◆【山行日時】 2006年2月25日 晴れ
◆【コース・タイム】
千種町河内・入山口=60分=林道終点=45分=稜線=25分=竹呂山山頂
=35分=下、中ショウダイのコル=40分=三室山山頂
=40分=大通峠=50分=三室高原野活センター下・三叉路=20分=河内・駐車地点
(コースタイムはシール登高時間と滑走時間が混在しています)
◆【正味歩行時間+滑走時間】 5時間15分

◆【詳細】
夏道で三室山に達する際、熊岩の少し上方、パラグライダー滑空場付近から右手に見えるようになる竹呂山から続くこの尾根を目にするたび、
「いつか歩きたいな〜。」
と思っていた。
雪のない時期には
「この付近が尾根との分岐か?」
と、その場で思いを巡らせたこともあったが、そこはびっしりとクマザサが繁り、到底足を踏み入れられる状況ではなかった―
千種町河内、『三室渓谷・渓流荘』下の道路脇に駐車し、林道へと続く車道を短く歩いたら、除雪のされていない民家脇からは林道をシールで歩き出す。
すぐに、シカよけ(?)らしき立派なフェンス製ゲートがあるが、スキーやザック一式を先に投げ入れたら、わずかに開く観音開きのゲートの中央部を何とかすり抜け奥へと入る。
林道は沢沿いに奥へと続いているので、それに従い登高するが、そのうちどうもこのルートが予定していた地形図にある破線のルートではないような気がしてきた。
やがて、右手に伐採地を見る『三室国有林』との案内板の立つ開けた地点に出る。(下、左画像)
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林道途中の標識 |
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後方に後山連山が見えるようになる |
前方にはここへと落ち込む大小いくつかの植林の尾根があり、正面のかわいらしい、ひときわ小さな尾根上にのみわずかに数本のブナが見られ、その尾根の両側から沢が合わさるようにここへと流れ込んでいる。
上方には稜線らしきスカイラインも見えるが、その形状や後方に見えるようになった後山稜線から判断すると、やはりこの谷は目指していた谷筋ではなく、一本南側の沢に延びる実線の林道の延びる谷のようだ。
「道理で、あの特徴ある植林の傘をかぶせたような竹呂山の山頂部が右手に見えないはずだ。」
思いとは違うルートで山中に入ってしまったが、稜線に向かっていることに違いはなく、林道はなおも奥へと続いているので、そのまま先へと進む。
かわいらしいひときわ小さな尾根の上部を歩くようになると大規模な治水工事の施された沢を横切り、目の前の尾根を左から回り込む。
稜線はこれまでに増して近くに見えるようになり、やがて林道は荒涼とした地点で小さな沢に行き当たり、終点となる。
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林道終点 |
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植林の枝尾根を登高 |
この地点にはあたかもここが登山路の始点であることを示すかのように、かなり薄ぼけているもののテープの巻かれた腰高ほどの一本の木が立てられてあった。(上、左画像)
小さな雪原を短く歩き、か細くなった沢沿いの左岸をしばらく進む。
次第に傾斜はきつくなり、エッジも利かせながらの歩行に少し緊張させられる。
「稜線は間近だが、さてどの尾根から取り付くか・・・。」
見えるのは左右に大きく長い尾根と中央に小さく短い尾根。
正面の小さな尾根が距離的には稜線まで最短のようだが、いかにも急そう。
左の尾根へは登れなくもなさそうだが、そこは南斜面なので日当たりが良いためか、植林の中に所々雪が切れている箇所が見受けられる。
一方、右の尾根へはやや急斜面ながら伐採地の真っ白の斜面が広がり、伐採地なので陽射しをさえぎるものが無いにもかかわらず、北斜面のお陰か雪の切れ目は見られない。
距離的には他の二つに比べると遠くなるが、このルートが最善とみて右の尾根に取り付く。
しばらく緊張しながらの斜登高を繰り返すと植林帯を上るようになり、もうしばらく緊張の斜登高を繰り返すと、ようやく見上げていた小さな尾根上に出た。(上、右画像)
ここで緊張感から解放され、また傾斜も緩くなったので、気分的にずいぶん楽に歩けるようになった。
やがて再度、これまでよりももう少し大き目の尾根に出て、少し歩くとようやく稜線に出た。
これまでが、いわば林道や植林帯を見ての歩行のみだったので、ここで目にしたブナをはじめとした自然林はとても新鮮に感じられた。
梢の先には正面に小さな谷を隔て、こことそう変わりのない高度の短い尾根と、右手少し遠目に大きな山があり、その手前に大きく高度を落とした鞍部。
この風景から、ここが何処なのかしばらく把握できずにいたが、地形図で確認すると、正面の尾根は竹呂山南から南東に延びる尾根で、右の大きな山は植松山方面の山塊と手前の鞍部はカンカケ越えのようだ。
こうしてみると、幾重にも重なる尾根や谷が数多くあり、波賀の山々の奥深さを実感できた。
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稜線からは彼方に三ノ丸の雪原が見えた |
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稜線上より植松山方面 |
現在地を把握できたら進路を左(北)へとり、左手に植林、右手にブナも点在する自然林の稜線を緩やかに登る。
右手斜面に広がるブナ林は、千種側からは決して見ることの出来ない素晴らしいものだった。
やがて、梢越しの彼方に白い雪原が目に入るようになる。
初め、この雪原は思いのほか近くのように見えたことで、どこの雪原か分からずにいたが、実は三ノ丸の雪原だった。
実際はそこまでの距離が相当あるにもかかわらず至近距離に対象物があることで、想像以上に近く、大きく見えていたようだ。
やがて到着する竹呂山山頂は、どこが最高点かも分からないほどの平らな山頂部だった。
西方から眺めた際の先入観からか、「そこは四方を植林で覆われているに違いない。」と思いきや、とんでもなかった。
西側は例の植林に阻まれわずかに展望を得られる程度だったが、たとえこの時期ならではにしろ、東から北にかけては展望は想像以上にあり、自然林が広がっていることもあってなかなかの雰囲気の場所に感じられた。
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竹呂山山頂は傍らに小さな表札があった |
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竹呂山の主のような古木 |
山頂で短くその雰囲気を楽しんだらコルへ向け滑る。
ここはシールをはずし滑走したいところだったが、その後すぐに登りが控えていることや付近は雑木が密に生えていることから、シールを装着したままで滑り込む。
滑りが悪くスキーの回しにくさも感じたが、誤魔化しながら何とか滑る。
難なくコルまで下ったら、雑木に代わり再び現れるブナを見ながら登高。
ここから中ショウ台までの間は、このルートではハイライトといっても過言でないほどの素晴らしい場所だった。
兎に角、稜線から波賀側へと落ち込む谷合いにかけて広がるブナ林が素晴らしい。
滑るにも、もってこいの適度な斜面が広がっていた。
そのなかでも、やがて到着する下ショウ台(三室山南方、1,198ピーク)と中ショウ台間の台地状のコルは
「郷からそう遠く離れていないこんなところにも、これほどの素晴らしいところがあったのか。」
俗世間とはまったくかけ離れた最高の場所だった。
「待てよ〜」
「この空間。これまでにも、どこかにもあったぞ・・・。」
と、自身のこれまでの山行に想いをめぐらせてみる。
「そうだ、県北、但馬の仏ノ尾。」
あの山頂付近で味わった雰囲気とそっくりだった。
もちろん展望にも優れ、正面に三室山本峰(ショウ台)方面を間近に、また西に後山〜駒の尾〜ダルガ峰稜線やその彼方に那岐連山を望む。(表題画像)
南東の開けた谷の彼方に播磨の山々が肩を並べ、のんびり横たわる。(下、右画像)
周りにはブナが点在しているから自ずと最高のロケーションとなる。
いくらでも居たい気分だったが、しばらくその空気をたっぷり吸い込んだら、左手前方にやや大きく見えるようになった三室山本峰を目指し進む。
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コルより三室山本峰方面(左端)〜中ショウ台(右)を見る |
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コルからは播磨の山々がよく見えた |
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中ショウ台南斜面より後山〜駒の尾山 (左は日名倉山) |
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中ショウ台北方より氷ノ山方面 (右は赤西1,202ピーク) |
目の前に広がる「滑ったら気持ちよさそう」な斜面を、よだれをぐっと我慢しつつ斜登高でこなしたら中ショウ台に立ち、最後のコブへはもう少しの登り。
このコブは一度、ピークまで達したが、その先で短いながらとんでもなく急な雑木の斜面に出くわした。
あえなく少し戻り、急斜面の波賀町側を慎重にトラバースしたら、いよいよ最後の登り。
左に見えるようになっていたパラグライダー滑空場が低くなると、夏道の稜線と出合う。
振り返り歩いてきた方向を目で追いながら
「ようやく、あの尾根を上がってこれた。」
充実感で一杯だった。
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山頂手前よりたどって来た尾根を見る (後方は植松山) |
山頂はこの感慨が覚めやらぬほどの至近距離。
誰もいない山頂は着いたら着いたで、氷ノ山は大きく翼を広げたように、その左の扇ノ山は小さく手を広げて迎えてくれ、先ほどの感慨にも勝るとも劣らない素晴らしい光景が広がった。
この光景は何度も見たはずだが、これまでに見た以上に素晴らしく感じたのは、ここまでの所要時間がこれまでになく長かったからに違いない。
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三室山山頂西方より氷ノ山 |
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三室山山頂より氷ノ山 |
360度の大展望を楽しんだら、ようやくシールをはずし滑降だ。
県境尾根に向かい真西へと滑り込む。
積雪充分で厄介者のササもほとんどなく、時折あるブナを縫って快適な滑降を楽しむ。
しかし、1,145付近の雪原まで下れば滑走はほぼ終わり。
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尾根上より滑走したルートや三室山〜中ショウダイ稜線を振り返り見る(中ショウダイ右下方にわずかに竹呂山山頂部が見える) 右、遠景は植松山方面 |
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尾根上より西望 奥に東山と手前に高倉、くらます |
あとは稜線通しに小さなアップダウンを何度か繰り返しながら西進。
右手下方に林道が近くになると、やがて中江大通林道、大通峠に降り立った。
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大通峠 |
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林道より三室山〜中、下ショウ台〜竹呂山稜線を見上げる |
ノー・トラックの林道は昨年同様、あまり滑らず、漕ぎとスケーティングも交えての滑走だった。
「さすがに今年は誰にも会わないよな〜。」
と、思いつつ、昨年70と出遭った地点まで来てみると、近くには物体は見当たらなかったものの、遥か下方の林道に目をやると
「うっそぉ〜。」
真新しそうなわだちが見えるではないか。
「チャレンジャーは今年もいた。」
しばらく下ると、ヘアー・ピンカーブ手前でようやく先ほど目にしたわだちの先端に出くわした。
「でも、何か変。」
わだちは途切れているのに、そこに車はなくUターンの痕もない。
ヘアー・ピンカーブを回り込むと、眼前にこちら向きのジープ・ラングラーが現れた。
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チャレンジャー |
オーバー・フェンダーをもはみ出したすごいパターンのワイドタイヤにタイヤチェーンで武装した様子は、昨年の70とそっくり。
話してみると、それもそのはず、70の彼らと同じグループの人だった。
昨夜から鳥取まで完走することを目的にこの林道に入ったらしいが、車体にアクシデントが発生しあえなく先ほどのわだち終点地点から前向きのままバックで引き返されるところだった。
痕跡のワケもこれで理解できた。
その彼らとは今日、ここで合流するとのことだったので
「彼らにもよろしくお伝えください。」
と、伝言を残しその人と別れた。
伐採地を左に見て、なおも林道を下り、植林帯を下るようになるとようやくスキーが走り出し、間もなくすると野活センター下の三叉路に出た。
もうしばらくは道端の雪を選んで車道を下り、小さな橋の下方でスキーを脱いだ。
今日一日の余韻に浸りながらトボトボ歩くと、朝の駐車地点に着いた。
滑降に限れば山頂直下のわずかな距離を滑ったに過ぎなかったものの、山行全体を考えてみると以前より歩きたかった尾根を歩けただけにとどまらず、例のコルの存在を知ったことで播磨にもあれだけの思いもよらぬ場所があることを発見できた山行となった。
このコルは播磨地域にあって最高の場所であると自身は今、しみじみと感じているところである。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
荒天下に限らず雪山では充分な知識、装備をもって臨まなければなりません
なかでも地形図、コンパスはどのような状況においても最重要な必須アイテムです
◆三室山の他のコース・データを見る
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