黒子の胃の辺りを一頻り撫でて満足したのか黄瀬はにっこりと微笑んだ。その笑みに嫌なものは含まれておらず、黒子が内心でホッとしたのも束の間、華奢な痩躯が黄瀬に持ち上げられた。気が付けば、黒子の痩躯は黒の毛並みの絨毯の上に横たえられていた。
黒子の腹を跨いで膝立つ黄瀬が覆い被さる。目の前には影が出来、いつまで経っても慣れることなど無い圧迫感に黒子は息を呑む。
これから行われるコトがなんだかわかっている。黒子の額から冷や汗が流れる。
黄瀬は、奉仕が上手くできたなら、免罪符をあげると言った。だが、黒子は黄瀬が満足するような奉仕は出来なかった。
「きせ、く…」
「しぃ……」
許しを請う様に名を呼ぼうとすれば、口唇を指でなぞられ黙れと言われる。黒子は従うしかなく、戦慄く口唇を引き結ぶ。その様は黄瀬の昏い瞳に焼き付いて、彼は愉悦を感じたように恍惚に笑んだ。
彼は、いつもそうだった。黒子が自分の言動に従順に成れば成るほど、嬉しそうに笑うのだ。
「黒子っちは、セックスしたことなかったスもんね。冬休み中教えてあげたけど、苦手じゃしょうがないっスよ。でも、苦しいのも怖いのも、イヤじゃ、駄目なんスよ。ね、もうそろそろ、いい加減に、オレの機嫌の取り方覚えよ?せめて、いやいやなんて言わない様にさ」
頭を振って逃げ出したい心を抑え、黒子は顔を歪ませる。黄瀬はそんな黒子の眦を舐め上げる。生々しい肉の温かみが組み敷く体温を更に低下させているとは、この男はきっと思いもしないのだろう。
「大丈夫、セックスがどれだけ気持ちのイイものか、オレがこの身体に教え込んであげるっス」
「っは、うああっ……ん、くぅ」
自分のソレと比べると明らかに小さい黒子の雄。唾液でテラリと光るソレを黄瀬は音を立てて舐める。窪みを指で擦り、袋の狭間を舌で擽り、付け根の辺りを強く吸う。途端、上がるのは甘い悲鳴。それを聞き、黄瀬は満足気に笑みを零した。
開けと命じた、スポーツをするには不向きな細い足。その間に埋めていた顔を上げ、黄瀬は快楽に喘ぐ黒子を眺める。下半身に纏う服は全て取っ払われ、着衣は上半身の肌蹴られたシャツが一枚だけ。晒された白磁の肌は赤い華と淡い朱に染まり、いつもの無表情など壊され顔は歪み、涙を溜める目尻には朱が刷かれていた。これだけでも十分な艶姿ではあるが、まだ足りない。
つい先程まで自分の舌と手で愛していた黒子の雄を黄瀬はやんわりと握り締める。
「ひゃ、うん」
黄瀬の掌の体温に驚いたのか、黒子が甘い声を上げる。うっすらと開かれた双眸に自分を映して欲しい。そんな希求を満たすべく、トロリと蜜を零す蜜口を指で優しく擦る。
「ひ、やっ……あ、あ、あっんん」
だが、色素の薄い双眸はまたもや殻に閉じ篭もってしまう。
(残念。あの溶けた瞳が見たかったんスけどねぇ。まあどうせ、後で見るから、今は逃してもいいんスけど)
そんなことを思って自身を宥めてみても、やはり見たかったという希求は強い。黄瀬は腹癒せの様に蜜口を擦る指に力を込めた。
黄瀬を挟む黒子の足は絨毯を泳ぎ、顔を必死に隠す両腕の合間から漏れる声は先程よりも格段に色を帯びる。
(うん、そうそう。艶姿ってこういうのでしょ)
目の前で悶える黒子に恍惚と微笑み、黄瀬は問い掛けた。
「気持ちイイっスか?」
黄瀬は上機嫌だった。
この想いを否定したり、逆らわったりしない限りは黒子のどんな我が侭だって叶えてドロドロに甘やかしたいと思えるぐらい、黄瀬は彼を愛していた。彼がこの手に入るのなら、人道や道徳など取るに足りないものだと嘲笑えた。黄瀬にとって、始めから黒子テツヤはそういう存在だった。最早、これは意思に因る想いではない。遺伝子や本能という『絶対』が求めていているのだ。
そんな存在が、今、目の前で、この手に因って、快楽に喘いで啼いている。男なら上機嫌にならない方がおかしい。
自身の雄がどくりどくりと荒々しく脈打つのを感じ、黄瀬は舌をなめずる。
黄瀬も既にブレザーを脱いでタイを外し、シャツの前は肌蹴ていた。黒子に奉仕させた後取りあえず仕舞っただけの下肢も、ベルトは抜かれチャックも閉められていない。
(どうすっかな、二、三回先に達かせようかと思ってたんだけど、早くヤリテェ)
迷っている合間、蜜口を割るように爪を立てれば黒子は咽喉を仰け反らし、言った。
「ひぃああっ、や、やめ、って」
黄瀬は更に力を込めて蜜口を抉るように嬲る。そして、ビクビクと震える雄の根元をもう片方の手で締め付ける。
「くーろーこ、きもちいい?」
「やだっ、やっあ、あ、ああ、ひんぅ」
「いや、って言ったら駄目って、オレ言ったよなぁ?くーろーこ?」
抉る手を止めようと黒子の手が伸ばされるが、黄瀬は気にも留めない。根元を締め上げたまま、痛みを感じるの力で雄を扱いて蜜口に爪を立てる。それを繰り返せば、腕を掴む黒子の力が増す。淡い色の髪を振り乱し、声にも悲痛さが孕み始める。
「はな、し、はな、って、くだっ、ひ、ああああ」
甘い余韻を残すような声を上げて黒子は絨毯に沈む。は、は、は、と荒く呼吸を繰り返し、時折痙攣するように黒子は身体を跳ねつかせる。それらを視界に映し、黄瀬はうっそりと冷たく笑む。
黄瀬が視線を落とせば手の中で未だ力を失わない雄。その蜜口からとろとろと緩慢に流れ出す白濁。
「こういうの、空イキ、って言うんだって。気持ち好かったっスよね?達ったんスもん、なぁのに、なにが、イヤっスか」
根元を未だに指で締め上げたまま、黄瀬はタイを手に取る。それを黒子の雄に縛り付けた。そして、再び足の狭間に頭を埋め、震えるその雄を咥え込んだ。途端、黒子から悲鳴が上がり黄瀬は地肌を軽く掻き毟られる。だが、さして気にするような抵抗ではない。
舌で筋を舐めて、窪みに歯を立てる。袋を掌で擦り合わせながら、雄を扱く。蜜口を舌で抉る。緩急をつけながら何度も何度も黄瀬は愛撫を繰り返す。次第に小さな雄が震え、再び黒子の抵抗が強まったとき、黄瀬は蜜口を強く吸い上げた。
「ひあっあああっ」
先程よりもずっと悲痛な、それでも甘い声が上がり、黄瀬は身体を起こした。
目の前でぐったりと弛緩する華奢な体躯を黄瀬は見下ろす。
少しばかり焦点の合わない瞳を見つけ、眦に溜まる涙を指で拭ってそれを舐め取った。黒の毛並みに混じるように散らばった白藍色の糸を集めるように髪を撫でつけ、黒子の焦点が自分に向けられるのを黄瀬は待った。
淡い色の眼球が緩やかに動くのを認め、黄瀬は問う。
「気持ち好かった?」
四度目の問いだった。黒子が数えているとは黄瀬も思っていない。それでも、問いの意味を理解したのか、朱を刷いた顔からうっすらと血の気が下がったようだった。
「……気持ち好かったか、って聞いてんだろ?」
ふるふると頭を振り、涙を流すばかりの黒子は何も言わない。いい加減に痺れを切らした黄瀬は先程の残りのシェイクに手を浸し、そのまま固く窄まった蕾へと指を一本突き立てた。
黒子は突然の所業に息を呑みんで身体を緊張させるが、黄瀬は指の抽挿を繰り返す。抽挿がスムーズになったところで指をもう一本増やし、その中にシェイクを流し入れた。一筋、二筋と零れていく白を黄瀬は許さず、指で掬い蕾の中へと押し入れる。
「や、つめ、たぃ」
「黒子が好きなシェイク入れてやるよ。嬉しいだろ?一緒に犯してやるから」
慎ましやかだった蕾が三本の指の侵略を許す。黄瀬は押し開けるように指をばらばらに動かしつつ、時折黒子のイイ所を掠めてやる。すると、面白いほどに細い肩が跳ねる。
ぐちゅぐちゅイヤラシイ音を奏でていれば蕾が当初の慎ましさを忘れて黄瀬の指をもっと奥へと誘い込むように蠕動し始める。黄瀬はそれを見て鼻で嗤った。黒子はそれに気付かない。ただ、只管に受身でいることしかできない。
だが、無垢だったこの身体には黄瀬が冬休み中ずっと快楽を仕込んだ。今更貞淑など不似合いなのだ。
それを証明するように、黄瀬に組み敷かれるその目が快楽を求めるように彷徨い始める。イイ所を擦ってやると身体を揺らし、蕩けた瞳を黄瀬に向けてくる。黒子の口が薄く開いては恥じるようにまた閉ざされる。繰り返し、繰り返し。
「あぁ、ん、ん、……き、せ、く……」
震えて、強請る甘い声。耳には心地いい。それでも黄瀬は嗤い、応えてはやらない。
黄瀬は臍の周りを舐め、その中を擽る。
「あ、ああ」
ピクリピクリと震えて吐きだせない熱に涙を零す雄を掠めるように顔をずらし、足の付け根を舌で辿る。その間も黄瀬の指は休まずに黒子の中で白い蜜を掻き回すように蠢く。
「あ、ああっも、やですぅっ、ひあ、あぁん、ゆるし、て……は、ぁっ、たすけ、くだ」
「ちゃんと、教えてやったろ?『おねだり』、しなきゃだぁめ」
「でき、なぁああ、ゆる、しぅあ、うあ、ん、ん、ごめ、な、さい」
黄瀬は溜息を吐く。指を蕾から引き抜き、身体を起こす。黒子の上半身も抱え起こす。白藍色の髪を撫で、上がる呼吸を宥めるように口付ける。啄ばむように、ゆっくりゆっくりと口付ける。合間、謝んなくていい、と小さなその背を撫でた。
「謝んなくていい。そんな言葉じゃ、オレの機嫌もう直んねぇから。せいぜい、この身体でオレの機嫌直せよ」
「ひ、いあああっ」
黄瀬は表情を固めた黒子を、対面座位のまま欲の滾った雄で一気に穿つ。黒子は声を上げて首筋に掴まり刺激を押し殺そうと必死だ。自分の雄を全て呑み込ませ、黄瀬は白藍色の髪を後ろから掴み、黒子の顔を上げさせる。
「そういや、ご奉仕もちゃんとできなかったし、おねだりも出来なかったよな。酷い、お仕置きしとこうか。黒子を痛めつける気はないよ、大丈夫。さっきした空イキであと何回達けるか、数えてやるよ。大丈夫、気ぃ失っても起こしてやるから、何度でも。目の焦点が本気で飛び始めたら、許してやる」
ほら、と言って身体を乱暴に揺さ振ってやれば黒子は涙を零して啼く。許して、外して、と早くも戦慄く口唇を塞ぎ、黄瀬は耳元で囁く。
「『愛してるっスよ、黒子っち』」