仏ノ尾〜青が丸

青が丸より南望(県境尾根〜氷ノ山〜三ノ丸〜大段、三室山、東山、沖ノ山を望む(中央右の大きな山は陣鉢山))
◆【山行日時】 2005年4月9日  快晴
◆【コース・タイム】 
林道仏ノ尾線・駐車地点=2時間40分=仏ノ尾山頂=1時間05分=青が丸山頂

=1時間05分=仏ノ尾山頂=35分=林道=25分=林道・駐車地点
◆【正味歩行時間+滑走時間】 5時間50分

パタゴニア

◆【詳細】
先週の扇ノ山山行の際、小ズッコ手前〜大ズッコ〜扇ノ山から見た仏ノ尾〜青が丸稜線の見事なスカイラインが脳裏に残り、
「雪の消えないうちに・・・。」
登山口の美方町を目指し家を出た。

R9、春来峠手前を左へとり、矢田川に沿ってしばらく遡る。

やがて左上方には、まだ雪をたっぷりへばりつけた鉢伏山山頂部付近が目に入るようになり、そこがこれから向かう青が丸や仏ノ尾とほぼ同標高であることを思うと山頂付近の白さ加減が目に浮かぶようで、登高意欲が湧き上がる。

美方町市街地を過ぎ佐坊へ向け脇道をかけ上がるようになると、小代谷を隔て鉢伏山が高い。

佐坊集落の小さなお堂を右に見て、か細い道をさらに進むと民家の終わる地点で二俣に出合う。

左手へと進む道すがらに『仏ノ尾登山道』の標識を見出せるので、これに従い進むとこれまでに比べるといかにも林道風。

辺りに雪は見られなかったので、
「このままいくらかでも高度を稼げれば・・・」
と思ったのも束の間。

間もなくのカーブ脇の小さな空き地に1台の駐車車両。
「こんなところに置いて、どんな訳で・・・?」
不思議な気持ちながら、横目で見て車を先へ進める。しかしこのあとすぐ、なぜそこに駐車したあったか理解できた。

棚田の小さな田圃を道端に見て、左カーブに差し掛かったとき、いきなり道路上に残雪が現れたのだ。
小さなものだったので何度か車を前後させ乗り越そうと試みたが、こんなところでスタックしてしまっては元も子もない。早々にあきらめ引き返す。

こちらのような”能書き”らしき形跡は見受けられなかったが、おそらく、先ほどの車の持ち主も一度はここまで来たもののあえなく引き返し、そこに駐車したのだろう。

少し手前の田圃への農機具の入り口と思われる猫の額ほどのスペースに駐車する。
ここは、先ほどの車がすぐ下方に見える箇所だったので、距離的にはホンの10mほどしかかわらない地点だった。

準備ができたらスキーを担ぎ歩き出す。
残雪を見たカーブ地点をぐるりとまわり込むと、一本のスギの倒木が道をふさいでいた。
「無理して雪を乗り越さなくてよかった。」

やがて道を雪が覆うようになったのでシール歩行に切り替える。

何度かスキーを脱いだり履いたりを繰り返し林道を進むうち、左手には上方には雪をたっぷりかぶった青が丸の山頂部や幾分低くなった鉢伏山〜高丸山稜線、さらにその向こうには氷ノ山も見えるようになり、既に見事な景観が広がるようになる。
林道より青が丸を望む 林道より見る仏ノ尾への尾根
林道より青が丸を望む 林道より見る仏ノ尾への尾根
林道をしばらく歩くと仏ノ尾への尾根も見えるようになり816.5ピーク(4等三角点・横尾)南で鋭角に左へ進路を変え、荒れた林道らしき道を行く。(上、右画像)

やがて峠のようなところで左折すると広場のような雪原に出た。(下画像地点)
振り返ると鉢伏山〜氷ノ山のスカイラインが素晴らしい。

荒天時には進路をどうとるべきか悩みそうな場所だが、幸い晴天なので今日は何の迷いもなくこの雪原を突っ切る。
広場から見る鉢伏山〜氷ノ山
広場から見る鉢伏山〜氷ノ山
登るべき仏ノ尾へと続く尾根は目の前に見えており、いかにもここから取り付きその尾根を目指せばよいようだったが、林道はさらに先へと続いているようだったので足を伸ばしてみた。

すぐ先には作業小屋らしき建物も見て取れたが林道が下っていたこともあり、ここから山中へと入ることとする。

はじめ、潅木が少々うるさいがうしろに広がる展望が素晴らしく、景色を楽しみながら歩く。

当面、右手上方の尾根上に見えるコブを左に下ったところのコルが目標だが、左手に見える谷筋を登高するには潅木がうるさすぎるし、このまま尾根をシール登高するにしては傾斜がやや急になり出した。

そんな折、尾根上の雪が切れてしまった。目を上にやると夏道らしき道が目に付いたのでスキーを脱ぎ急な尾根道を登る。

スキーブーツで雪のない登山道を登ることとなったのだが、これが曲者。急傾斜だったこともひとつの要因だが、こんなに歩きにくいものとは想像外だった。

しばらく辺りの小さな枝につかまりながら転倒しないように急登すると再度、雪が現れたので雪上歩行。左に見えていた沢の上部でここをトラバース。

ステップを切り慎重にトラバースしたら見えていた小さなコルに到着。

自然林帯の気持ちのよい場所だったのでこれからの歩行に期待を抱かせたが、あいにく
「ここから仏ノ尾までで自然林に出会えたのはここだけ。」
といっても過言ではなかった。

すぐに植林帯の上りとなる。やがて平坦な箇所に出るが、見上げればこの先はかなりの急登のよう。事実、ここからが本当の植林帯の急登の始まりだった。

徐々に青が丸が低くなる
徐々に青が丸が低くなる(左は陣鉢山)

しばらくはシール登高するが、カニ歩きでも負えなくなりあえなくツボ足に変更。林道に停めてあった車の主の足跡と思しきスノーシューのあとを追い急登。

右手に見える支尾根や左手に見える青が丸が低くなるのを楽しみに足を踏み出す。

ようやく植林帯を抜けるとシール歩行に切り替え、仏ノ尾への最後の登り。展望もよくなり気分的にはずいぶん楽になった。
やせ尾根を歩くようになり、傾斜が緩くなるとブナの点在する仏ノ尾山頂だ。
仏ノ尾山頂部から見る氷ノ山〜三ノ丸 仏ノ尾山頂部から見る扇ノ山、大ズッコ
仏ノ尾山頂部から見る氷ノ山〜三ノ丸 仏ノ尾山頂部から見る扇ノ山、大ズッコ
本来の三角点のあるピークからはあまり眺望はいいとは云えなかったので、東西に長い山頂部の西の方に行ってみると、先週歩いた扇ノ山方面の展望が開けた。

確かに眺望はよくなったのだが、そこにはそれにも勝る何とも表現のしようのない不思議空間が広がっていた。
ブナの古木が点在する雪原で思わず仰向けになり天を仰ぎ見た。

白い雪面と碧い空との空間を遮るのは、ここの主のブナの古木や飛び交う鳥たちのみ。

春の日差しを浴びながらもの思いに耽り、しばし至福の空間を堪能する。
ブナの影 ブナ林
ブナの影 ブナ林
しばらくしたら青が丸へ向けシールを外し滑る。

下り切った辺りで先行の方に遭遇。
こちらは入山以来、時折踏み跡を目撃してきたので、この遭遇に大した驚きはなかったが、この人は
「まさか、ここで人に遭うとは・・・」
の思いがあったのか、こちらと出会ったことにかなり驚かれた様子だった。
豊岡からで青が丸ピストンされ早くも下山途中とのこと。朝がずいぶん早かったようだ。

緩やかに登ると切石(1,144)。
目の前には谷を隔て、青が丸が聳え立つ。

若ブナ林帯
仏ノ尾〜切石間の若ブナ林帯
青が丸直下より鉢伏山〜氷ノ山 切石より青が丸を見上げる
青が丸直下より鉢伏山〜氷ノ山 切石より青が丸を見上げる

ルートは左へ折れ、少し下ると今度は短く登る。

再度、小さく下ると目の前には大きな雪庇を張り出した青が丸山頂部が目の前に立ちふさがる。

青が丸山頂へと続く雪庇帯
青が丸山頂へと続く雪庇帯
「ホンマに登れるんかいな〜、これ。。。」

左手にはデブリと大きな雪庇、見上げればとんでもなさそうに見える急傾斜の雪壁。

ツボ足となり、足元だけに集中し一歩ずつ歩を進める。
先ほどの方の踏み跡がありがたい。

右手にブナの巨木を見るようになると右から巻き、いよいよ青が丸山頂部へ。

スカイラインが低くなると青が丸に到達。

何を隠そう、
「スカイラインが次第に低くなり、やがてこれまで見えていなかった向こう側が見えてくる。」

この時間帯がもっともワクワク、どきどきするときでもあり、自身が
「山に来てよかったな〜。」
と思える瞬間でもある。

先人達もこの光景を目の当たりしたかと思うと、ここのように展望が素晴らしいにもかかわらずあまり人の訪れないピークでは、特にこう想うのである。
青が丸山頂より仏ノ尾 青が丸山頂部より瀞川平〜鉢伏山(遠景は妙見山)
青が丸山頂より仏ノ尾 青が丸山頂部より瀞川平〜鉢伏山(遠景は妙見山)
青が丸山頂より扇ノ山稜線 青が丸山頂部のブナと仏ノ尾
青が丸山頂より扇ノ山稜線 青が丸山頂部のブナと仏ノ尾
青が丸山頂からの眺望は遮るものは何もなく素晴らしい。特に南から西にかけての眺望は仏ノ尾のそれとは比較にならないほど優れ、陣鉢山が正面に端正な姿を見せる。

山頂部をブナに抱かれた仏ノ尾と眺望絶好の青が丸。西や東から見ると双耳峰とも見れなくもないピーク同士だが山頂の趣は全く異にする。

そんな中、それぞれのピークがそれぞれの個性を持って素晴らしい雰囲気で迎えてくれるところは、いかにも双耳峰的か。
青が丸より扇ノ山〜小ズッコ稜線
青が丸より扇ノ山〜小ズッコ稜線

扇ノ山方面は三角点付近からよく見えたが、
「もう少し氷ノ山方面が見えればな〜。」
と東西に長い山頂部の南東側へ足を延ばして見た。

しかし、鉢伏方面の眺望はそれなりだったが氷ノ山方面は南方面だったこともあり、融雪のためすでに起き上がり気味のチシマザサや潅木に邪魔されあまり良くなかった。

三角点に戻り、扇ノ山稜線を見ながらブナの木陰で遅めの昼とする。

ブナの木陰でブレイク
ブナの木陰でブレイク(枝が折れているのは自然の摂理)
短いランチが終わったら往路を引き返す。

まずは
「青が丸北斜面の滑降!」
といえば聞こえがいいが、実際は・・・、横滑り下降半分と滑降半分。それでも、ブナ林を縫って滑れば少しはスキーの意義を発揮できる。

雪庇帯の下まで来れば滑降は終わり。

スキーを脱いだり履いたりして小さくアップダウンすると切石。見上げれば、やはり威圧するように立ちふさがる青が丸がそこにあった。

緩斜面を滑り、ブナ林帯を歩くようになると仏ノ尾への登り返し。のんびり歩けばやがて仏ノ尾山頂部に再来。

三角点手前、右手に見える谷筋が何とも「おいで、おいで」をしているようで魅惑的に見えたが、ここを下ってしまうと下山路へとトラバースする際、植林の状態が不透明だったので、ここはぐっと我慢し往路と同じルートで三角点へ向かう。
下山ルートより仏ノ尾山頂部を振り返る 鉢伏山を正面に見ながら下る
下山ルートより仏ノ尾山頂部を振り返る 鉢伏山を正面に見ながら下る
三角点からはシールを外し、やせ尾根を下降。しばらくはスキーで下降したが植林がうるさく傾斜も急になったので、ツボ足に。

以降、何度か雪を踏み抜くこともあったがどんどん下り無事、植林帯を抜け尾根上のコルへ降り立った。

右の谷筋へ下り、潅木を縫って左へトラバースすれば、ちょうど朝、雪が切れブーツで歩き出した箇所だった。

広場に降り立ち見上げれば、ずいぶん遠く高くなった青が丸の姿。

このあとは林道から見える光景を楽しみつつ、一日を振り返りながら快調に滑った。
雪が切れた箇所ではふと現実に戻り、再びスキーで滑り出せば下っているにもかかわらず山中へと引き戻されたような不思議な感じだった。

「この山があまりに『不思議空間』だったからだろうか・・・。」

スキーを両手に持ちしばらく歩くのに、
「雪が現れないな〜!?」
それもそのはず、目の前にはスギの倒木。

すぐ先のカーブが現実への戻り口。扉を開けるがごとく、ぐるりと林道を回りこむと駐車地点はすぐそこだった。

◆【ワン・ポイント・アドバイス】
荒天時に限らず、地形図、コンパスは必携。

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