利尻山(利尻富士)

8合目、長官山より見る利尻山
◆【山行日時・天候】 2006年8月14日
鴛泊コース   北麓野営場〜長官山〜利尻山往復    曇り時々晴れ (中腹は概ねガス)
パタゴニア


◆【記録と画像】

ファミリーキャンプ場「ゆ〜に」を5時過ぎに車で出発。利尻山鴛泊コースの登山口・北麓野営場は徒歩ならここからでも1時間近くも掛かるが、車なら5分ほど。

準備が出来たら早朝のキャンプ場を通り、歩き出す。5時30分

このキャンプ場も「ゆ〜に」同様、大賑わい。

「ゆ〜に」では登山者はもちろん、それ以上にファミリーキャンパー多かったので、小さなテントよりもむしろオートキャンプ用の大きなテントが目立ったが、ここでは登山者やライダーのキャンパーが多いのか大きなテントは少なく、小さなテントが目立つ。

遊歩道を少し歩くと日本名水百選にも選定されている甘露泉水。

水を汲み歩き出すと登山路となり、すぐにポン山、姫沼分岐を見る。

北麓野営場 甘露泉水
北麓野営場
甘露泉水
木製の乙女橋を渡り、4合目・野鳥の森を過ぎる辺りは針葉樹の原生林を見ながら緩やかに登る。

5合目を過ぎると登山路の真ん中に大きな岩が現れ、この上に上がれば視界が開けそうだが、あいにくのガスで思ったような眺望はない。

潅木を縫って歩くようになると次第に傾斜は増し、ハイマツの切り開きの6合目・見晴台でも展望はなく西側にハイマツの尾根を見るのがやっと。

何度も何度もジグザグに歩くようになり、7合目を過ぎても、なお同じような道ばかり。

この付近は七曲りというらしいが、実際の曲がり角は七つどころではなく、その数は数え切れない。

それでも、潅木のトンネルを抜け露岩の第2見晴台まで来れば、ようやくガスの上部に出たようで、展望が開ける。

雲海の彼方には辛うじて礼文島の島影も確認できるようになり、少し前からちらちらとは見えていた沢の向こうに見える尾根や、ハイマツ帯の上方に長官山の稜線もはっきりと見えるようになった。

潅木のトンネルを行く 第2見晴台より長官山(左)稜線を見上げる
潅木のトンネルを行く 第2見晴台より長官山(左)稜線を見上げる
「あそこまで行けば、利尻山が見えるはずだ。」

「もう少しで写真で何度も見た、長官山からのあの光景をこの目で見ることが出来る。」
この思いを励みに頑張る。

やがて、ようやく8合目・長官山の稜線に出ると、そこには机上で何度も見たはずの光景とはずいぶん違った光景が広がった。

目の前にようやく姿を現せた利尻山は、写真や想像を遥かに越える大きさで聳え立っていたのだ。
(表題画像)8時07分

「素晴らしいじゃないか

山頂までは距離も高度も、どちらもまだずいぶんあるように感じられたが、それよりもまず、この光景を目にできたことのほうが感激だった。

登山路とは反対側の三角点まで行ったりしてしばらく過ごしたら、尾根上を歩くようになった登山路を山頂目指し歩き出す。8時35分

コル状となった避難小屋付近の稜線を時折ガスが流れ、山頂部にも東壁側からガスが湧くので、稜線からはほとんど展望は得られないが、それでも気分は爽快。これまでの樹林帯歩きとなら、気分は晴れ晴れしている。

避難小屋を過ぎると登山路脇にはお花畑も見れるようになる。

”トリカブト街道”を思わせる、登山路脇にトリカブトが咲き乱れる箇所を過ぎると右手には大きな崩落を見ながらの歩行。

ザレ場も歩くようになり右手下方に顕著な尾根、三眺山が見えてくると、やがて”ここからが正念場”の9合目。

トリカブト街道 シュムシュノコギリソウ
トリカブト街道 シュムシュノコギリソウ
ハイオトギリ タカネナデシコ
ハイオトギリ タカネナデシコ
長官山(右)稜線を振り返り見る(中央に赤屋根の避難小屋が見える) ザレ場の難所
長官山(右)稜線を振り返り見る(中央に赤屋根の避難小屋が見える) ザレ場の難所
土留めのザレ場を行くと沓形コースとの合流点。山頂までは、あとひと登り。

崩壊の激しいザレた道をロープの手を借り登る。

ザレ場が終わると岩稜の上に出て、目前となった山頂の社と意外大きさでそそり立つローソク岩が目に飛び込む。

立派な社の建つ山頂へは、ホンの少しで到着。10時05分

北峰(左端)とローソク岩 山頂(北峰)より見るローソク岩と三眺山
北峰(左端)とローソク岩 山頂(北峰)より見るローソク岩と三眺山
ところで、この山は甘露泉水を過ぎた付近を歩いているうちから、辺りの景観が鳥取の大山と少なからず似ていると感じていた。

ここまで来てみて、他にも類似点がないかと頭を廻らせて見ると、やはりいくつかあった。

まずは、何といっても標高がほぼ同じ。

それぞれの山の標高としている一般的な高さは、大山(弥山)1,711メートル、利尻山(北峰)1,719メートル。

最高点も大山(剣ヶ峰)1,729メートル、利尻山(南峰)1,721メートル。

緯度はずいぶん違うので四季における環境はずいぶん違うだろうが、標高だけをとって見れば、ほぼ同じといっていいだろう。

ともに噴火活動により形成された山のため、今は崩壊の激しい山であり、山自体が絶えず崩落を繰り返している。

それゆえ、本来、最高点は違う場所にあるにもかかわらず(大山=剣ヶ峰、利尻山=南峰)、そこまでのルートが危険を伴うため、あえて標高の低い場所を山頂としている。

決してよい傾向とはいえないが、オーバーユースによる登山路の痛み具合も非常によく似ている。

別名も伯耆(ほうき)富士と利尻富士。

探せばまだあるだろうが、これだけをとってみても共通点の多い山同士に違いないだろう。

となると、大山ではあくまで剣ヶ峰=大山だと思っている自身にとって、これだけ似たところのある利尻山で最高地点の南峰の頂を踏まずして下山できようか。(ただ単に最高点に立ちたいだけ)

最高点の南峰への道は、山頂部に想像以上に大きく聳えているローソク岩を間近に見る、社の左奥辺りから踏み跡がある。(本来は通行禁止)

一度、ローソク岩方面へ延びるルートをとり、ローソク岩を山頂(北峰)よりもさらに近くで見てみる。

お花畑のかわいい花と黒く聳える岩峰とのミスマッチが奇妙にも見える。

山頂(北峰)方面からは名前のとおりローソクのように太長く見えるこの岩峰も、歩くほどに形を大きな三角に変えて行くから、あら不思議。

ローソク岩の下方には雲海が広がり三眺山の稜線がそのの上に浮かぶ。高度感抜群の光景が広がっている。

南峰へのルートへ戻ったら南峰へと向かう。

踏み跡はそれなりにあり、細い尾根上を進むので迷うことはないが「一歩間違えれば、あの世行き」の岩場の下降もあるので一瞬たりとも気を抜くことはできず、そこの通過時の緊張感は最高潮。バランスを崩せば奈落の底へ吸い込まれていくに違いない。

それも含め20分ほど緊張の歩行をすると最高点、南峰だ。

草付きの山頂は平らなところはほとんどなく、とんでもなく狭い。広さは一坪程度だろうか。

南峰より北峰を見る 南峰方面より見るローソク岩
南峰より北峰を見る 南峰方面より見るローソク岩
ここへは自身を含め四人で一緒に来た格好だった。

一人は沓形コース分岐辺りから見かけるようになった、大きなザックを背負い上げていた単独の青年。

もう二人は同じパーティーで昨日にも港近くで見かけ、今日は登山口から抜きつ抜かれつしながらほぼ同じペースで上がってきた青年たち。

次々に登山者が押し寄せる北峰に対し、ここは静寂そのものでゆっくりしたいところだが、この山頂にはそうしてはいられない不思議な空気があった。

特異な形の尖峰
ヤムナイ沢方面の特異な形の尖峰
それは狭さから来る恐怖感なのか、もし一人取り残された際の孤独感なのか分からないが、
「この皆と一緒に北峰へ戻らないと、どうなるか分からない・・・。」

往路での最大の難所、垂直の岩場では身体を引き上げることが出来ず、ザックを先に岩の上へあげたうえ、空身になりようやくクリアーすることが出来た。

ここを通過出来たことで一気に恐怖感から解放された。北峰へ戻ったら元の形に戻ったローソク岩を正面に見て昼食とする。

しばらく北峰上でのんびりしたら往路を下山する。11時50分

山頂直下の急なザレ場の難所はロープの手を借りれば、上りの際感じていたほどの苦労はなく、いつの間にか通過していた感じだった。

沓形コースを左に別け、なおもザレ場を下ると潅木帯を歩くようになる。避難小屋を過ぎると一度、尾根を緩やかに下るようになり、やがて長官山。

この山はここからの下りが長い。(上りがあれだけ長かったのだから、当然といえば当然)
これ以降は潅木にさえぎられ眺望もほとんど得られないので、枝や足元に注意しながらひたすら下る。

鴛泊ポン山と鴛泊港、ペシ岬 4合目 野鳥の森
鴛泊ポン山と鴛泊港、ペシ岬 4合目 野鳥の森
下るほどに、あることが唯一の目的であり、また楽しみとしながら歩く自分がいるような気がしてきた。

それは3合目の甘露泉水の水。

兎に角、暑かったので早くあの水源に辿り着きたい一心だったような気がする。

このとき、すでに充分持ったはずの水ももう底を付いていた。(これを楽しみとして最終の休憩時に飲み干していた)

まだかまだかと、焦がれるように歩を進める。

「4合目は過ぎた。乙女橋が現れれば、もうすぐだ。」
こう思えば思うほど、なかなかそれが現れない。

乙女橋 甘露泉水
乙女橋 甘露泉水
ようやく橋を渡ると姫沼分岐。東屋が見えたら待ち焦がれた甘露泉水到着だ。

一目散に駆け寄り、コップに汲んだ水を一気に2、3杯も飲み干す。

「ウマ〜い
「この水、こんなにウマかった?」

水は長く手をつけていられないほど冷たく、今朝ほども飲んだはずなのに到底同じ水だとは思えほど冷えていて美味かった。

「これは、これまで飲んだ中でも最高だね

6合目付近で出会ってから、ほぼ下山をともにしてきた苫小牧と神奈川・大和からの人も異口同音にこう言葉を発していた。



ハイキング気分でこの水を汲みに来ている人を何人か見かけたが、この人たちと山から下りてきたばかりの我々では水の味もずいぶん違うのだろうと感じずにはいられなかった。

立派な遊歩道をもう少し下ると、野営場に着いた。14時50分

一緒に下山した彼らとともに車に乗り込み、キャンプ場へと戻った。(同じキャンプ場で宿泊していた)



この時期、水は最低でも1.5リットルは必要だ。南峰へのルートは本来、進入禁止。

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