスライゴタウンと答え、
再確認。・・・・・・・・(これはただ黙々と走っていたということです)

 そして、やっと、ようやく、ついに町に戻ってきたときには足はがくがくで
腕はひきつり、ものもいえんかったという状態で、フラナガンおじさんに自転
車を返し、疲れたーーーといったらおじさんは今晩はよく眠れるぞーとのんき
なことを言ってくれました。
 スライゴーにはもう一日いて、ギル湖の反対側の「ヘイゼルウッド」(はし
ばみの森)を散歩しました。ほんとはドラムクリフへ行きたかったのですが、
交通手段がなくて。はしばみの森へ、燃える頭を冷やしに行った、とはイエー
ツの詩ですが、この森へ行くまで、暑苦しい国道を一時間半歩いていった私と
しては、共鳴してしまうものがありました。ここからのギル湖の眺めは、小さ
な島(柳の島とか狼の島とか名前が付いている)が点在して、きらきらと波が
輝き、それは平和で静かで麗しいものでありました。
 次はゴールウェイにバスで旅立ち、まずはアラン島に渡りましたので、次回は
嵐の海を渡りアラン諸島、イニシュモア島に至る の巻となります。
 
 

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