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時刻はすでに12時前になっていたが山頂でのんびり昼食を摂るのを楽しみにし、準備が出来たら、あえて腹ごしらえはしないまま歩き出す。
これから登ろうとしている礼文岳は礼文島では最も高い山だが、標高は490メートルに過ぎない。
しかし、登山口がほぼ海抜ゼロメートルであることから山頂までの標高差は約490メートルである。
こう考えると、標高が低いからといって決して侮ってはいけない。
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ササ原のなかの登山路を緩やかに登る |
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鉄製の立派なハシゴを上り歩き出すと、いきなりジグザグの急登。とたんに大汗が噴出す。
道端の高山植物を見ながら少し歩くと登山路の傾斜は緩やかになり、丘の上のようなところをチシマザサを縫って歩くようになる。
この辺りでは右手遠くに山頂部をガスに覆われた山が見えた。
「もしかして、あれが礼文岳?」
ずいぶん遠くに見えたので、
「それはないよな〜。」
と思ったが、実際はそれ(その付近)が礼文岳だった。
気持ちのよい針葉樹帯や広葉樹帯を歩き、これまでに比べると少し長めの上り坂を登り切ると展望が開けるササのピーク(314ピーク)に出る。
ここで初めて山頂手前ピークや、わずかに礼文岳山頂部が見える。
一旦下ったあと上り返すとハイマツのピークに出る。
このピークから見る礼文岳は高山の様相で、決して490メートルの山には見えず堂々としている。
山頂部は「西に厳しく東は穏やか」というこの島の特徴どおりで西側はハイマツに覆われ、東側は潅木の広葉樹。(表題画像)
展望があれば目の前の礼文岳はもちろん背後には利尻山の雄姿が見えるはずだが、目の前の礼文岳さえ山頂部にガスが流れ、はっきりと見ることが出来ない。
そのなかにあって北部の眺望は少しあり、久種湖や金田ノ岬方面は望むことが出来たのはせめてもの救いだった。
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ヨツバヒヨドリとクロアゲハ |
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ツリガネニンジン |
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? |
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ヤマハハコ |
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314ピークより山頂手前ピークと礼文岳山頂をわずかに望む |
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礼文岳山頂 |
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ザレ場を少し下り潅木やハイマツ帯を縫ってしばらく歩くと、誰もいない礼文岳山頂に到着した。
さえぎるものは何もなく、見晴らしはこの上ないようだが、西側から次々にガスが流れ、残念ながら展望はほとんどないに等しかった。
すでに13時過ぎと少し遅くなったが、こうと決めていたとおり遅めの昼食を摂る。
「山頂での一杯は最高!」
昼食を終えかけたころ、例の彼も到着した。
彼は登山口で食事をしてきたようで、ここで食事は摂らなかった。
二人っきりでしばらく談笑ののち一緒に下山することにした。
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スコトン岬方面を望む |
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久種湖、金田ノ岬方面を望む |
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下山中にすれ違った中には利尻山でも見かけた人が何人かいたが、その人たちはこちらのことは分からない様子に見えた。
こう考えると、昨日も話し一緒に歩き今日もお互いを分かり合っていたことは、彼とは他の人よりも”縁”があったのかもしれない。
山頂で話した際だったか、下山中に話した際だったのか忘れてしまったが、下山後の行動を彼とともにすることにした。
あまりこんなことを強要するかのように迫るのは本意ではなかったが、話すうち彼の言動に無邪気さというか、ひたむきなところというかを見たような気がして、つい
「車での移動で行動範囲を広げてあげよう。」
と思った。
つい数年前までは、こう思われる立場であると思っていたのに、いつのまにか逆の立場になってしまった自分に少しばかり寂しさを感じた。
小ピークで振り返っても山頂部に時折ガスが流れる状況は上る際と同じで、くっきりとした礼文岳を見ることは出来なかった。(表題画像)
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内路集落を見下ろす |
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登山口の鉄ハシゴ |
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緩やかに下るようになりササ原を歩くようになると内路付近の海岸線が間近に見えるようになる。
ササ原をジグザグに急下降すると港や道路が真下に見えるようになり、擁壁に掛かる鉄はしごを降りると登山口に着いた。
標高490メートルの礼文岳は登山口から山頂までの標高差と水平距離があるため、標高以上に歩き甲斐のある山だった。
約束どおり彼とともに車に乗り込み、先ずはレブンアツモリソウが残っていると聴いた高山植物園へと向かった。
つづきは『花の浮島 礼文島を歩く その1』 |