◆【山行日時】 2006年2月18日 くもりのち時々晴れのちガス

◆【詳細】
この日は、昨年来の念願であり先週も出向いたものの、悪天のため実現出来ずにいた氷ノ山から大段ヶ平への滑降を、ようやく現実のものとすることが出来た―
天気は概ねくもり気味だったが雲は高く、リフトに乗車し見上げると、先週とは打って変わり氷ノ山山頂はくっきりとその姿を現せてくれていた。
「今日こそ、何とか大段ヶ平へ滑降を。」
と心ははやるが、最近の天気傾向を見ても分かるとおり、山の天気はいつも気まぐれだから手放しでは喜んでもいられない。
リフト・トップで準備したら、パトロールに登山届けを出す際にも見かけていたスキーヤー2人に先立ち、先行のスキーヤー3人、徒歩2人に続き歩き出す。
昨夜には少し積雪があったようだが、それまでの雪はここ数日の気温上昇ですっかり締まっているので、ツボ足でも問題なく歩ける。
展望を得ながらの歩行なので先週となら気分的に大違い。
間もなく左手には氷ノ山が姿を現せる。そこへと続く稜線付近の樹々の樹氷が小さいながら白く輝いているのがよく見える。
しかし、夫婦スギ辺りのモンスターは期待薄のよう。
ブナの森手前の雪庇のところで先行の歩行者の一人に出会う。
姫路から写真を撮るために来られているようで、大きな三脚を携行されていた。
ブナの森まで談笑しながら共に歩き、ここで別れたらこちらはシール歩行。その人は大段方面へと向かわれた。
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尾根上の雪庇帯よりブナの森を見上げる |
ブナの森に着く頃からは辺りの雲は晴れ、三ノ丸まで陽だまりハイク。
不思議だったのは、この時、周りに広がった光景。
高々、標高1,500メートル足らずにもかかわらず標高の高いこの付近だけガスが晴れ、標高の低い兵庫県側や南に広がるその他の山々は雲に覆われ見ることが出来なかった。
扇ノ山方面も山頂部はガスに覆われていたので、晴れていたのはこの氷ノ山一帯だけのようだから、ずいぶん低い雲が垂れ込めていたようだ。
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氷ノ山遠望 |
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雲海と県境尾根 |
三ノ丸に着く頃にはすっかり上空は晴れたが、氷ノ山山頂は強風と共に押し寄せるガスに覆われ、その姿は見ることが出来なかった。
稜線を進むようになり山頂に到着してみると、思わぬ早さでここまで歩いていたことに気付いた。
荒天時となら大違いである。無雪期よりも早いほどで、この間に限ればこれまでで最速だった。
景色も素晴らしかったことを思えば、いろんな意味で好天に勝るものはないと言う事の証明だろうか。
山頂小屋で波賀町からという、もう一人の徒歩での先行者の方と短く話したら、わずかに吹き寄せるガスの晴れるのを待って念願の大段ヶ平へ向け滑降。
見る影のない古生沼あたりや千年スギを縫って滑る。
東尾根方面からの登山者に出会うかと思っていたが、神大ヒュッテまでに誰にも会うことはなかった。
それにしても早い。もう少し積もった想いを噛み締めながら滑りたいのに、あっという間に到着だ。
神大ヒュッテはすっかり雪の下で、原型はもちろんのこと、どこにあのテラスがあるのかも分からないほどだが、今は天気がいいので迷うことはない。
山頂で合わせたコンパスも、いわば不要。
それでも念には念を入れ、コンパスを合わせ直したら大屋町避難小屋目指しブナの大木を縫って滑る。もちろんノー・トラック。
時折立ち止まり、空を見上げれば樹氷がキラキラ輝く。
贅沢な空間を独り占めし、思わず鼻歌交じりで滑る自分がいる。
こんなだから、大屋町避難小屋前には知らぬ間に達した感じだった。
見上げれば千年スギはずいぶん高くに見えるようになり、短時間で下って来た割にはずいぶん高度を下げたことがよく分かる。
その後、若木を縫って緩やかに滑るようになると、やがて大段ヶ平着。
山頂からの所要時間は約20分。
休み休みで、尚且つ、自身のようなスピードで滑ってもこれくらいの時間で下ってこれるのだから、晴天時におけるスキーの威力は絶大だ。
引き続き林道を横行分岐まで下る。
いくつかの林道斜面からのデブリの箇所では、昨年の扇ノ山山行の際の悪夢が頭をよぎったが、そう大したことはなく無難に通過し東屋の建つ分岐に到着。スキーはよく滑ったので、ここもあっという間の約10分。
いわく付きの横行谷を渡ったら、目標の取り付き尾根末端に向かい林道をしばらく登り返す。
ここでも、急なのり面からの雪崩の跡が見られたが、そこは万全を期し素早く通過。
やがて目標としていた尾根末端に着くと、なるほどの光景が現れた。
jpさんの『ひょうご山蹊記』に記されてある
「ワサビ谷ノ頭につながる尾根の末端は伐採され、一本の貧弱な杉の木が残されている。」
のとおり、貧相なスギの木と小さなブナの木が一本ずつあった。
天気が良いので、こんな日ならここまででも誰でも来れるといえば来れるのだが、本の中に記されているとおりの、それも具体的なモノが目の前に現れたので、妙に嬉しくなってしまった。
時間的には、ここで十分ゆっくり出来る時間だったが、いつも頭にあるのは「もし、ガスられたら・・・。」の気持ち。
このときは展望も利いていたこともあり腰を下ろしそうになったが、「のんびりするのは稜線を目にしてから。」と決め、この尾根を少し回りこんだところから取り付く。
尾根上や辺りには見事なブナ林が広がっているのはもちろん、何本か巨大な天然スギも見られ、ほどよい傾斜であることも手伝って、それらを見ながらのんびり登高する。
右手には先ほど滑ってきた尾根や大屋町避難小屋、千年スギ、山頂方面が樹間に見え隠れする。
左に見えていた枝尾根を合わせた辺りには、ひときわ見事なブナが何本かあった。
樹氷をまとったブナの雄姿は特に素晴らしく、さながら白い花びらを咲かせた大木のように映った。
1,344付近まで来るとこれまでよりもさらに傾斜は緩くなり、やがて右手には氷ノ山、左手に三ノ丸東面の雪の斜面が目に入りだすので、稜線が近いことを感じ取れるようになる。
左手に三ノ丸の展望台を遠望するようになると、樹林帯を抜け正面にはわさび谷の頭がすぐそこだ。
ブレイク・ポイントをどこにするかにあたっては、景観的にみれば尾根上にはここまでにもっと素晴らしいところがいくらでもあったが、精神的にようやく安心できたので、この付近をその場所として、ここで遅めの昼とした。
食事を摂りながら三ノ丸方面を見ていると、スキーヤーが東斜面を見事なシュプールを描いて何度か滑っては上り返していた。
「あれもいいけど、尾根をのんびり歩くのもいいもんだ。」
要は「雪山は魅力が一杯」なのだ。
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左手に三ノ丸展望台 |
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右手には氷ノ山山頂が望めるようになる |
ブレイクを終え三ノ丸に向かい歩き出すと、心配していたガスが辺りを覆いはじめ、瞬く間に付近は視界が利かなくなってしまった。
「魅力も多いが、その反面、危険とも隣り合わせ。」
危なっかしいシチュエーションは、たとえどんな小さなことでも回避できるに越したことはない。早めの行動が功を奏した格好となった。
三ノ丸でシールをはずしたら、やはりここでもコンパスを合わせ、ブナの森目指し滑る。
視界が充分にあれば県境尾根方面の谷筋へ滑ってもよかったが、あいにくそうではなかったので無難なところで下山のルートを滑る。
ブナの森では朝、一緒にここまで登って来た、姫路のおじさんと再会した。大段方面で写真を撮られたようだ。
短く談笑ののち、おじさんと別れ、つぼ足で尾根を下る。
しばらく下ると植林の急坂を下るようになり、やがてゲレンデ・トップに降り立った。
ゲレンデを滑り、パトロールに下山報告をして山行を終えた。
わさび谷を下らなかったことで『ひょうご山蹊記』の8の字山行のとおりとは行かなかったが、昨年来、滑りたかった氷ノ山〜大段ヶ平を滑れ、また、先の三久安山山行で得た経験を裏付ける山行にもなったことで、満足のいく山行となった。
◆【ワン・ポイント・アドバイス】
荒天下に限らず好天であっても雪山では充分な知識、装備をもって臨まなければなりません
なかでも地形図、コンパスはどのような状況においても最重要な必須アイテムです
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