赤穂民報に掲載

塩屋の土地区画整理事業で地権者が県に審査請求「精算金の負担、納得できない」
 赤穂市塩屋の土地区画整理事業で、地権者27人が換地計画に異議があるとしてこのほど施工者の赤穂市に対して意見書を提出。さらに、内3人が事業を認可した兵庫県に事業を不服とする審査請求を行った。
 土地区画整理は「健全な市街地の造成」(土地区画整理法第1条)を目的に行政などが施工者となって行うもの。事業計画に基づいて地権者の土地を減歩し、道路などを整備する。地権者は所有している土地の面積が減る代わりに、区画整理によって土地の価値が上昇することで、資産としては整理前と整理後が同一となる仕組み。誤差が出る場合は精算金として資産が増えた人からは差額を徴収、逆に減った人には交付する。
 今回、問題となっているのはこの精算金についてで、住民らは「過去の市からの説明では負担金のことなどは聞かされていなかった。精算金の算出方法も公正とは思えない」と異議を唱えている。
 区画整理で自宅横に14b道路が作られたために約百万円の精算金を請求されることになるAさんは「赤穂に永住しようと思っている自分にとっては土地の価値が上がっても、転売して利益を得ることはない。むしろ固定資産税が上がる分、負担が増えるだけ。その上、精算金まで負担させられるのは不条理だ」と話す。
 精算金の徴収額は土地の面積や条件によって異なるが、中には年金生活者から徴収するケースもあり、住民は「市はもともとこの土地に暮らしていた住民の生活を無視しているとしか言いようがない」と憤っている。
 ことし2月に市が換地計画の縦覧を行ったところ、33件の意見書が出された。地目の変更についての意見書6件を除く27件は精算金、あるいは土地の評価方法についての異議や質問だったという。これらの意見書は土地区画整理審議会で話し合われたが、いずれも不採択となり却下された。
 Aさんは、さらに2度、文書で意見と質問を送ったが納得のいく回答は得られなかったという。「審議会が本当に真面目に議論してくれたのか疑問だ。市の返答や対応も極めて不誠実」と言うAさんは事業を認可した県に対し、行政不服審査精求書を送付。県からの回答を待つ一方、「こうした実態を他の市民にも知ってほしい」と個人のホームページ(http://www2.117.ne.jp/~ymmt-kz/index.html)を立ち上げるとともに、住民同士で勉強会を開き、今後の対応を協議している。
 市都市整備部区画整理課は「法律に基づいて適正に事業を進めてきた。また、事業計画を定める前に地元説明会を開いたり、仮換地計画を個別に説明する機会を設けるなど、住民の理解を得るために当時としては先進的を取り組みをしてきたつもり」と話す。
 また、6月市議会に精算金の支払い方法や期限を緩和する条例案を上程する一方、「今後も住民からの要望があれば説明に応じたい」としている。
 住民の一人は「市は法律通りにやってきたと言うばかりで、市民の視点に立っていない。十分を説明もせずに紙切れ1枚で金を出せという市の姿勢は庶民の感覚からかけ離れている」と不満を話す。
 同事業は昭和60年に区域が決定、平成元年に着工された。対象区域の面積は69.9f、地権者数は着工時の約6百人から現在は約8百人となっている。工事は同13年3月に完了。
 一人でも多くの人に知ってもらいたい。エゴではない。味方をしてほしいわけでも、力で解決したいわけでもない。これ以上同じ思いをする人が出てほしくない。