アイルランド旅行記その3 スライゴーは雨だった


 

 と題を書いてから、前回のダブリン編で間違いを書いてしまった
のに気がついた。トリニティー教会ではなくて、クライストチャー
チでした。ごめんなさい。後から思い出すこともあって、例えばア
イルランドの原宿、薄汚いゲージュツカがたむろするテンプルバー
の片隅にあるトラッド専門のクラダッハレコードのおじさんが、閉
店時間を過ぎても一時間くらいつきあってくれ、試聴はさせてくれ
るし、お勧めはしてくれるし、帰国後のメイルオーダーまで請け負
ってくれた・・・ここのCDは船便で送ったのでまだついていない
・・・グラフトン通りはいつもトラッドのグループが大道芸術して
いました。
 ここに最近東京で支店の出来たビューリーズという茶店があるの
ですが、一日中アイルランド朝食を食わせてくれます。カフェテリ
アですが、その雑然とした雰囲気、料理の量の多さ、ケーキの大き
さ等、どれをとっても東京の店と同じ系列とは思えません。ここで
食べてるときにはおいしいと思ったが、田舎へ行くにつれ、それが
幻想だったことが判明しました。都会はやっぱり駄目だわ。

 スライゴーについたのは日曜の昼頃だったので、町にはひとけが無
く、かえってダブリンの人混みにうんざりしていたのでホッとしまし
た。インフォメーションで紹介されたB&Bは町外れだったので荷物
をひきづってようやくたどり着きましたが、ここの宿はほんとに家族
的で、温かいもてなしを受け、嬉しいところでした。おばさんが疲れ
たでしょうと持ってきてくれたミルクティーとビスケットでくつろい
でいると、しかし妖精にたたられたのか、激しい雨が降ってきたので
した。4、5時間の間、することもなくぼけーっとベッドの上に座っ
ていました。そして夕方小雨の中スライゴーの町に出ていったのでし
た。ほんとに小さい町です。廃虚となったスライゴー寺院が黒く、雨
に濡れそぼって立っている。イギリス軍に破壊されたこの寺院の鐘は
町外れのギル湖に沈んでいて、罪なき人にはその音が聞こえるのだそ
うな。(実際後で書きますが、ギル湖へは死にものぐるいのレンタサ
イクリングをしたので、鐘のことなどすっかり忘れていたのだ)
 ギル湖から流れ出してスライゴ湾に注ぐのがガラボーグ川で、この
川辺はそれは美しい草地と林が続き、白鳥が泳いでいて、カモメが飛
んでいて、教会の鐘が響き、柳がそよぎ、私はしばらく自分の目が信
じられないような気持ちで、川辺に座り尽くしていました。
 緑の色がこんなに豊かなものであったとは。これでは人はイエーツ
になるか、ターナーになるしかあるまい。詩才も画才もない私は翌日
自転車を借りて川を遡り、ギル湖と、イニスフリー島へ行くことにし
ました。まだ明るい8時頃、岸辺の散歩道を歩いて、犬の散歩をして
るおじいさんと挨拶を交わしたり、野花を眺めたり・・・。
 しかしねえ、せっかくの景観なんだからこのごみを捨てるのは
何とかしてよお。

 次回は恐怖のギル湖・イニスフリー島探訪記です。
 
 

Page 2 Main Page Page 4