天狗塚〜三嶺〜剣山
1,767手前より次郎笈を見上げる

1,767手前より次郎笈を見上げる
◆【山行日時・天候】 2003年11月2日〜3日
□11月2日  くもり時々雨

□11月3日  雨

パタゴニア

◆【詳細】
11月1日、淡路島、徳島市内を経てR438を走る頃に日は暮れた。徳島市市街地を抜けると途端に車の往来は少なくなり、時折か細くなる道を一路、見の越へと向かう。

木屋平を過ぎると、上方に見える剣山ヒュッテの小さな灯りと上弦の月を見ながらの夜間ドライブ。コリトリからは闇夜のワインディングロードを駆け上がる。

昼間なら見事な紅葉を楽しみながら走れるが、残念ながら夜間の今は見る影もない。

中尾山分岐を左へルートを取り、徐々に少なくなる見の越までへの距離表示を目で追いながら更にもうしばらく車を走らせる。

やがてトンネルに出くわし、西側に出たところが見の越。

今回は福山市・Kさんと縦走の約束なので、待ち合わせ場所である夫婦池へ向かう。

うまく落ち合い、駐車場を今日の寝床とし遅い夕食の後、車中、テントでそれぞれ眠りに着く。

翌朝、昨夜には梢越しに北極星付近のおおま座やこと座、わし座といったちょっと季節外れではあるものの沢山の星座を見ることが出来、今日は晴れの特異日、11月3日ということも手伝い
「きっと良い天気に違いない」
こう思いながら目を覚ませてみたが、ほんの少し朝焼けを見ただけで、その後すぐさま曇天となってしまった。

朝食を済ませた頃には雨が降りだし、向こう二日間の天候、行動を案じざるを得なくなった。

しかし、お互いためらいはなく予定通りの行動を取ることとし、Kさんの車は見の越にデポし自身の車で祖谷谷を西山林道へ向かった。

西山林道・イザリ峠、天狗塚登山口西山林道登山口にはこんな天気にもかかわらず、すでに数台の車が駐車してあった。

今回はここからイザリ峠に上がり、天狗塚は身軽でピストンし、その後、西熊山、三嶺、白髪別れ、高ノ瀬、丸石、次郎笈を経て西日本第二の高峰、剣山まで、剣山系の核心部を縦走しようというもの。

ただ、今回のように登山口と下山口の異なるルートを歩く場合、下山後の車の回収を如何に行うかが大きな問題であり、事実、昨年、剣山〜三嶺縦走した際、車のところまでうまく戻れた要因に、通り掛かりの車やタクシーに恵まれたことが挙げられる。

今回、その時よりも歩く距離が長く、下山の時間帯が遅くなり更に下山後の車の回収問題を抱えるにもかかわらず、この計画を実現できるに至ったのは、ほんの数日前の突然とも取れる誘いに同調してくださった福山市・Kさんを抜きには語れない。(Kさんとの出会いについて


道端のスペースに駐車し、準備が出来たら出発。

イザリ峠までほぼ一本調子の上りが続くが、そのなかで唯一、一息つけるのがウラジロモミの茂る1,476ピーク付近だろうか。

高度を稼ぐと共に辺りの木々は低くなり急登すると、やがてササ原を縫って歩くようになる。
天狗塚
この辺り、晴れていれば右手に牛の背のたおやかなササ原を望みながら、また、もうしばらくすれば左手にも西熊山を見ながら気持ち良く歩ける個所だが、あいにくの天候でまったく展望は得られない。

イザリ峠からは天狗塚をピストンの後、お亀岩へ。

地蔵の頭や綱附森への分岐を過ぎ、潅木帯をしばらく下るとササ原の広がるお亀岩に着く。

稜線を高知側に少し下ればお亀ヒュッテ。

囲炉裏もある前室で休憩。相変わらず素晴らしい小屋である事を再認識する。

昼食を摂ったら三嶺へ向け少し重い腰を上げる。というのも毎度のことながら三嶺山域に来る時は、とりあえず西熊山からの三嶺を見ないことには何故か心残りで仕方ない。

そして、これからその西熊山に登ろうとしているのだが・・、
「雨は降ってるし、ちょっと無理か。」

山頂手前でわずかに青空が顔を覗かせるシーンもあったが、それも束の間、案の定、西熊山に着く頃にはガスが立ちこめ展望はなく、辛うじてそれもホンの一瞬、先ほどまで居たお亀ヒュッテの建つカンカケ谷上部を望めるだけだった。三嶺

結局、展望のないまま三嶺に到着。

ここでも眺望は得られず足早にカヤハゲへ向かう。

白髪別れへの登りで日が暮れ、そこから白髪小屋へ下る頃には辺りは真っ暗となった。

ヘッドランプの灯りを頼りに水場へ向かい、充分な水を補充したら白髪テント場は目と鼻の先。

荒天の為、都合で避難小屋泊もと思い小屋を覗いて見たが、すでに”満席状態”と日暮れ間もないにもかかわらず”消灯状態”と見うけられたので、すぐ先のテント場に向かい幕営とする。白髪テント場 左の赤い二つのテントは九州からのパーティーのもの 右の黄色いテントが我々のもの

ここでの救いはテント設営時、雨が落ちていなかったこと。

夕食の後、あらためて夏以来の再会に、二人しばらく談笑の後、眠りにつく。

夜半には風雨が激しい時間帯もあったが明け方にようやく風は止んだようだった。
しかし、夜が明けても雨は相変わらず降り続いていた。

昨日の設営時同様、今日の撤収時も雨が落ちていなかったのでずいぶん助かった。

白髪テント・サイトは二重山稜を形成するササ原の開けた窪地にあり、北に三嶺、塔の丸、西に白髪山を望む絶好のロケーションなのだが、この天候のもと、雰囲気を存分に味わうことなく、また展望を得ることなくここを後にしなければならないことは、残念としか言いようがなかった。

また、荒天により先月の白髪〜三嶺山行の際も目的のひとつとしていた白髪別れ、または白髪山から夕景や朝景を見ることは今回も実現できず、これ以降の楽しみとなってしまった。

今日の準備が出来たらテント・サイト先のササ原を短く駆け上がり、剣山へ向けスタート。

石立山分岐手前の1,732のササ原までは展望の利きそうにない樹林帯を行く。

利きそうにないというのは、ここを歩くのは昨年に続き二度目だが、その際も天候に恵まれず展望を得ることができずにいたからだ。

あいにく今日も荒天につき展望はないので、晴れていれば何がどう見えるのか未だ分からず、このような表現になってしまうのである。

要は、見通しが利く日に歩いたことがないのだ。

少し憂鬱な気分のまま、次々に現れる小さなピークをいくつも通過しながら、基本的に尾根筋の道を進む。
ササ原の広がる1,732付近を行く
1,701三角点で一度、展望の利きそうな場所に出るが、すぐにこれまでと同じようなルートとなる。

1,732手前からしばらくササ原を縫って歩くようになり、高ノ瀬まででは最高のシチュエーションの場所に出るものの、辺りを見まわしても、ただただ白の世界が広がるのみ。

つい振り返って遠ざかりつつある三嶺を頭の中で想像してみるものの、その勇姿が見える訳でもなく虚しさが募る。

ホンの短く極楽歩行をしたらササの広がる高知側のなだらかな斜面を巻くように進む。

縦走路は再び尾根の樹林帯となり、1,738を越えると、ようやく石立分岐。石立分岐

ここでは、ようやくというのが実感。
稜線漫歩は歓迎だが、だらだらした歩行は案外退屈なものだ。

白髪小屋付近で見た二重山稜をこの先で再び見るようになり、樹林帯のササ薮を分けながらしばらく下ったら今度は高ノ瀬へ向け緩やかに登るようになる。

伊勢の岩屋からの巻き道との合流点は何時しかやり過ごし、しばらく登るとやがて高ノ瀬・三角点(右下画像)に到着。

ここからの下りはこれまでの上りとは打って変わって少し急坂なので注意が必要だ。(次郎笈をトラバースした本日のコース中では最も急な下り)

岩場を過ぎると伊勢の岩屋への分岐。
高ノ瀬
高ノ瀬の通過は三嶺、剣山いずれの方向から来ても尾根通しで歩き三角点を経由した方が、伊勢の岩屋を経由し巻き道通しで通過するよりも精神的にずいぶん楽だ。

昨年、伊勢の岩屋の巻き道を選択したばかりに藪こぎを強いられ、少しばかりひどい目にあった。それがあったので今回は尾根通しで歩いてみて違いがよく分かった。

尾根通しのルートを選択すれば、もちろん登りは我慢しなければいけないが、決してルートを見失うような藪こぎを強いられることはなく
「この道、正解〜?」
という風に神経を擦り減らせながら歩かなくてもよい。
丸石山頂より北望
荒廃の高ノ瀬避難小屋跡(使用不可)を過ぎ、しばらく樹林帯を進むと丸石パークランドへの下山路分岐。

丸石避難小屋はすぐそこなので、無人の小屋で早めの昼食。

この先でも二重山稜を見ることが出来、しばらく登り樹林帯からササ原を歩くようになるとササの広がる丸石山頂に着く。

依然、雨は降り続き展望は得られないながらも、ここに着く少し前から心なしか空が明るくなってきたような気がしていた。

Kさんには、これまでにも真っ白な空に向かい、ストックでその方向を指し
「ホンとはこっちに三嶺、塔の丸。こちらには次郎笈や剣山。石立山も尾根の向こうに・・・。」
など、昨日も含め幾度となく説明してきただけに、
「少しでも見えてくれればいいのに」
と思いつつ、白いヴェールが晴れることを願っていた。丸石から次郎笈へ

そして、この時見た風景は、縦走も終りに近づき、
「わずかでも自分たちが歩いてきたルートが見えれば。」
との思いが通じたようにも感じられた。

気持ちのいいササ原をスーパー林道への下山路分岐まで下ると、今日最大の登高が始まる。次郎笈への登りだ。

一歩々々、歩を進めると、微かな思いが通じたのか高度が高くなるに連れ風が強くなるとともに登山路から次郎笈が望めるようになってきた。(表題画像)

少々急坂だが、展望が利くようになったことにより、そうきつく感じないような気がするから不思議なもの。

更に高度を上げ振り返ってみれば、間近に丸石東面のササ原が広がり、その向こうに高ノ瀬やさらには白髪山。目を右に転じれば、いつの間にか三嶺も見えるようになっているではないか。
次郎笈巻き道より剣山〜二の森
見上げれば次郎笈山頂の道標もはっきり見てとれる。
「自然の摂理とは言え、何でも念じてみるものだ。」

雨は降り続いているが、とりあえずこれだけの展望を得られれば頑張り甲斐があるってもの。

時間的な問題から次郎笈はパスし、トラバース道をほぼ水平に進む。

水場で土産の水を汲みジロウギュウ峠からはいよいよ今縦走のフィナーレ、剣山への登り。

左手、祖谷谷を隔て塔の丸や三嶺、その左手にはわずかに西熊山の稜線と、昨日、今日と歩いてきたルートが雨にもかかわらず意外によく見える。

もちろん背後には間近に次郎笈の勇姿が聳え、雨が降っていることを忘れさせてくれる景観が広がる。晴れていればこの上なしだが、これまでに散々雨やガスにたたられっ放しだった者にとっては見通しがあること自体で大満足。剣山山頂(遠景は塔の丸)

充実感に浸り、噛み締めながら一歩、また一歩と歩きつづけるとやがて山頂の道標が見え、無人の静かな剣山山頂に到着する。
こうして雨中の天狗塚〜三嶺〜剣山を無事踏破したのだった。

一瞬足りとも太陽の顔を見ることなく縦走を終えることになり、決して風景、眺望を満喫出来たとは言えず心残りの部分も大いにあるが、違う方面から見れば、これだからまた来てしまう自分がここに居る気がしてならない縦走だった。

剣山山頂ヒュッテに立ち寄り、新居さんとしばらく談笑の後、西島、見の越へと下山。

Kさんの車で西山林道・登山口へ我が70を回収に向かい、下山後、林道基点、久保からはそれぞれ帰路に着いた。

◆【その他の三嶺の記録はこちら



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