上山高原〜扇ノ山〜霧滝
小ズッコ手前より論山〜仏ノ尾〜青が丸稜線を望む

青が丸よりみる扇ノ山稜線
◆【山行日時】 2005年4月2日  高曇り時々晴れ

◆【山行コース】 海上〜上山高原〜扇ノ山〜畑ガ平〜霧滝
◆【コース・タイム】 
林道海上線、駐車地点=1時間35分=上山高原(トイレ)=55分=小ズッコ小屋=1時間35分=扇ノ山山頂

=20分=林道出合い=1時間55分=林道畑ガ平線、霧滝・デポ地点
◆【正味歩行時間+滑走時間】 6時間20分
パタゴニア
◆【詳細】
今日のコースは県内屈指のロング・コース、海上〜上山高原〜小ズッコ〜扇ノ山〜畑ガ平〜霧滝。

Aさんが昨年、海上からのピストンで山頂に至った際、そこで目にした稜線東面が強く印象に残ったのか、
「今度は是非、畑ガ平への滑降を
丸一年の時を経て、それを実践する日がやって来た―。


朝5時前、自宅を出発すると、早朝で通行量が少ないことが幸いし有料道路を利用しなくともその時間よりも早く集合場所である『道の駅ハチ北』に着くことができたが、
「お〜っとーっ、見覚えのあるジムニーがあるじゃないか・・・。」
何とAさんは既に到着していたのだ。
さすがは一年越しの意気込みの表れか!?

もう一人の同行者Hさんも東大阪からの遠征にもかかわらず、やがて到着。

ルートの打ち合わせを済ませたら一台は道の駅に乗り捨て、二台に分乗し下山地点の霧滝へ向け走らせる。

R9を西進。湯村温泉を過ぎ岸田川に沿って走るようになり、しばらくするとR9と別れ山中へと入って行く。

いかにも”日本の田舎”的様相のいくつかの集落を道端に見ると、やがて人家はなくなる。
霧ケ滝遊歩道入り口を見て、菅原のアマゴ養殖場で沢を渡ると道路の傾斜が急になったのと比例しするかのように、ここまでは行き届いていた除雪作業に対する不安が途端に大きくなった。

「予感的中。」

すぐ先のT字路で畑ガ平への林道は通行止め。もう少し上がれるかと期待しつつ車を走らせたが、未だ1.5メートル近くもある雪の壁が目の前に現れたらお手上げ。
ここに一台をデポしたら、先ほど来た道を少し下る。

海上口まで下ったら登山口の海上へ向け車を走らせる。海上集落を過ぎても道の周りに雪は見られなかったので、先ほどの件があるにもかかわらず期待を持っていたが、芝桜公園まで来ると道端にも雪を見るようになり作業小屋(?)先でわずかながらも道をふさぐ雪が現れた。
「万事休す。」
ここを入山口とする。
霧滝・デポ地点 登山口で準備完了
霧滝・デポ地点 登山口で準備完了
歩き始め シワガラの滝・入り口付近
歩き始め シワガラの滝・入り口付近
道路はアスファルトも見えていたので歩き出しはスキーを担いでのものだったが、すぐに雪が道路一面を覆うようになったのでシール歩行に切り替える。
間もなく『桂の滝、シワガラの滝』への入り口。先でヘアピンカーブを切り670のコブを回り込むと林道を外れ、小さな沢筋に入る。
順調に登高し、小動物の足跡を見ながら気持ちのよいミズナラ林を歩くようになるとやがて林道と合流。小さな三角錐の上山が近くなると上山高原は間近。
見晴らしがよくなり気持ちのいい高原歩きを満喫できるが、今日の目的地はあくまで扇ノ山。

これまで約2時間の歩行にもかかわらず、未だ扇ノ山はおろか大ズッコ、小ズッコ付近の県境尾根すら目にすることはできない。小休止したら、先を急ぐ。

右手の小さな窪地を回りこむように進んでいると左手に立派な建物。壁には”上山高原避難小屋”と大きく記してある。扇ノ山山頂小屋は県下一の立派な小屋だが、この小屋も負けず劣らず立派そう。今日は見る余裕はないが機会があれば確認してもよさそうだ。
上山高原避難小屋 ようやく目にすることができた扇ノ山稜線(左奥に小さく見えるピークが扇ノ山)
上山高原避難小屋と上山 ようやく目にすることができた扇ノ山稜線(左奥に小さく見えるピークが扇ノ山)
植林帯に入り西丸をぐるりと回りこむと、ここでようやく残雪たっぷりの小ズッコ〜扇ノ山稜線が姿を現せた。

待ちこがれたものがようやく見えたのだが、目的地の扇ノ山山頂はずいぶん遠く、Aさんが再三云っていた
「林道歩きが長いですよ。」
このとおりだった。
「まだまだ、これから。」
である。無雪期なら登山口にすら到達していないのだから無理もない。

雪の下で見る影のないショウブ池を巻いたら左からの小さな尾根手前で谷筋へ。
尾根に出ればブナ林帯を登高するようになる。
左手には仏ノ尾〜青が丸の、この辺りらしくない雄大な風景が広がるので少々の急傾斜も頑張り甲斐がある。斜登高を繰り返し傾斜が緩くなると、三角屋根の小ズッコ小屋に到着だ。

時刻は既にお昼前だったので「ここで昼食。」でもよい時間だったが、のちに控えるメイン・イベントを抜きにはできないので、ショート・ブレイクでぐっと我慢し稜線を山頂へ向かう。
論山〜仏ノ尾〜青が丸 小ズッコ小屋
論山〜仏ノ尾〜青が丸 小ズッコ小屋
今回のツアーのメイン・イベントとは、もちろん畑ガ平への滑降が第一だが、
「ちょっと待った。」
その前に県下一と謳われるガラス張りの山頂小屋でのキムチ鍋も忘れてはいけない。

食材を調達してくれたのはAさんなので、他二名は内容については知らされていなかったのだが、ただひとつ、朝からAさんのジムニー車中がニラの匂いまみれなことからたっぷりのニラがその鍋に投入されることは容易に理解できていた。
歩行中もどういうわけか、その匂いが時折、周囲に漂うものだから、この頃は滑降よりもそちらを待ちわびて歩行しているようなものだった。

周りの雰囲気はよくなるし、腹は減るし
「一歩一歩極楽に近づいている。。。」
こんな感じ。
小ズッコ小屋をあとにする 若ブナ林帯
小ズッコ小屋をあとにする(左端は大ズッコ) 若ブナ林帯
若ブナ林帯を緩やかにしばらく上り、大ズッコまでくれば山頂小屋は指呼の距離に大きく見えるようになる。

シールを付けたままながら、ここでは予行演習的に滑る。
シリセードの跡があるくらいの斜度だから、それなりに滑れる。

コルまで下れば長かった道程の総仕上げ、最後の上り。
ニラの匂いをかぎつつ歩を進めればガラス張りの山頂小屋が見えてきた。

「キムチ鍋に到着だ〜っ。」
いや、違った
「山頂到着だ。」
山頂北の展望デッキ 山頂へ向け最後の歩行のHくん
山頂北の展望デッキ 山頂へ向け最後の歩行のHくん(背後のピークは大ズッコ)
二階に駆け上がり、取りあえずサン・テラス風な雰囲気を短く味わったら展望を楽しむのもさておき、店を広げる。(といっても、ほとんどAさんがやってくれたんですけどね)

朝から匂いの元凶と思われ続けてきたニラもようやくここで解放され自由の身となった。
「うーん、いい匂い。」
ようやく、こう思ってもらえる時がやって来た。

ニラだけで鍋が出きるはずはないので、もちろん出てくるのはこれだけではない。
まずはキムチスープ。
ストーブにかけ、煮たったら豆腐と豚肉投入。
野菜は白菜に椎茸、白ネギ。

「今こそ出番だ
ニラをたっぷり入れたら、just moment

おわんを取り出し、お玉で装ったら
「いっただきま〜す!」

「美味〜いっ!!

この美味さは行程の長さに比例する。
山頂小屋2F 特製キムチ鍋
山頂小屋2F 特製キムチ鍋
三人で鍋をつつき、具が少なくなったら次はうどんの出番。

これが終われば雑炊だ。まだまだあるぞ、最後はカルビの焼き肉。

「う〜っ、腹いっぱい。」
「げっぷ。。。」
コーヒーで胃を洗い流せば一丁上がり。

「フルーツがあれば完璧だったねっ。」
あえて探すなら、これが唯一の反省点。
滑降体勢で小屋をあとにする
滑降体勢で小屋をあとにする
腹が満たされ、おかずとなってしまった氷ノ山方面の展望を短く楽しんだら本来のメイン・イベント、滑降だ

尾根上を少し大ズッコ方面に戻ったら県境尾根を畑ガ平に向け滑り込む。

適度の傾斜にそれぞれ満足げなシュプールを描く。
緩斜面を緩やかに滑る(前景は仏ノ尾〜青が丸稜線)
緩斜面を緩やかに滑る

しかし、至福の時間はそう長くは続かない。植林帯を抜ければ、いきなり林道と出合った。

悲しいかな、滑降はこれで終わり。

ホンの短く滑ったつもりだったが、見上げると山頂小屋はずいぶん小さくなり想像以上に高度を下げたことを実感できた。
一方で山頂までの歩行時間を想い返すと、やたら寂しさを増幅させたのも事実だった。

ずいぶん遠くに小さくなった山頂
ずいぶん遠くに小さくなった山頂(最奥のピーク)
机上ではあとは林道をデポ地点まで戻ればよかったが、現実はこれからが一筋縄では行かない苦難の連続だった。

しばらくは、まだよかったが岸田川源流辺りを下る頃から目の前には難題が次々と立ち塞がった。
林道の積雪は4〜5メートル この時期ならではの天然滝
林道の積雪は4〜5メートル この時期ならではの天然滝
林道の崖からの雪がことごとく林道上に雪崩ているものだから、その都度、エッジを充分利かせ通過しなければならない。
細心の注意が必要だ。

デブリとなっている箇所では谷底への高度感とも相まって緊張感は最高潮に達する。

何度もこの作業を繰り返しながら高度を下げブナ林帯で大きなデブリを見たら、ようやく山側の斜面は緩やかになり安心して滑れるようになった。

これをいいことに、所々で林道をショート・カット。
いくらかでも時間短縮する。

アマゴ養殖場の青屋根や左手の沢に堰堤を見るようになるとデポ地点は近い。

小さなデブリを乗り越し短く滑るとようやく、我が70の屋根が見えてきた。
堰堤が見え出したら間もなくデポ地点 70の屋根が見えたらツアー終了
堰堤が見え出したら間もなくデポ地点 70の屋根が見えたらツアー終了

ロング・コースもいよいよフィナーレだ。

雪壁を慎重に下りたらAさんにとっての一年越しのルートは見事、克服されたのだった。

gps軌跡(畑ガ平林道途中でトラックが切れているのは電池切れのため) 


◆【ワン・ポイント・アドバイス】
荒天時に限らず、地形図、コンパスは必携。

林道・海上線は問題なく歩けるが、同・畑ガ平線の歩行は上り、下りいずれに利用するにも雪崩ている箇所が多数あり。

そこの通過には細心の注意が必要。
無雪期の扇ノ山のコース・データを見る

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