天使が羽ばたく時(2)




2003年11月16日
僕がヒカルの中から戻って来た途端彼の瞳が閉じられて・・・
胸にもたれかかってきた彼を僕は慌てて抱きとめた。
初めて精神世界を侵食された彼は精も魂も疲れ果てていた。


気を失っているヒカルを抱えて彼の家に向けて夜空を飛び上がった。
そうして彼の家に運び込むとベットにそっと寝かし、
その美しい横顔を焼き付けるようにじっと眺めた。

彼が気が付くまでここにいたかったけれど旅立つ時刻は刻々と迫っている。


ヒカルの精神に立ち入った事で彼の僕への想いの深さを知った。
そしてなぜあれほど彼が頑なだったのかも・・・


今の僕は心も身体も充たされていて、だけど僕は君の口から僕への想いを
確かめたかった。君と睦言を交わしたかったのに。


「もう行かなくてはいけない。」

僕はやむなく立ち上がる。
そして玄関まで出かけた所でもう一度思い直してヒカルの元へ引き返した。

「君の羽をもらっていきたい。」

そう呼びかけたがもちろん眠っている彼からの返答はない。
僕は一瞬躊躇したが、先ほど『なんならお前にやるよ。』と彼が言った
言葉を思い出してそっと彼の背に手を伸ばした。

そして1枚の羽を引き抜いた。

君の風切り羽もらっていくよ。そして代わりに・・・・
自分の背中に手を伸ばすと同じく風切り羽を引き抜いた。
彼の枕元にそれを置くと僕はそっと彼の唇にキスを落とした。

今度会えるのは半年後だ。ヒカル・・・


僕は胸にヒカルの羽を強く握ると夜明け前の空を北へと飛びたったのだった。





俺が目を覚ますと枕元にあるアキラの羽が目に入った。
咄嗟に昨夜の事を思い出し部屋を見回したがそこにはアキラの姿はない。
アキラは北離宮に立ったのだと理解して、慌てて起き上がりそれを手に取った。
その瞬間 ふわっと温かい感触に包まれた気がした。

アキラの 風切り羽 天使の風切り羽には特別な力がある。
癒しの効果に心を静める効力 俺は6枚もあるから

一つぐらい欠けても大丈夫だけれど、アキラにはきっと大変だったはずだ。
そう思うと俺は涙がこぼれて来た。

なんで正直にお前の事を好きだと言えなかったんだろう。
あいつの想いを眼差しを俺はずっと知っていたのに。

今なら素直に「愛してると」言えるのに・・・・

俺の奥底に残したアキラの足跡は確かにそこに残っていて俺はアキラの風切り
羽を胸に強く抱きしめた。


                                    天使が羽ばたく時3




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