院長の談話室 読む葡萄酒

CHAMPAGNE KRUG読む葡萄酒 その14

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KRUGの造り手

今から10年程前に、KRUGの当時の当主「アンリ」さんの40周年記念パーティーが奈良でありました。世界五カ国で行われ、日本は奈良が選ばれました。その理由は、葡萄酒がシルクロードを経て終点の奈良に葡萄酒がもたらされたからです。

記念パーティーの前に近くのお寺の本堂でコンサートがありました。演奏の途中で指揮者が突然交代しました。そして、平然と演奏が続けられました。これにはびっくりしました。これは、指揮者が変わると同じ曲、同じ楽団員でも、音の響きや曲想が異なる。つまり葡萄酒も同じで、同じ葡萄(楽団員)を用いても造り手(指揮者)により異なった葡萄酒が出来ることを「アンリ」さんは言いたかったのでしょう。

創始者のヨーゼフ・クリュッグの1848年の日記の最初のページには「最高のシャンパンを造るには最高のブドウを使うべし」と書かれています。それから120年ほど経た1971年、クリュッグ家が手にした最高の畑が「クロ・デュ・メニル」です。このシャンパンは瓶内熟成期間が10年以上という、とてつもない長さです。驚きです。

KRUGの味わい

さて、超最高峰のシャンパン「クロ・デュ・メニル」は、シャルドネ100%の「Blanc de Blancs(白葡萄のみから造られたシャンパン)」です。シャンパーニュ地方「コート・デ・ブラン」地区にある最も名高い村のひとつ、「メニル・シュール・オジェ」村。その中心部にある「クロ・デュ・メニル」の畑は、南東に面したなだらかな斜面にある僅か1.85haほどの広さです。まさに庭園のような葡萄畑です。

輝きのある淡いゴールド色をした「クロ・デュ・メニル1998」は、フルーティーで余韻がとても長く、いつまでも鼻腔にただよっています。本当に素晴らしいシャンパーニュです。クリュッグの六代目当主「オリヴィエ」は次のように語っています。「クロ・デュ・メニルは奇跡のような畑です。ここで生まれたシャンパーニュは、クリュッグの職人技を象徴しているだけではなく、シャルドネの本質を表現している。」と。