◆【山行日時】 2003年10月12日〜13日
◆【コース・タイム】
□10月12日 ガス時々風雨
峯越林道・白髪山登山口駐車場=40分=白髪山山頂=25分=白髪別れ=5分=白髪避難小屋
=35分=カヤハゲ=55分=三嶺山頂=5分=三嶺ヒュッテ(名頃方面水場往復=25分)
□10月13日 ガス一時雨
三嶺ヒュッテ=10分=三嶺山頂=30分=カヤハゲ=25分=白髪別れ=25分=白髪山
=20分=駐車場
◆【正味歩行時間】
□10月12日 3時間10分(トータル) 2時間45分(水汲み含まず)
□10月13日 1時間50分

◆【詳細】
「昨年秋に見たような見事な光景を今年も!」
体育の日の連休を利用し前日(11日)の夜、高知側の三嶺登山口である光石へ向け車を走らせた。
物部村大栃からR195をそれ、西熊渓谷へ向け走るようになると対向車は皆無となり、か細くなった道をどんどん山奥へと入って行く。
上韮生川に沿って付けられた道路は、小さな橋を右へ左へと渡りながら、また時折ある小さな集落の軒先をすり抜けながら次第に高度を上げ、奥へ奥へと続く。
辺りが暗いからといって、おかしなことを考えずに運転しないと、ふとよからぬ事を考えようものなら、つい想像したものが眼の先に出てきそうなほど心細く、スギ林を通過する時などは一層暗さが増し、早く通過したい一心で、ついアクセルを深く踏んでしまう。
「おっといけない。カーブだ。ブレーキング。」
すぐにカーブが待ち受ける。
これを何度となく繰り返す。ただ、せめてもの救いは、今は雨が落ちていないことか・・・。
最終のバス停のある久保影集落(といっても、ほんの数件の民家しかない小さな集落)を過ぎると民家はなくなり、道幅同様、気持ちも更に心細くなる。
ヘアピンカーブも現れ出すと一気に高度を上げるようになり、やがて西熊渓谷の西熊茶屋を通過。V字谷の渓谷を離れ、更に何度もヘアピンカーブを繰り返しながら細い道を登って行くと、ようやく登山口の光石に到着する。
確かに三嶺は人気の山だし、明日、あさってと連休だ。しかし、あいにくのこの天気。もし駐車場に一台の車もなかったらどうしよう。不安な気持ちが頭をよぎる。
これまで暗闇の中をたった一台でずいぶん長く走ったせいか、気が小さくなってしまいこんな事を思ってしまった。
ところが、いざ光石に着いてみると
「やっぱり人気の山!」と言うか「ただ単に物好きが多いのか?」
駐車場には広島、福山、愛媛、香川、といった近隣県からや地元、高知ナンバーの車が約10台。
なかにはいかにも一夜をここで明かそうとする車も見うけられ、真っ暗なものの少し安堵する。
ここには、あと2〜3台しか置けない状況も、なんとか隅っこの狭いスペースに駐車し今日の寝床とする。
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光石登山口・駐車場 |
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明けて12日、就寝前から降り出した雨は止むどころか一層強くなっていた。
「今日は暗くなるまでにどこかの小屋にたどり着けばいいので時間はたっぷりあるのだが・・・。」
天候さえよければ、堂床からさおりが原経由しカヤハゲへ上がり、白髪小屋で一泊。軽荷で展望の良い白髪山山頂、もしくは白髪分かれへ足を運び、そこからの夕日や朝日を見る。
翌日に三嶺山頂へ上がり、天候次第でフスベ谷を直接堂床へ下るか、いつものようにゴールデントレイルを西熊山へ向かいカンカケ谷を堂床へ下る。
前日までにこんな計画を立てていた。
天候にさえ恵まれれば大展望を欲しいままに出来ると思いこのルートを考えては見たが、天候が崩れたりガスられたりで眺望が利かなかったりすると、少しきつい気がしないでもなかった。
そして今、雨が降り続き、天気予報でも今日はおろか、明日の天候もままならないことを伝えている。
「計画変更ッ!」
遅めの朝食を摂りながら予定変更し、今度はこんな計画を立ててみた。
この連休、天候回復は見込めないとし、光石からの周回はあきらめ高知側からでは三嶺まで最も短時間で登れる白髪山経由で三嶺を目指す。
この際、宿泊地は三嶺ヒュッテとし、予報に反し明日、天気回復するようなら、そこから西熊山ピストンし、そうでない場合はそのまま登ったルートで登山口へ戻る。
白髪山登山口まで車を上げることにより光石に下山することは出来なくなり、このような計画に変更せざるを得なくなったが、雨の降り続く空を見ればいたしかたなく、しぶしぶ登山口へと車を走らせることにした。
こう決めた時点で、今回目的としていた白髪山からの朝夕の写真撮影はあいにく白紙となってしまった―。
光石からしばらく峯越林道を走り、更に高度を上げる。やがて白髪山登山口に着くと、さすがに我々以上の物好きはいなかったようで、ここには駐車車両はなかった。
「ちょっと待てよ・・・。」
「と言うことは、本日一番の物好きは・・・。」
「・・・。」
雨の止み間を待つが、なかなか良いタイミングがなく、小降りになった頃を見計らって出発する。
結局、駐車場からは白髪山の山頂方面を望むことすら出来ず、わずかにササ原の広がる斜面を見ただけで山中へ足を踏み入れることになった。
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峯越林道・白髪山登山口 |
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樹林帯を行く |
ほんの少し感じのいい樹林帯を行くが、すぐに苦手の丸太階段の登山路となる。
次第に登山路の傾斜は増しジグザグに急登する。何度か同じような道を繰り返すように登り、少し飽き気味なった頃、右手に小さな露岩が現れる。
そのすぐ先でようやく樹林帯を抜け、ササ原を歩くようになる。展望が利く日なら、これまでの樹林帯からでさえ白髪〜白髪分かれや高ノ瀬への稜線、背後には石立山が見えたりもするのだろうが、あいにく今日は展望の利くササ原を歩くようになっても一切展望は得られない。
更にもうしばらくジグザグに丸太階段の登山路を急登する。
心なしか登山路の傾斜が緩くなり、真っ白ながら空が近づいたように感じ始めると、正面に首をかしげた標識が見えてくる。
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展望皆無、白髪山山頂 |
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左、白髪山、右、剣山を示す標識 |
この分岐を左へ行けば白髪山、右へ行けば剣山〜三嶺への稜線だ。
白髪山頂へはこの分岐から左へ50歩も歩けば到着する。
晴れていれば、いかにも展望のよさそうな山頂だが、辺り一面真っ白け。
また、山頂から少しばかり先にある大きな露岩に上がれば、そこからは大展望を得られることを察知するのは容易なだけに、ここでは目の前に広がる白いモヤモヤが一段と恨めしい。
長居しても展望を得られるわけもなく、ここは早々に山頂をあとにする。
先ほどの分岐まで戻り、標識に従い剣山方面に向け進む。
すぐにウラジロモミなどの樹林帯に入り緩やかに下って行く。しばらく樹林帯の歩行ながら、登りはじめの登山路同様、展望があればそれを楽しみながら歩けそうなものだが、この天候ではそれもなく、緩やかな尾根歩きもさほど楽しくない。
登山路に露岩が現れ、今度は緩やかに登るようになると白髪別れは近い。
潅木帯の細い尾根道を歩くようになり右手に窪地を見ると間もなく白髪別れ分岐に着き、ここで剣〜三嶺縦走路と合流する。
大展望の広がる白髪別れのピークはすぐそこだが、雨も降り続き展望があるはずもないので、ここではあえて逆方向の白髪小屋へ向かい休憩することにする。
今日のような荒天時には雨風に打たれることなくゆったり腰を下ろせる避難小屋のありがた味をしみじみと感じる。
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ササ原に建つ白髪避難小屋 |
しばらく休んだら三嶺へ向け出発する。
先ほど来た道を白髪別れへ少し登り返す。
もちろん展望はなく先を急ぐ。ピークからは急坂を下り、小ピークを越すともう一度同じような急坂を下る。
カヤハゲへの登りとなるとさおりが原への分岐、韮生越えを見てもうしばらく登る。ササ原を歩き大きな露岩まで来ればカヤハゲ到着だ。
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カヤハゲのコメツツジ |
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展望皆無、カヤハゲにて |
近づきつつある三嶺もここでも見る影はなく、真北を向きその姿を想像しようとするものの、目の前には白い邪魔者が右の四ツ小屋谷から左のフスベ谷に向けどんどん流れ、想像するに及ばない。
カヤハゲをあとにすると、少し下ったあとは三嶺山頂へ向け徐々に高度を稼ぐ。
大岩手前で登山路の傾斜は一旦緩むものの、ここからが三嶺へ向けての最後の正念場。
クサリの手も借り大岩を右から巻いたら、引き続き急登する。
辺りの木々は無くなるが一向に展望は利かず、風当たりも最もきついので飛ばされないよう身をかがめながら慎重に一歩、また一歩と歩を進める。
やがて傾斜が緩くなるとと、ようやく三嶺山頂に到着。
悪天候の中たどり着いた割には特に感慨めいたものはなく、また、この風雨、誰も居るはずもなく記念の一枚を撮り、早々に小屋へと急ぐ。
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もちろんここでも展望皆無、三嶺山頂 |
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三嶺へ向かう人たち |
今日これまで人に出会ったのは白髪小屋で休んだ際、四ツ小屋谷から上がって来られた4人のみで、縦走路では誰にも出会うことはなかったが、山頂から小屋へ向かい出すとホンの短い距離ながら、名頃からのコースで登ってこられたと思われる人が次々に現れ、こちらのコースで登られる人の多さに感心する。
小屋に着いたのは、ちょうど13時頃だった。
小屋に入ると、お昼どきということもあってか、一階の板の間にぐるーッとひと回り腰を下ろした人たちがいた。
ちょっと場所を空けてもらい定番の右奥に陣取りザックをとく。
しばらく休むうち食事が終わり小屋を後にする人たちと入れ代るように、若い二人連れがやって来た。
風体からして、どうやら彼らもここで泊りのようだ。後で解ったことだが彼らは光石から峯越林道を最終まで歩き、さおりが原、カヤハゲを経由してここまで来たらしい。
元々こちらが考えていたコースとほぼ同じルートでここまで来た彼らと相対し、白髪山経由でここまで来てしまった自分と彼らを比較して、
「この違いは年齢の違いに他ならない。」
「年齢に勝るものはないのだ。」
と自分を諭すのが精一杯だった。
雨は一向に止む気配はなさそうだが、一休みしたら少し下方の水場へ水を汲みに行く。
水に関しては、この雨が昨夜来の雨でもあり水場の水の濁り具合が少し心配だった。
案の定、満タンとなったボトルを見るとかなり濁りがあり、このままでは飲めたものではなさそうだ。
せめてもと思い、少し上流へと足を運び、岩から染み出る小さな雫に近いような流れから汲み取ってはみたものの、さほどの違いはなさそうで、
「コーヒーになら十分使えるか・・・」。
半ばあきらめつつ満タンになったボトルを抱え小屋へ戻る。
三嶺の池手前の急坂で今朝、白髪小屋で出会った4人パーティーとようやくここで遭った。
ホンの短い挨拶を交わし別れたが、その中に、あれ以来姿を見なかったことに、お互いがお互いを少し心配していた様子が見て取れた。
これでこちらは小屋へ、あちらは下山路へ安心して向かった。
小屋へ戻っても相変わらずの賑わいで、少しごった返した感じ。日帰りの人たちの出入りがあるようだ。
それでも15時頃になると、出入りは幾分少なくなり
「今日はきっとここでの宿泊者は3人だな」
こう思っていた。
ところがこの憶測に反し、この後、夕暮れまでに泊りの3〜4人パーティーが次々到着。
結局、宿泊者はこの荒天にもかかわらず20〜25人となり、三嶺の人気ぶりをうかがわせた。
夕食後、隣り合わせとなった例の若い二人としばらく談笑し、眠りについた。
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三嶺ヒュッテ |
早朝の目覚まし代わりは、けたたましい雷鳴と、あたかも誰かが小屋の窓を外部から大きなサーチライトで照らしているかのような稲光だった。
夜明け前の風雨、雷鳴は兎に角凄まじく、かつて、やはり夜中、大山・ユートピアで間近に聞いた雷のことを思い出した。
幸いその時とは小屋の規模や耐久性、同宿者の数が比べものにならず、今は安心して、ただただ嵐が収まるまで時間が経過するのを待てば良いのが救いだった。
外が徐々に明るくなるに連れ、雷鳴は収まる傾向にあった。
少々の雨は何とかなるが、これに風が伴うと歩行はかなり困難だ。更に雷となると・・・。これはもう外を歩くことは出来ない。
何とか食事を摂る間に賑やかだった外も静かになり、最悪の条件は免れた。雨は降り続いているが、これくらいなら歩行には支障なさそうだ。
時間の経過とともに、三々五々出発して行く中にあって、昨日の若い彼ら二人はお亀岩まで行き、さらに天狗塚ピストンし、カンカケ谷を光石へと下山するという。
少し無謀とも思えなくはないが、
「これもやはり年齢の成せる技か!?」
しばらくしてこちらも雨の中、小屋を後に帰路に着く。
三嶺山頂に着いても何も見えず、早々に急斜面をカヤハゲめがけ下る。
一面真っ白で何も見えず、ひたすら足元を見ながら注意深く歩く。大岩を巻き潅木帯に入ってしばらくした時
「ガサガサッ」
何やら動いたと思い、ふとその方向に目をやると逃げ去る野生のシカがそこにいた。
クマと遭遇すると怖いが、シカくらいなら大丈夫だろうから、出来るならもっと近づくまで逃げないでいてくれたらよかったのにと、かわいいお尻を見てこんなことを思ってしまった。
とは言っても野生のものに違いないのだから、実際遭遇すると何をされるか分からないのに、こんなことを思うのだから、今日はいかに目にするものがなかったということだろうか・・・。
カヤハゲからはササ原を縫ってしばらく下り、韮生越えを過ぎ、二度、急斜面を少し登り返すと白髪別れに着く。
三嶺からここ白髪別れまでに出会ったのは、シカ以外では昨夜、白髪泊りの4人パーティーのみだった。
ここでも昨日同様、展望はまったく得られなかった。
白髪別れでルートを右に取ると、今回の山行も終盤。
しばらく下った後、尾根道をのんびり歩く。登りに転じるとやがてササ原に出て、白髪山山頂。
今回の山行ではここが最後のピークでもあり取りあえず雨が落ちていなかったのでのんびりする。
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祝!阪神優勝、白髪山で乾パーイ |
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白髪山の露岩からの展望はこれが精一杯 |
その間には山頂先の露岩にも足を運んでみたが、真下に見える紅葉した木々を目にするのが関の山だった。
しばらくすると池田町からという、お父さんは自身より少し年配、息子さんは高校生くらいの親子連れが上がって来られた。まさかこの天候の中、ここに人が来ようとは思っても見てなかったので、いささか驚いてしまった。
話してみると、この親子は三嶺まで行く気で来られたらしいが、あいにくの天候にこの後、白髪別れまで歩き白髪小屋方面へ下ったところから峯越林道へ下るとの事だった。
さて、こちらは、登山口まで下るのみだ。
ササ原につけられた丸太の急坂をぐんぐん下る。展望はないので、急ぎ足になろうとも何の後悔もない。
樹林帯に入ってもどんどん下るのみ。
丸太の登山路を何度もジグザグに下り、傾斜が緩やかになると、やがてアスファルトの林道に出る。
駐車場はすぐ目の前だ。
ところで、白髪山で出会った池田からの方から思わぬ情報を得た。
まずひとつ。ここ白髪山へ登る際利用するこの駐車場へ来るには、西熊渓谷や光石経由よりも別府峡経由で来たほうが山道が短く時間的にも早い。
(いかにも『急がば回れ』的)
さらに、自身が西熊渓谷経由で帰路に着こうとしているのは、その道中(厳密に言えば少しそれた場所だが)にある笹渓谷温泉に立ち寄るためだが、上で紹介した別府峡経由で帰路に着いても別府峡温泉やR195を高知方面へ走り出してからも、大栃までに何軒かの温泉があるらしい。
耳寄り情報を得て、こちら方面へ来た時の定番は『笹温泉』だったのに、どちらを帰路として選ぶべきか気持ちが揺らいだ。
「別府峡温泉か・・・、でも未知数だし・・・。」
「時間もまだ早いし、ゆっくり下り笹温泉に浸かってのんびり帰るか。」
結局、西熊渓谷を下り笹温泉に立ち寄ったあと家路に着いた。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
三嶺の高知側のメイン登山口・光石駐車場、トイレがあり、10数台駐車可。満車の場合、少し上方にも駐車場あり。
白髪登山口にも立派なトイレと光石よりも更に広い駐車場(非舗装)あり。20台程度駐車可。
◆【昨年(’02)の画像一覧は下画像をクリック】

◆【その他の三嶺の記録はこちら】
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