岩鼻温泉を越え、さらに県道43号線を那智の滝方面に走らせていくと、
田んぼの脇、山ふもとで洗濯をしているお婆さんの姿に目が留まります。
その洗濯場こそが、遠方の温泉マニアをも引き付ける
井関温泉
車を道路脇に止め、洗濯場へと続く小道を歩き始めました。
タライで洗濯しているお婆さんに近づくにつれ、
昔話の国にタイムスリップしたかのよう。
今にも川上から桃が流れてきそうなシチュエーション。
車窓からこの光景を見るほとんどの方が、大晦日に洗濯とは頭が下がりますって感じなんだろうね?
しかしながら、お婆さんの手元には白い柔らかな蒸気が立ち込めているのです。
そう、パイプから勢いよく流れ出ているモノ。それはまぎれもなく温泉。
「こんにちは」、お婆さんに声をかけてみました。
外気の寒さに引きつったお婆さんの表情が一瞬和らぎ、
「その椅子にかけなさい」と指さした方向に視線を送ると
よく家庭の風呂場に置かれてある、プラスチックの腰掛け椅子が置いてあったのです。
正直、数々の温泉マニアの方達が全裸になってこのタライで入浴、いや行水を行っているので、私もその仲間入りになりたかったのですが、
お婆さんの「夏なら裸になる人もおるが、今は足湯じゃ」
の呟きに「でも・・・」とは釘を刺す事など出来ず、
足湯と、爺さんの作業着を洗うお婆さんとの会話を楽しむ事にした。
足元がホッコリしてくると同時に、
徳島の山中で婆ちゃんとよく一緒に湯船に浸かった、
そんな郷愁を覚えさせるお湯でありました。
